読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

中嶋博行の『新検察捜査』

2018年08月23日 | 読書

◇『新検察捜査』 著者:中嶋 博行  2013.10 講談社

     

    江戸川乱歩賞受賞の『検察捜査』から19年ぶりの続編書下ろし。
  主人公の女性検事岩崎紀美子は36歳になった。任官して2年横浜地検に勤務した
のち法務省に出向し、訟務検事として国家賠償請求事案等の処理に当たった。その
後、なんとアメリカに留学しFBI付属の研究所で異常犯罪者の解析に取り組むとい
う貴重な体験をして帰って来た。(検事不足であえいでいる検察庁がよく彼女を海
外研修に出してくれたものだと思う)

 17歳の少年がアルバイト先のファーストフード店で同僚の女性店員を襲い心臓を食
べるという猟奇殺人事件があった。ソウルガード事件と称された犯人の少年は即逮捕
された。少年は殺人・死体損壊で起訴され裁判では心神喪失状態での犯行とされ無罪
となった。
 横浜地裁は医療監護法に基づく司法入院を決定、湘南衛生病院に収容した。岩崎検
事が治療状況の把握を担当すことになった。

 一方同時期、横浜地裁では被告の開業医が法廷で何者かに射殺されるというショッ
キングな事件が発生した。これも岩崎検事が刑訴法193条第3項の「検事捜査」を使っ
て捜査指揮をするよう指示された。相方となる横浜県警捜査第一課長は10年前捜査係
長だった郡司警視。

 二つの事件は一見何の関連もないように見えたが、調べを進めた岩崎検事は、警察
庁・警視庁・衛生省に潜む一部グループが、
マイナンバー制度を悪用した国民監視シ
ステム構築しようと企む計画を見抜き、郡司課長らと共にグループを追い詰めていく。
 前作とは異なり、終盤で銃弾を受けた岩崎検事もSATの一員を撃つという派手な銃
撃戦でFBI での銃撃戦研修成果を披露したり、悪徳グループに使嗾を受けたソウルガ
ードの少年に襲われて、危うく心臓を喰われそうになるというドラマチックな展開も
あってなかなか楽しめる。

 実は岩崎検事は現在バツイチ。損保に勤める男性と結婚したものの1年で破局。幼
稚園に通う美沙という娘がいる。追い詰められた悪徳グループが美沙を誘拐し、岩崎
検事の追及の手を縛るという展開を予想したのだがそれはなかった。考えすぎ。

 作者が病気療養のために創作活動が一時中断したらしいが、『新々検察捜査』も検
討してほしい。
                          (以上この項終わり)

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