2006年3月26日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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今日は高岡誠さんと恵子夫人による『朗読とギターのひととき』がミューズサロンを満席にしてサロン始まって以来はじめての世界が広がりました。

私自身、お二人の朗読とギターを初めて聴いたのですが、『すばらしい!』の一言でした。ギターの演奏会なのですが、普段聴くものとは違った新しいギター演奏会の空間を創り出していました。朗読とギターなんて昔からあるじゃないかと思われる方も多いかと思いますが、確かに「プラテーロと私」は今までも聴いた事がありますし、他の朗読とギターもテレビでも見た事があります。しかし、ギターをバックに朗読だけではなく、プログラムの全曲を恵子夫人が素晴らしい声と語り口調でナレーションされて、高岡さんがおもむろに楽曲を奏でられるんです。

「そっと目を閉じると、懐かしい幼き日の思い出、今日まで歩んできた人生の小径の、愛すべき断片の数々が、静かに浮かんでは消え、また現れては去ってゆく・・・。本日のプログラムの冒頭に、時折胸に抱くこの深い想いを、ホセ・フェレールの哀しく、おだやかなメロディーに乗せてお聴きいただきましょう。」
と、フェレールの3つのメロディー作品42より、瞑想(沈思)がおもむろにギターの音色にのって聞こえて来るんです。それが素晴らしい雰囲気、空間なんです。そして一部の終わりはプラテーロと私。もう全員が別の世界に引き込まれていました。

私は一部が終わって「今から15分の休憩をいただきます」と言うアナウンスをするのを憚りました。素敵な世界に聴衆が酔いしれているんです。余韻に浸って入るんです。その空気を私が壊してしまうんです。「終演後に打上げも行いますから・・・」と打上げに誘うという野暮な話をするんです。ついつい声が小さくなって申し訳なくアナウンスをさせていただきました。それ程に素敵な空気だったんです。(本当は人の熱気でサロンは蒸し暑く、酸素不足状態だったのに・・・)

そして2部はソルの魔笛、アルベニスのアストリアス、コルドバ、ロドリーゴの祈りと踊りへと盛り上がり、最後は高岡さんの本領を十二分に発揮したホセ・ルイス・メルリンの思い出の組曲で会場は最高潮に達しました。アルゼンチンのフォルクローレのリズムであるチャカレーラやカルナバリート、そしてベネズエラのポロポなどを見事なリズム感で聴かせてくれました。これだけのリズム感を、雰囲気を出せる日本人は少ないですね。ミューズサロンが割れんばかりの拍手に包まれました。

アンコールには同じくアルゼンチンの「コジータ」と2曲目には岐阜の作曲家・後藤千秋さんの「夜想曲」を演奏されたのですが、この曲も恵子夫人の素敵なナレーションで始まりました。
「いつの間にか、日は沈んで、辺りはシンと静まった春の宵。さっきまで遊んでいた、かすみがかった野山も、まるで大きな暗幕をかぶせたかのように、暗く、ひっそりしている。見上げると、・・・中略・・・、夜のとばりが、今日一日の疲れをそっと癒してくれる。星たちにやさしく見守られて、ゆっくり おやすみなさい。」そしてうつくしいトレモロが始まりました。   

山下 高博



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