2011年6月のブログ記事一覧-ミューズの日記
ミューズ音楽館からの発信情報  ミューズのHP  http://www.muse-ongakukan.com/

 



先日の日曜日(6/12)は益田正洋さんによる講習会とミニコンサートでした。
今年はこの種の講習会とミニコンサートに力を入れているのですが、その中の一つとして今回は中堅ギタリストのトップランナーである益田さんに、スケールとアルペジオの練習曲を題材にどのような練習をすればよいかと言う観点での講習をして頂きました。
予め課題曲として選んであったカルカッシ25のエチュードの第1番と第3番をモデル生徒さんに受講していただきました。モデル生徒さんのレベルが高かったためあまり基礎的なお話にはならなかったのが、残念でしたが、とても為になる講習会でした。

聴講された方のお二人からメモ書きを頂きましたので、一部をピックアップさせていただきます。
◆エチュードNo.1(スケール)について
・弦の上をうまく歩く
・弦を捉える
・音の粒をそろえる
・文章が分かれるようにフレージングに気を付ける。
・主和音(安定)、属和音(緊張)など和音の持っているテンション、表情を感じ取る。
・スケール練習とはスケールの持っている表情を感じ、音楽に生かすことである。
・クレッシェンドの時に速くならないこと。メトロノームを使って練習するのも方法。
・右手を安定させるために親指を弦の上に置いて、imと親指とをセットで腕全体を上下して弦を移動する。出来ないときは解放弦で練習すること。
・余裕のあるテンポで練習すること。脳がついていけない速さで弾くとミスの原因となる。

◆エチュードNo.3(アルペジオ)について
・手の重さを感じながら、手を握るように動かす。(甲を少し押す感じで)指を振りぬくことに注意し、指を置いた後に音を出す。
・和音はimaを閉めるよりやや開いて弾弦する。i-m,m-aの間に細い鉛筆を挟んで練習るるとよい。ima各指に個別に意識をすることで音のバランスを取ることが出来る。iを強くしたり、mを強くしたり、aを強くしたりコントロールも出来るようになる。

以上、一部を掻い摘んでご紹介いたしました。皆さん熱心にメモされていますよね。

そして演奏は下記の通り、ほぼハーフコンサート分を演奏して頂き、皆さん大満足でした。
F.ソル / 魔笛の主題による変奏
I.アルベニス / 入り江のざわめき、グラナダ
E.グラナドス / スペイン舞曲第2番「オリエンタル」
E.グラナドス / 詩的ワルツ

終演後にはCDのサイン会(バッハ、スペイン、そしてエチュード集の楽譜とCDが沢山売れました)。
その後はモデル生徒さんたちと打ち上げに。お酒もまわったところでギター演奏が始まり、数十曲出たでしょうか、部分的に演奏してくださいました。
山下高博

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




<あれも聴きたい、これも聴きたい>シリーズ「ギターの名手たち」のラゴスニック

 「昔はえがったなぁ」などというつもりは毛頭ないけれども、今振り返ってみるとあのころ(昭和40年代)はこんなものを出して果たしてちゃんと売れたんだろうかと余計な心配をしてしまうようなレコードが結構あった。今回はそんな貴重なものの中から1枚、ロベール・ヴィダル監修「ギターの名手たち」という名で発売されたシリーズの中の第8集、若かりしころのコンラッド・ラゴスニックの演奏を収めたもの。しかも収録曲がなんとも渋い。A面には20世紀フランスの作曲家ジャック・ボンドンの「ギターとオーケストラのための三月の協奏曲」。B面にはド・ヴィゼー作曲「組曲ニ短調」とソルの「モーツァルトの主題による変奏曲」の2曲のみ。

■このシリーズは、当時世界的に最も権威のあるとされたパリのギターコンクールから育った優れたギタリストを世に紹介する目的に製作されたものだったような気がするのだが(あまり自信はない)、商業ベースには乗りにくい大変良心的な企画だった。
そのシリーズの中には他にマヌエル・ロペス・ラモスがギターを弾いたテデスコのギター五重奏曲などがあり、私たちは当時あまり聴く機会のなかったこの曲をワクワクしながら聴いたものだった。その後アリリオ・ディアスが良い演奏をしたレコードを出し、少しづつ世に知られるようにはなってきたが、当時この曲は私が知る限りセゴヴィア以外録音がなかったので、このマヌエル・ロペス・ラモスのレコードはとても貴重なものであった。

そもそもジャック・ボンドンという作曲家、知っている人がどれほどいるのかわからないが、三省堂出版の音楽辞典を見てもその名前は出ていない。今でもコンサートで取り上げられるギターの協奏曲となるとロドリーゴのアランフェス協奏曲が圧倒的で、次に続く「ある貴神のための幻想曲」でさえぐっと落ちる。そのあとはさらに少なくなってテデスコのギター協奏曲ニ長調かヴィラ=ロボスのギター協奏曲どまりだろう。その他となるとせいぜいジュリアーニのギター協奏曲イ長調作品30かヴィヴァルディのギター(リュート)協奏曲ニ長調くらいで、それ以外の曲を聴けるチャンスはほとんどない。現在でもそんな状態なのに、当時(今からゆうに40年以上は経っている)、こんな渋い曲を入れたレコードが一般に発売されていたわけだから驚く。とにかくその後もこのジャック・ボンドンの作曲した「三月の協奏曲」を録音したレコードは、このラゴスニックの残した演奏以外お目にかかったことがないし、少なくともこの日本において実際にコンサートで演奏されたということを聞いたこともない。この曲には管楽器や打楽器が大変多く使用されておりオーケストラの規模も大きい。アランフェスのようなポピュラー性には乏しいが、イエペスが録音しているオアナやピポなどの作品に比べればずっとオーソドックスで聞きやすい作品だし、ギターとオーケストラの関係もあまり音がかぶらないような配慮がなされているため演奏効果も高く、いつでも演奏可能な作品ではないかと思う。またこのジャック・ボンドンには私のLPコレクションの中にもう1曲ギターのための協奏曲があって、そちらの方はロバート・オウセルがソロをつとめているが、こちらも作風としてはあまりアカデミックに走らず、「三月の協奏曲」同様大変聞きやすい作品だ。実際のコンサートとなると主催者側としては集客のことを考えれば「どうせならアランフェスを・・・」となってしまうのだろうが、そろそろ日本の音楽界もこのような状態から少しは抜け出して、もっといろいろな作品を取り上げてもよいのではないかと常々考えている。

それはともかくこのレコードに見られるラゴスニックの演奏は大変手堅く良心的なもので、まさに「ギター音楽」というよりも「西洋音楽の王道」といった感がある。テクニックも素晴らしく、コンピュータを使った現在のデジタル録音と違って、あまり録音後の修正のききにくいアナログ録音であることを考えると見事な指さばきである。ド・ヴィゼーの組曲は時代様式はともかく大変かっちりと弾かれていて、録音された年代のことを考えれば大変好感がもてるし、ソルの魔笛も序奏が現代の常識的な演奏と比べればかなりのハイスピードで少し違和感を感じることを除けば情緒に流されない正統派という気がする。しかも当時はセゴヴィアをならって序奏は弾かれないことが多かったので、その面でも我々にはとても参考になったし音楽としても新鮮な気分で聴くことができた。またその後に続く主題、変奏、終曲、どれをとってもラゴスニックは見事なテクニックで自然な音楽を展開しており、元々ソルの作品自体、出身地であるスペインを感じさせる要素は少ないため、ソル自身もこのラゴスニックのように弾いていたのかもしれないとさえ思えてくる。おしむらくはこのレコードのどこにも録音に関係するデータ(年月日、場所、使用楽器、録音機材等)が記載されていないばかりか、なんと演奏しているラゴスニックさんについてさえ、写真を載せているだけでその経歴も何も記載していないのはどうしたことだろう。しかし百歩譲って発売された年代のことを考えると、このように良心的な内容のレコードがシリーズで一般に発売されていたことに感謝せねばならない。やっぱし昔はえがったんかもしれんなぁ。
内生蔵幹(うちうぞうみき)


コメント ( 1 ) | Trackback ( 0 )




今日は28回目のワンコインコンサートでした。
バロック・リュートソロ、ギターソロ、ギターデュオ、テルミンとギターと言う演奏形態とバロック音楽、古典、近代スペインもの、チックコリア、カンツォーネ、そしてアニメのテーマと幅広いジャンルの音楽が演奏されました。

先ず、私が感動したのは2番目に演奏された方でした。演奏曲目はソルの月光とエチュード作品60-18(セゴビア編ソル20のエチュード第4番)です。椅子に座られてから、ワンコイン初参加の緊張が伝わってきます。弾き始める前に精神統一をされて、さあ、弾き始めようかと思った瞬間右手が大きく震え始めました。そこで息をのんで手の震えを抑えます。震えが止まったところで、弾き始めますが、また震えが始まり、3つくらい音を出して止まります。もう一度精神統一をし直します。張りつめた空気が流れました。ところが次の瞬間、美しい音が流れ始めました。しかも、震えもなく、安定した演奏で、音楽的にも素晴らしい月光が流れてきました。これには聴衆全員が息を呑んで聞き入りました。感動の瞬間でした。そして、最後まで見事に弾き切りました。おめでとう!是非また出演してくださいね。

以前も手の震えで演奏が出来なくなり、何度も弾きなおすのですが震えが止まらず、結局その日は途中でギブアップされた方がいました。「とっても悔しい!また次回チャレンジします。」と言って悔しい思いで帰られた方がいました。そして、次のワンコインに再度挑戦して、見事に手の震えもなく最後まで完奏されました。「うれしい!!これで自信がつきました!」ととても喜んで帰られました。それから人前で何度も弾くようになられて、ギターライフを楽しんでいらっしゃいます。これがワンコインコンサートの良いところですよね。だから、まだ出演されたことがない方は是非挑戦してみてください。誰にもはじめの一歩はあります。

ところで、今日の聴衆賞は高校生の紀藤(きとう)君が獲得されました。彼は今度のアマチュアギターコンクールにも出場するようで、課題曲のアレグロ・ヴィヴァーチェと自由曲のバリオスの大聖堂第2、第3楽章を演奏されました。歌心もあり、指も良く回っていて、気持ちの良い演奏をしたのが得票につながったのだと思います。今後が楽しみな高校生ですが、一番の課題は左手の奏法です。頑張ってください。

<プログラム>
1.三浦 章   ロジー伯の死に捧げるトンボー/S.L.ヴァイス
2.小原竹千代  月光(Op35-22)
         作品.6-1/F.ソル
3.辻内 陽子&佐々木響士朗 
         紫陽花/莉 燦馮
4.平田 晃三  作品60番-18/M.カルカッシ
5.熊谷江利子  アレグロ・ヴィヴァーチェ/M.ジュリアーニ
         ファンタジー/S.L.ヴァイス
6.荒木 勇二  南米風前奏曲第3番(田園)/A.カルレバーロ           
         リリウム/小西香葉・近藤由紀夫
7.村上 弘明  月光/F.ソル
         練習曲第1番/G.レゴンディ
8.布目 知弘  トリーハ/M.トローバ
         朱色の塔/I.アルベニス
9.紀藤 聡礼  アレグロ・ヴィヴァーチェ/M.ジュリアーニ
         大聖堂第2・第3楽章/A.バリオス
10. 金田 弘幸  盗賊の歌/M.リョベート
         ワルツ・ショーロ/H.ヴィラ=ロボス
11. 磯村 幸平  スペイン/チックコリア(磯村編)
          きせきを/磯村幸平
12. 野呂正夫&野口千恵
         帰れソレントへ/E.デ・クルティス
         アルハンブラの思い出/F.タレガ

次回のワンコインは8月14日(日)です。
皆さんのエントリーをお待ちしています。
山下高博

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )




先週の土曜日(5/28)は「國松竜次プレイズピアソラ」でした。今回でミューズサロンでの演奏は4回目になり、少しずつファンも増えてきています。兎に角、彼の演奏には人を引き付けるものがあります。もともとギターは音が小さな楽器ですので、一般的には大きな音で演奏することに神経が行きがちですが、彼は逆なんですね。ギターの持っている小さな音を武器にしていると言うか、小さな音で美しく歌い上げて人を引き付ける、そんなタイプの演奏なんです。小さな音で、しかも美しい音で、音を繋いで歌い上げるためには相当指のコントロールが出来ていないと出来ません。彼はそのコントロールを身に付けているんですね。こんなにピアニッシモで上手に歌えるギタリストは居ないでしょう。ピアニッシモが上手だからフォルテが引き立ちます。ダイナミックレンジが広がるんですね。

しかも今回はオールピアソラのプログラムでしたが、これがまた彼には合っているんでしょうね。今まででの4回の中で一番素晴らしいコンサートでした。彼自身も毎回その成長ぶりを見せてくれていて、今回のコンサートは最高でした。また、彼はコンサートのあり方や方法についていろいろと考えています。新しい試みを常に模索されています。今回のコンサートも「プログラムをすべてピアソラにする」ことや、プログラムを作らないで、お話をしながら曲目を紹介していく事で、その場の聴衆との一体感や、次は何を演奏するのだろうと言う聴衆の期待、全容を見せないことによる即興的楽しみなどを醸し出そうとしました。これは大きなホールではやり難いかも知れませんが、ミューズの様なサロンコンサートでは面白い趣向だと思いました。

また来年も来て頂くことになると思いますので、一度國松さんの演奏を聴いてみてください。きっと「良かった!」と思っていただけると思います。
山下高博

コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )