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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

宮部みゆきの『R.P.G.』

2022年03月16日 | 読書

◇ 『R.P.G.

 著者:宮部 みゆき    2001.8 集英社 刊

  

  R.P.G.とは ロール・プレイイング・ゲームの略である。
  つまり、役割実演法。実際の場面を想定し、様々な役割を演じさせて、
問題の解決法を会得させる学習法とされる。
 この作品では作中ネット上で知り合った他人同士が父・母・姉・弟の役
割を演じて、疑似家庭を営んでいる(家族ごっこ)うちに、父親役の人物
が刺殺されたことによって疑似家庭内の様相が暗転する。この父親役の男
性を巡る別の殺人事件との関連が重視され、関係者に執拗な事情聴取が行
われる。宮部みゆきの別の作品に登場する刑事がここにも登場し(『模倣
犯』の武上刑事、『クロスファイアー』の石津刑事)名推理、取調べで鮮
やかな手口で事実解明を展開する。


 今から20年前、すでにネット社会を舞台に様々な犯罪やトラブルが問
題視されていた。ネット社会の匿名性が生み出す無責任な誹謗中傷やなり
すまし、ストーキングなどが犯罪の温床となっていて、作者はこうしたネ
ット社会が生み出した新しい人的交流の危うさに着目しミステリー作品を
作り上げた。
 とりわけ父親役のリアルな家庭での一人娘一美という16歳の高校生が
実に見事な存在感をもって事件をかき回す。現代の年頃の女性の感性や心
裡と表現方法、家庭内での自己の存在に対する不安感、家族や社会への痛
烈な批判精神などを的確にとらえて、ストーリー展開に生かしている。作
者の作家としての高い能力が遺憾なく発揮されていると言ってよい。

 犯人特定の結果と経緯はミステリーとしての意外性があると言えばそう
だがやや無理筋といえなくもない。
                      (以上この項終わり)