読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

雨降らし屋(レインメーカー)は何処に

2010年08月29日 | 読書

◇「雨を呼ぶ男(原題:A Dry Spell)」
                  
著者: スージー・マローニー(Susie Moloney)
                      訳者:: 松下祥子
                            早川書房1998年4月刊

 この前雨が降ったのはいつのことか。まったく今年の夏は猛暑を通りこして酷暑
の毎日である。
 ところがアメリカはノース・ダコタ州にあるグッドランズという小さな町ではなんと4
年間一滴の雨も降らなった。もちろんこれは小説の世界ではあるが、4年はともか
く満更ないとも言えない話だ。

 先日近隣センターの図書館で何気なく本棚を探していたら「雨を呼ぶ男」という本
があった。雨を渇望するこの時期に、こんな本に巡り合うのも何かの縁と、さっそく
借り出した。

 主人公トム・キートリーは日照りに悩む土地に不思議な力で雨を降らせる「雨降
らせ男」。
 女性の主人公カレン・グレインジは田舎町グッドランズの銀行支店長。
 グッドランズは地味が肥えた土地で、農業や畜産でそこそこに豊かな生活を送っ
ていたが、ある年から雨が全く降らず、穀物も畜産も成り立たず抵当に入っている
農地などを手離し他の土地へ移る人が続出。カレンは無慈悲な銀行屋と白い目で
見られるようになる。

 ある日深夜TVで「雨降らし男」トムを目にしたカレンは藁をもすがる思いで手紙
を書き、グッドランズに招聘する。しかしそれから6カ月。カレンが忘れたころにや
っとトムが現れる。そのころにはカレンは、営業成績がどん底の支店を閉鎖する
ための審査を受け、「後4週間に事情が好転しなかったら閉鎖」の宣告を受け、
職を失う瀬戸際にたっていた。

 トム自身なぜ自分がそのような雨を呼ぶ超能力を持っているのかわからないも
のの、行く先々で50ドルかせいぜい500ドルくらいの報酬で雨を降らせ、流れ歩
く生活を送っていたのであるが、ここグッドランズはなぜか雨を降らせるきっかけ
がつかめない。周辺の町には普通に雨が降っているのに、この町だけは強力な
バリアがあって雨が呼べないのだ。

 カレンは数年前借りた家の庭に東屋をつくった。工事中そこから白骨死体が現
れた。誰のものかもわからない白骨は無縁墓地に葬られた。実はそのときからだ
ったのだ。雨が降らなくなったのは。
 昔、何十年も前にこの街にやってきたアイルランド人家族の一人モーリーが土
地の医師家族の一人に殺されて埋められていたのだ。モーリーの怨念は町全体
の生活を破壊することに的がしぼられ、トムはこの怨念との戦いに勝たないと、
せっかく仲良くなったカレンの生活も守れない。
 やがて道路には亀裂がはしり、町中が砂塵に覆われ、疑心暗鬼の住人が互い
をののしりあったり、殴りあったりし始め…。

 ついにトムの神通力が魔力に打ち勝ち、強力な雨雲がグッドランズを覆い始め
る。
 
 系譜としてはホラーに属する小説ではあるが、アメリカ北辺の田舎町の住人と
その生活、人間関係などが赤裸々に語られていてそれなりに楽しめる。

 作者のスージー・マローニーは米国ノース・ダコタ州に隣接するカナダ・マニトバ
州出身で当時35歳の1児の母。本書は第 2作目。この「A Dry Spell」は全米
で好評を博し、パラマウントとトム・クルーズの映画製作会社が映画化するなど話
題となった。

(註)「Spell」には単語の綴りのほかに「魔力、呪い」や「一時期」といった意味も
   ある(dry spell=乾燥期)。

       

  (以上この項終わり)

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