2006年3月2日のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> クレオ・レーンとジョン編

今回はジョン・ウィリアムスと、世界的なジャズ歌手クレオ・レーンとの共演のレコードのお話。
クレオ・レーンはジャズ・ポップスだけには留まらない世界的な、まさに大歌手。
今から30年ほど前、ジョンが花柄のブラウスと細身のスラックスにブーツといったクラシックギタリストとしては異例のいでたちでステージに立っていたころ、むしろ活動の中心がポップス系の音楽に偏っていたころかも知れんが、クレオ・レーンという一人の世界的に有名なジャズシンガーと共演したレコード(LP)が売り出されたことがある。1977年の発売だから、ほんとに今からだと29年前ということになり、ジョン・ウィリアムスもまだ36歳、今のおいちゃんより22歳も若かったころなんよ。

ジョンがポップスにはまっちまって、あまりクラシックギターの演奏をやっていなかったころだったかもしれんが、とにかくジョンのレコードが久しぶりに出たといって喜んで手に入れた。
曲はというと
①フィーリング(モリス・アルバート)
②時は過ぎ行く(ポール・ハート)
③やさしく歌って(ノーマン・ギンベル&チャールズ・フォックス)
④愛が古くならないうちに(フラン・ランズマン&D・ムーア)
⑤二人だけの日々(クレオ・レーン&ジョン・ダンクワース)
⑥波(アントニオ・カルロス・ジョビン)
⑦エリノア・リグビー(ジョン・レノン&ポール・マッカートニー)
⑧愛にめざめて(J・ムーア&D・ロス)
⑨イフ(ディヴィッド・ゲイツ)
⑩チャームズ(クレオ・レーン&ジョン・ダンクワース)
⑪スリープ・ナウ(B・パットン&ブライアン・ギャスコイン)
⑫ヒーズ・ソー・ビューティフル(クレオ・レーン&S・マイヤーズ)

以上12曲だけれども、見てもらえば分かる通りもうバリバリのポップスばっかし。これをクレオ・レーンが歌ってジョンがギターで参加しておるんだけども、これがある意味ジョンのレコードの中でも名盤中の名盤(とおいちゃんは思う)なんだわ。なにしろそのレコードは、当時レコード屋さんの分類ではクラシックギターの中には入っていなかったので(中身がポップスなので当然ていやあ当然なんだが)あまりクラシックギターの世界では知られていなかったみたいなんだけども、歌はどだい超一流で文句なしだし、ギターはっていやあ、これ以上はおらんような名手ジョン・ウィリアムス。それもジョンのギターは、ただミスなく、そつなく弾いとるだけではのおて、そりゃあそりゃあもううみゃあもんだ。歌心をつかんどるっちゅうか、ポップスに成りきっとるっちゅうか、とにかくポピュラーな音楽がそりゃ「品のいいおミュージック」になっとる。

最近はクラシックとかジャズとかポピュラーとかの境界線が段々取り払われてきて、クラシック奏者がジャズやポップスも演奏することはそんなに珍しくなくなってきたし、新しく作られる作品自体が、そのような境界線を無視したようなものが多くなってきた。
またキース・ジャレットのようなバリバリのジャズピアニストがバッハの平均律全曲を演奏しておるし、フリードリッヒ・グルダは随分以前からジャズを弾いておった。またちょっと若いところでは、やはりピアノのジャン・イフ・ティボーデなんかもジャズを大真面目に演奏しているし、ヴァイオリンの世界ではこれまたジャズやポップス、はたまた歌謡曲まで演奏するクラシックヴァイオリニストがおりまする。なんだかクラシックの演奏家はポップスの世界に憧れて、そこに新しい可能性を求め、ポップスはポップスで、なんだかクラシックの世界に一種の畏敬というか憧れがあって、そこから何か新しいものをと期待しておるのかもしれんが、要は音楽は音楽、「天は音楽の上に音楽を作らず、音楽の下に音楽を作らず」と福沢諭吉みたいなことを言って、「楽しけりゃ何でもええんでねえの?」てなもんで、どんどんジャンルの垣根が消滅しつつあるようだ。

そう考えると、ジョンがやってきたことは、当時恩師のセゴヴィアさんなんかから見たら、「あのばかたれが、またこんなことばっかりやりおって」と言ったか言わなかったか、私らにゃあよう分からんけれども、あんまり気分は良くなかったんではにゃあかと推察するが、今から見りゃあ随分時代を先取りしとったのかもしれんなあ。
とにかくこのクレオ・レーンとの、現代風に言わしてもらえばジャンルを越えた「コラボレーション」、なかなかええもんなんだわ。なんせLPしかねえもんだから、簡単にミューズのおいちゃんにかけてもらうわけにはいかんけれども、そのうちLPからCDに落として永久保存版としておきたいと考えておりまする。
それまで皆さん、お楽しみにー!
内生蔵 幹


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