最も重要な鍵は中国の手にある。中国の支援がなければ、ロシアが強力な金融・経済制裁を長期間耐えることは難しい。

2022-03-27 10:39:42 | アメリカの対応

[コラム]プーチンと習近平が変える世界

登録:2022-03-25 06:29 修正:2022-03-26 09:27
 
 
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と中国の習近平国家主席が、北京冬季五輪開幕日の2月4日、北京で首脳会談を行う前に記念撮影をしている。両首脳は同日「無制限の協力」を誓い、プーチン大統領はそれから20日後ウクライナに侵攻した=北京/タス・聯合ニュース

 ロシアのウクライナ侵攻はいつ終わるのか。世界秩序はどのように変わるのか。最も重要な鍵は中国の手にある。中国の支援がなければ、ロシアが強力な金融・経済制裁を長期間耐えることは難しい。米国が中国に向かって「ロシアを支援すれば、中国も制裁に巻き込まれるだろう」と繰り返し警告するのも、そのためだ。

 中国はどうか。検閲のため、中国には反米・親ロの声だけが溢れているかのようにみえる。しかし、中国にもロシアの侵略に反対する世論が少なくない。中国共産党内部でもロシアとの関係を整理すべきだと主張する人がいる。中国国務院傘下の公共政策研究センターの胡偉副理事長は12日、「中国がロシアと距離を置かなければ、世界からさらに孤立するだろう」とし、「中国はプーチンとできるだけ早く手を切る必要がある」と主張する文章を発表した。大きな注目を浴びたこの文章は、まもなく検閲によって削除された。

 中国当局がロシアの侵攻を批判し、戦略的パートナー関係を放棄する可能性はほとんどない。習近平国家主席にとって優先的に考慮すべき事項は次の2つだ。第一に、米国に挑むためにはプーチンとの戦略的協力が非常に重要であり、特に台湾問題でロシアとの協力が必要だという点だ。1970年代、米国がニクソン・キッシンジャー外交を通じて中国を引き入れ、結局1991年にソ連を崩壊させた戦略を、今度は中国が活用しようとしている。強硬派の立場を代弁する胡錫進前「環球時報」編集長が20日に微博に掲載した文章は、こうした中国の思惑をよく表している。胡氏は「ロシアがパートナーになれば、中国は米国のエネルギー封鎖を恐れる必要もなく、食糧と原材料供給も保障される」とし、「台湾海峡または南シナ海で中米間の戦争が勃発した場合、中国は米軍を制圧する力を徐々に蓄えてきており、ロシアは米国を敵視するスーパー核能力を持っているため、米国が核で中国を威嚇するのは困難であろう」と主張した。

 第二に、国内の政治的側面である。3期目を控えた習主席にとって、プーチン大統領と緊密に協力してきた外交戦略の誤りを認めるのは極めて難しい。プーチン大統領が国内の反戦世論に押され、権力を失う事態も阻止しなければならない。プーチンの没落は、習主席の権力にも悪影響を及ぼしかねない。

 結局、中国当局は「戦争にも制裁にも反対する」というあいまいな立場を示し、自国企業に制裁が飛び火しない範囲で、ロシアとの経済協力を持続しようとするだろう。これを通じてロシアを中国に隷属させ、原油やガスをはじめとする資源を安く確保し、特にロシアがこれまで中国に渡さなかった先端兵器技術を確保する機会として活用する構えだ。

 このような状況が長期化すれば、世界経済とサプライチェーンの亀裂は深まる。米国は欧州とは別の同盟国を糾合し、中ロをともに牽制する構図を作りあげている。半導体やバッテリーなど先端技術分野を中心に進められた「デカップリング」の分野もはるかに広がっている。韓国金融研究院のチ・マンス国際金融研究室長は「冷戦時代の東欧圏に対する輸出制限に似たシステムがロシアに適用され、その対象を広げる方向に進む可能性がある。例えば、ロシア石油を買う中国の石油会社に2次制裁を行う方式でサプライチェーンが分裂する構図が作られた」と説明する。グローバル・バリューチェーン(GVC)の亀裂が深まり、韓中経済関係に変化が生じる可能性に注視しなければならない。

 台湾問題をめぐる緊張が高まるだろう。ロシアに対する制裁が中国には教訓になるかもしれないが、中国は長期的課題である台湾統一の目標をあきらめないだろう。「台湾を統一し、米国を超える超大国になる」という約束は、習近平主席の統治の正当性を作り出す核心要素だ。2024年の台湾総統選、習主席の3度目の任期が終わり続投を目指す可能性がある2027年など、ヤマ場のたびに情勢は危うくなるだろう。韓国は台湾武力統一が「中国の内政」ではなく、東アジアの平和に対する深刻な危険であることを直視しなければならない。

 米国が安全を保障する時代は終わった。相対的に国力が衰退し、国内政治と経済回復が最優先課題になった米国は、同盟国に費用負担と役割を増やすことを求めている。欧州各国も安全保障を強化する方向に動き出した。

 こうした複合的な挑戦の時代を、韓米同盟にすべてを任せたり、「THAAD(高高度防衛ミサイル)の追加配備」を叫ぶ白黒論理の「スローガン外交」では乗り切れない。中国に対する経済的依存のために、守らなければならない価値と原則を取り下げて沈黙してはならない。韓国は、新たな秩序形成の過程で韓国の立場が反映されるよう積極的な外交を展開し、平和と自由、人権の原則が損なわれないよう努力しなければならない。ウクライナ人の苦痛に多くの人々が心を痛めて応援しているのは、彼らが崩壊すれば世界はさらに危険になることを感じているからだろう。今この瞬間は、私たち皆がウクライナ人である。

 
//ハンギョレ新聞社
パク・ミンヒ|論説委員(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
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