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読書・水彩画

明け暮れる読書と水彩画の日々

 山本兼一『夢をまことに』を読む

2015年06月23日 | 読書

◇『夢をまことに』 著者:山本 兼一  2015.2 文芸春秋社 刊

  

 江戸時代後期―文化・文政期の実在の人物「国友一貫斎」の一代記である。
 2014年2月に亡くなった作者山本兼一が最後に残した作品。(初出:京都新聞2012.71―2013.6)

 近江の国国友村は足利時代からの鉄砲つくりの地である。鉄砲鍛冶の年寄脇として村の指導的立場
 にあった国友一貫斎は、持ち前の旺盛な技術的好奇心からオランダ渡りの空気銃、屈折望遠鏡を手
 掛け、「より精度の高いものを」という負けん気をばねに苦節を重ね、一つ一つ技術者としての夢を形
 にしていく。鉄砲鍛冶は人の役に立つものなら何でも作るという気概がある。「人は夢をまことにする
 ために生きているのだ」という信念を持つ一貫斎の夢は、油を足さなくてもよい灯明り、飛行船や、
 潜水艇にまで及ぶ。そして実際に身を持って難問に取り組み、実験し、体験し、難問を一つ一つ克服
 していく。日本人が生まれながらに持っているらしいものづくりの神髄がそこに見られる。
 悪人は一人として出てこない。爽やかな作品である。

 (以上この項終わり)