2006年8月のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> ジュリアン・ブリームのジュリアーニ

 写真にある2枚のレコードは、どちらも中身は同じジュリアーニのギター協奏曲第1番、イ長調 作品30とマルコム・アーノルド作曲のギター協奏曲。右は日本で発売になった時に購入した邦盤。左は数年前、中古レコード店で見つけて、予備のためにと思って購入した輸入盤です。国内盤の方はいつごろだったか、たしか高校生のころか、大学に入ったばかりのころでしたでしょうか、地元の街のレコード店で見つけて購入したもの。
そのころは、ギターの協奏曲といえばロドリーゴのアランフェス協奏曲くらいしかなく、イエペスが弾いていたヴィヴァルディのニ長調のコンチェルトなんぞは、とてもいい曲なんだけれども、所詮リュートのための協奏曲であって、ギターのオリジナルではないという気持ちがあったので、このブリームの弾くジュリアーニのコンチェルトのレコードを見つけた時は、ジュリアーニにオリジナルの協奏曲があったんだ!と、小躍りして喜んだものでした。早速家に帰って聴いてみましたら、一遍に大好きになり、「よーし、俺も上手くなって、いつかこのコンチェルトを弾いてやるぞ!」と心に誓ったのでありました。

いつか楽譜も手に入り、毎日のように練習しておりましたが、この曲はジュリアーニの特徴あるエッセンスを全てその中に含んでいて、音階からアルペジオ、そして特有の展開、またジュリアーニ特有の分散和音の上昇、下降と、ふんだんに基礎的な要素が出てきて、むしろそれの連続といったらよいでしょうか、この曲を弾いているだけで、ギターの基礎練習をやっているような効果がありました。
その後あらゆるジュリアーニの曲を弾いてみても、すべてこのコンチェルトの焼き直しのようで、違う旋律を、ジュリアーニ特有のエッセンスに乗せて、順序を変えて出していくような趣がありました。それは恐らく最近よく演奏される「ロッシニアーヌ」なんかでも同じじゃないでしょうか。なんだかジュリアーニの曲は1曲まともにマスターすれば、あとはなんでも来い、といった感がありますね。そういった意味でも、みなさん、ジュリアーニの大曲をひとつ、じっくり仕上げてみてはいかがでしょうか。ひとつひとつパターンに区切って、ゆっくりゆっくり。最初は止まる一歩手前くらいの速さでいいから、そのジュリアーニ一流の音形パターンを繰り返し練習してみたらどうでしょう。

そうやってなんとか3楽章まで指が通るようになってきたら、今度は弦楽合奏と合わせてみたくなりますね。でも当時は今のようにコンチェルトのカラオケなんてありません。仕方が無いので、ブリームの演奏するレコードに合わせて一緒に弾くしかない。自宅でもやりましたが、いつかお話した伏見にあった荒井貿易のビルの地下。ギター喫茶「アリア」へ行って、同じレコードをかけてもらい、レコードと競演しました。何度も何度もやりましたねぇ。考えてみると、やはりレコードに合わせて弾くなんていうと、あせってしまって、どこまでも力みまくってしまうのですが、そこは若さですね。最後まで弾ききって汗をかいたことが何度もありました。その後いつかマンドリンオーケストラですが、この曲を演奏させてもらう機会に恵まれ、とても気持ちのいい思いをさせてもらったことも、今にして思うといい思い出です。

それとB面のマルコム・アーノルドのギター協奏曲、これは最初聴いた時は「なんじゃこりゃあ」という感じがしましたが、2度、3度と聴くうちに、段々と気に入ってしまい、楽譜をと思ったのですが、その時はどうしても楽譜を手に入れることができず、従って今まで一度も弾いたことがありません。しかしこのレコードのおかげで、マルコム・アーノルドというイギリスの新しい作曲家を知り、そのジャケット解説でジャンゴ・ラインハルトというジャズギターの巨人も知ることができたのでした。
ブリームが演奏するこのギター協奏曲が、ジャンゴ・ラインハルトというジャズギターの名手を讃える音楽になっているという。ジャンゴ・ラインハルトはブリームやアーノルドからも、またその他の多くの音楽家からも尊敬を集めているという。
そんな解説を読みながら、クラシックとジャズの世界のつながりというか、関係というか、音楽に垣根はないのかなあと、いろいろ考えさせられたレコードであり、さらに音楽に対する興味をかきたてられたレコードでした。
その後もこのレコードは、私にとってはかけがえの無いレコードとして聴き続けておりますが、持っているレコードの中で、どれか1枚だけ選べと言われたら、私はきっとこのレコードを選ぶと思います。
ぜひ皆さんも、ブリームの演奏するジュリアーニのギター協奏曲、イ長調 作品30とマルコム・アーノルド作曲のギター協奏曲、一度はお聴きになってください。
内生蔵 幹 (うちうぞう みき)

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この日曜日と月曜日はイタリアの巨匠、ステファノ・グロンドーナのコンサートとマスタークラスがあり、二つとも大盛況。何より嬉しいのは来て頂いた皆さんが異口同音に『とても素晴らしかった!感動した!とっても良いものを企画してくれてありがとう!』と喜んでいただけた事です。

コンサートは早くから予約が満席で、10人近くがキャンセル待ちをしていただき、3名程がキャンセルが入り入場いただけました。当日もキャンセルが出ないかと時間ぎりぎりまでお待ちになる方がお二人いて、止むを得ず立ち席了承の上、入っていただきました。

グロンドーナの演奏は正統派の真正面から取り組む演奏でとても素晴らしい音楽を聴かしてくれました。彼自身がマスタークラスでも何度も受講者に言っていましたが、『ギターを弾くのではなく、自分の内にあるものを表現する媒体としてギターがあるのだ。』と、その通りの演奏でした。決してテクニックを見せたり、奇を衒った演奏ではなく、音楽と四つに組み、一音一音の音への気配り、コントロールが素晴らしく、ひとの心に響く演奏でした。
彼が今回持参したギターは1973年作のロマニロスで長年ジュリアン・ブリームが使用していたと言う貴重なギターで、甘くていい音色でした。彼はかた時もギターを離しませんでしたね。それ程大事な楽器なんですね。

プログラムは彼が特に研究をしているリョベート作品で一部を飾ると言うもので下記の通り。
<第1部>
「エル・メストレ」 ~ミゲル・リョベート讃歌~
1.M.リョベート(1878-1938)
  6つのカタロニア民謡
  「先生」「聖夜」「糸を紡ぐ娘」「うぐいす」「あととりのリエラ」
  「商人の娘」
2.R.ロゲリオ・ビリャール(1875-1937)-M.リョベート編
   スペイン舞曲
   * * *
3.R.ビリャール - M.リョベート編
   レオン地方の歌
4.M.リョベート
   7つのカタロニア民謡
   「アメリアの遺言」「盗賊の歌」「レリダの囚人」「聖母の御子」「哀歌」
   「王子」「羊飼いの娘」
5.フェデリコ・ブファレッティ-リョベート編
   マズルカ
   * * *
6.ミゲル・リョベート (1878-1938)
   3つの小品
    アルゼンチン民謡エスティロ
    エチュード
    スケルツォ・ワルツ
<第2部>
1.D.スカルラッティ(1685-1757)-グロンドーナ編
    4つのソナタ
      ニ短調K 21
      イ短調 K54
      イ長調 K431
      イ短調K175
2.A.タンスマン (1897-1986)
    カヴァティーナ
      前奏曲
      サラバンド
      スケルツィーノ
      舟歌
      華麗な舞曲

タンスマンのカヴァティーナについては彼が英語で演奏前にエピソードを話し、『31年前にギリアの講習会で知り合った渡部氏からのリクエストに基づき、永く演奏をしていなかった曲だが、今回彼との31年に亘る友情を祝うために演奏します。』と説明がありました。渡部さんは美山音楽祭で彼を今回日本に呼んだきっかけとなった人で、名古屋にも来て頂きました。

そして、ミューズサロンでの打ち上げ(写真左下)の後、これまたグロンドーナとは旧知の友である酒井康雄さんと、その日レッスンに来ていた藤井敬吾さんらと2次会でいつものイタリアレストランでまた盛り上がりました。(写真右下)
まあ、グロンドーナと藤井さんお二人の良くしゃべった事。セゴビア、ホセ・ルイス・ゴンサレス、ホセ・トーマス、オスカー・ギリアなどの昔話に花が咲いて、二人して喋り捲っていましたね。いろいろ裏話も聞けて面白かったですよ。

さて、長くなりましたね。マスター・クラスのお話は明日にして今日はこの辺りで・・・。



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渡辺なつ実です。

最近は朝夕がようやく涼しくなってきましたね。
日差しも和らいできた感じで、やっと一息つけそうです。この頃になると、夏の間の疲れが一気に出てくるようです。私も先日少し体調を崩してしまいました。皆さんもお身体には気を付けて下さいね。

さて、今日はギターサークルで活動していらっしゃる皆様に2つお知らせがあります。
ミューズ音楽館では、ギターサークルの皆様に出張グループレッスンとミニコンサートの企画をしています。サークル練習日に合わせて技術指導とミニコンサートの出前を行うものです。技術指導・演奏は、名古屋芸術大学のギター専攻科を今年卒業した若手ギタリストのホープ・山田陽介氏です。練習の合間の休憩時間などにミニコンサートと技術アドバイスはどうでしょうか?

もう一つは、編曲についての企画です。ギターサークルの活動の中で、弾きたい曲があるけど楽譜がない、あるいはアンサンブルの編成に適した楽譜がない、ということはありませんか?ご要望にあった編成、スタイルで編曲いたします。また、技術レベルに応じた編曲も承ります。編曲は、私渡辺なつ実が担当いたします。

両方とも、詳細はHPにてお知らせしています。

昨日と今日はステファノ・グロンドーナギターコンサートとマスタークラスがありました。この2つについてはまた後日ブログにてお知らせします。お楽しみに




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今までにアルゼンチン赴任と言うタイトルで7回も書いていますが、仕事のお話をしていませんね。今日は最初の仕事であった事務所の登記と事務所の物件探しについてです。

登記については、先回出張で来たときにビザの申請を依頼した弁護士に登記の依頼もしてあったので、私のワーキング・ビザが下りて赴任すると直ぐに着手できました。住所も、赴任して2ヶ月近くは代理店(インポーター)の一部屋をお借りして仕事をしていましたので代理店の住所で登記を進めました。
しかし、代理店にあまり借りを作るのは良くないと言う事で、事務所の物件探しをしなければいけません。何せ私のミッションは代理店の資質、将来性、跡継ぎ問題、市場性などを勘案してして当面代理店の育成に専念するのか、決別してヤマハの販社を作るのかの結論を導き出すことにあるわけですから。
代理店としては『いいじゃないか、ずっと内の部屋を貸すから・・・。』なんて言ってくれるんですけど、『いやいや、いつまでもご迷惑を掛ける訳にいかないから。』と言ってはチョッピリ後ろめたさを感じながら物件探しに精を出しました。

不動産屋から紹介される物件を10数件見ました。私と将来採用する秘書の二人だけの予定ですから小さな事務所でいいんです。それが家賃と地理的条件、大きさなどが程良いところがなかなか見つかりません。しかし、あまり長引くと本社から『何やってるんだ』とお叱りを受けかねません。不動産屋をつつきました。そして2ヶ月近くが経とうとしている頃、代理店から歩いて5分と言う立地条件でいい物件が見つかりました。

机やキャビネットなどは、丁度その頃にある邦銀の駐在員事務所が引き払うところでしたので、その事務所のものを安く譲っていただく事が出来ました。これはタイミングのいい話で助かりました。

次は秘書探しです。これは結構楽な様で難しい仕事です。
人材派遣会社に依頼して何人か面接します。試験採用期間として2~3ヶ月使ってみて採用を決めればいいのですが、外国語(スペイン語)での面接で相手の人格、力量、性格を見抜くのが結構難しいですね。日本語ですと細かなニュアンス、言い回しによる相手の考えている事や性格も判断できるものが、外国語ではなかなか難しいですね。5~6人面接して決めた最初の秘書は外れてしまいました。ウソを付くのですね。2ヶ月で派遣契約を中止して、新しい人の紹介を依頼。二人目は人柄は良かったのですが、PCの能力と積極性が今ひとつで長続きせず。そうこうしている内にいろんな日系企業の従業員を見ると、日系人が非常に良く働き、安心感があることに気がつきました。結局日系人を採用することになりました。彼女はまじめでよく働きます。日系2世なので日本語も少し話しました。今もアルゼンチン支店に勤務しており、私の誕生日には必ずメールで『おめでとう!』と送ってくれるんです。


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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 芸術的な「イエペスの芸術」のLPジャケット
 たしか高校の1年か2年の冬だったと思う。名古屋の愛知県美術館で恒例の「日展」が開かれており、友人と二人でそれを見に行った帰り、納屋橋にあるヤマハのレコード売り場に立ち寄り、いつものようにいろいろと見ていた時だった。突然目に飛び込んできたのは、写真にあるような「イエペスの芸術」と題したLPだった。来日記念盤と帯に書いてあったような気がするが、何しろその洒落たデザインが強烈だった。まずレコードのジャケットでモノクロ写真というのが斬新だった。それに構図というか、カメラワークというか、当時としては異例の角度からの写真であった。まず私はこのジャケット写真に心底惚れてしまい、中身はともかく、この素敵な写真のジャケットのLPがどうしても欲しくなった。

私はそれまでイエペスのレコードといえば「アランフェス協奏曲」のレコードしか持っていなかったので、イエペスなるギタリストの実態というか真価をまったくといってよいほど知りませんでした。もちろんルネ・クレマン監督の「禁じられた遊び」の音楽を担当、演奏していて、そちらでは何回も聴いたというか見たことはありました。しかし、先ほど言ったように、当時私はクラシック・ギタリストとしてのナルシソ・イエペスの本領をほとんどといっていいくらい知りませんでした。いつもどんな曲を演奏しているのか、どんな音楽が得意なのか、もっとイエペスの本領を発揮した演奏を聴いてみたい!と、いつも思っておりました。そんな時、ヤマハでこのジャケットを見つけたのです。もう心臓バクバクでしたね。今思うとそんな時代だったんでしょう。たしか1964年ころだったと思います。

このレコードも、録音は1960年キングレコードのスタジオで行われ、発売が1961年となっているので、1964年ころに来日記念盤というのもおかしいかもしれませんが、恐らく最初の発売の時とジャケット写真を取り替えて再発したんだと思います。それにしても珍しく国内録音だったんですね。
兎に角収録曲をご紹介しましょう。
①J.P.ラモー:メヌエット、②D.スカルラッティ:ソナタ ホ短調、③G.サンス(イエペス編):スペイン組曲、④ロマンス(禁じられた遊びのテーマ)ここまでがA面。B面はというと①F.ソル:メヌエット第5番ニ長調、第6番イ長調、②F.ソル:モーツァルトの主題による変奏、③ヴィラ=ローボス:前奏曲第1番、④L.ピポー:舞曲第1番、⑤I.アルベニス:マラゲーニャ(入り江のざわめき)

恐らく、ほとんどの方はこのプログラムを見れば、それらがどんな演奏だったか、恐らく何度も聴いてご存知だろうと思いますが、当時の私としては、そのあと出てくるジュリアン・ブリームのレコードと同じく「バイブル」のごとく毎日、毎日聴いたものでした。すべての曲が魅力的でした。ソルの魔笛の変奏もセゴヴィアと違い、何だか軽やかで明るく、こちらが「本物の古典」という感じがしました。ヴィラ=ローボスの前奏曲なんかは、やはりこんな魅力的な旋律があるのか!と驚嘆させられ、それがブラジルの民謡から採取されたものを原点にしているらしいと分かると、なんだか見知らぬブラジルという国が、とても身近で、しかも神秘的な雰囲気をもったところに思え、いつしか尋ねてみたいと思うようになったものでした。そして決定版はピポーの舞曲第1番です。こんな音楽があるのか!ギターが上手くなれば、こんなかっこいい曲も弾けるようになるんだ!そう思ってギターをやっていることに感謝したものでした。かっこよく言いましたが、つまり「こんな曲があるなんて、ギターやっててえがったぁ!」ちゅうことです。
でも音を聴いているだけでは、どうやって弾いているのか分りません。どうやって1弦の上を飛び回る旋律を弾きながら、3弦のラの音でずっとリズムを刻み続けることが可能なのか。どうやって低音だけのかき鳴らしでリズムを刻めるのか。まったく当時の私にしてはミステリアスでした。ミステリアスであると共になんとも魅力的なギターの未来を感じたのでした。「これからはイエペスの時代やんかぁ!」「イエペスおじさんについて行こぉ!」そう思いましたねぇ。後から振り返れば、ジョンにもついて行ったし、ブリームにもついって行ったし、何にでもホイホイついていってしまい、若い女の子だったら誘拐されて、身代金のひとつも請求されるところだったかもね。それくらいこのLPの魅力は尽きなくて、若いころの私の「ギターが上手くなりたい!」と思う気持ちの原動力の、少なくとも50%は締めておりましたねぇ。

そして、やはり最初に言ったジャケット写真の魅力は今でも健在。私にとってだけかもしれませんが、いまだにこの「イエペスの芸術」と題したLPの、ジャケット写真の魅力を超えるジャケット写真にお目にかかったことがありません。イエペスにはそんな魅力的な写真のLPが他にもあって、それはまた別の機会にご紹介しましょう。
それにしても最近のCDのジャケットもこれくらい芸術的に作ってもらいたいものですね。CDを手にする魅力がもうひとつ増えることになるってもんです。


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