読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

友井 羊の『無実の君が裁かれる理由』

2019年11月16日 | 読書

◇『無実の君が裁かれる理由

          著者:友井 羊  2019.8 祥伝社 刊 


  

  大学2年生の牟田幸司と4年生の遠藤紗雪の二人の探偵ごっこ。まるで『屍人荘の
 殺人』、『魔眼の匣』(今村昌)に登場する剣崎比留子、葉村譲を思わせる取り合
 わせ。
  牟田の父親は裁判官で姉は自立間もない弁護士である。牟田は腕力はからしきダ
 メだが、免罪事件に関わったことから周辺調査ではコツコツ調べまわる。ここでも
 推理と対決を主導するのは遠藤紗雪。剣崎比留子同様女性陣に軍配が上がる。

  主題は題名にある通り「冤罪」。不運な状況証拠で無実の罪を問われ、あわや冤
 罪事件となるところを、主人公の二人が推理と調査を重ねて無罪放免を勝ち取る3
 つの事件を扱う。
  第一話は牟田自身がストーカーの容疑者に間違えられて真犯人探しに奔走するス
 トーカー事件。警察から容疑者の写真を見せられて簡単に犯人と同定してしまうこ
 との危うさを知る。

  第二話の事件は牟田の友人が映研のドローン損壊の濡れ衣を着せられた事件。
 光下の視錯、アリバイの証明に加えて、被害者が」紛失した学生証が、振り込め詐
 欺グループに利用されていたという別の事件解決につながるなど、他の事件の解決
 に尽力したりするが、冤罪事件の怖さを知る。

  第三話は冤罪が起きやすい痴漢事件。牟田は父親が痴漢事件担当だと知る。傍聴
 には行きにくいので先輩の遠藤沙雪に頼む。曖昧な物的証拠などで容疑者は犯人に
 されかかっておるので牟田と沙雪は目撃者探しを展開し有力な目撃者を探し出して
 真犯人にたどり着く。それはなんと牟田家にも関係があった。

  そして第4話これが本命の冤罪事件。事件はかなり混み入っていて、しっかり読
 まないと結びつきが混乱する。
  遠藤先輩の父親世志彦は、遠藤の友人の環美兎の母親留美(元彼女)を殺した疑
 いで逮捕されたが当初否認していたものの一転自白し、公判中に自殺した。環留美
 と不倫関係にあった疑われる。実は真犯人は留美の弟馬場春太であったが、のちに
 自責の念と事業不振を苦に自殺してしまう。  
  馬場は恒雄と共謀し留美を殺害したとのメモを残しており、警察は留美の夫環恒
 雄を殺害容疑で逮捕する。しかし
恒雄は否認している。


  このような親たちの複雑な関係性があって幼馴染の沙雪と美兎が事件後険悪な関
 係になったのも無理はない。牟田君はこの二人の間で翻弄される。一方事件調査に
 関わっていた刑事松下が世志彦の不倫相手だったことが事件を一層ややこしくして
 いた。

 

  牟田はパスタに目がなく、イタリア料理店タヴェルナ・イルソーレのアルバイト
 をしていることもあって、きのこのペペロンチーノをはじめ、牛ハラミのタリアー
 タ、マッシュルームのトリュフォラーティ、ぶりやヒラメのカルパッチョ、ホタル
 イカのフリッツなど頻繁にイタリア料理や食材の横文字が出てくる。
                            
                            (以上この項終わり)

  
  

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