2006年9月のブログ記事一覧-ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 自分の「出した音」をよお聴かなあかんよ 編
 最近、何回か若い人たちの演奏を聴かせてもらう機会に恵まれたが、その時「意外と初見がきかない」ことに驚いたということは以前ここに書かせてもらったが、もう一つ気が付いたことがあるので再度。
 それは、演奏中、ものすごく雑音が多いなあっちゅうことでおます。
 従って、残念ながらその①音の粒が揃わず、音量、音色ともに均一性が今一歩。
 いい音の中に、まず右手に起因する雑音が時々混じる。
 まず音の粒をそろえることを、もっと練習してほしいやんか。

 次に②弦を押さえる時や弦から指を離す時に、不用意な雑音が生じ、またそれが鳴りっぱなしになっているため、これも音色の統一性に欠ける要因となるだけでなく、とても演奏が汚く聴こえてしまう。(ポジション移動の時の弦を擦る音とは違うので間違えないように)
 人間の耳は、自分がこれから出そうとする音色や音量については随分注意深くなれるもんじゃが、「意識せずに出ちまった音」に関しては、ほとんど聴こえないといってもいいほど気がつかねえもんだ。

 これは自分の演奏を録音して聴き返してみりゃあすぐに分かることなんで、ぜひ一度試してみてもらいてえもんだが、できりゃあ、いつも録音機を回しっぱなしにして練習してみることをお勧めしたい。
 なぜなら練習に適度な緊張も生まれるし、第一、後で聞き返すことができるってもんだ。ギターを弾くモンとしちゃあ、まず自分の演奏を第三者の耳で聴いてみるとええ。録音した自分の演奏を聴いて、少なくともCDなんかと比べても「なかなかやるなあ」ぐれえには聴こえるようにならんとあかんわね。がんばってちょ。

 ③また一度出した音が開放弦の場合、いつまでも鳴りぱなしで、次の音に重なって響きが汚なあなる。
 簡単なことなんで試してもらいてえのだが、例えばハ長の音階を弾く時、下から上がっていく時と、上から下がってくる時とでは、音の出方の条件が違うっちゅうことはお分りでっか?上がっていく時はええけども、下がってくる時、何もしねえと開放弦の音が残ってしまうずら?(例えば2弦のシから3弦のラに移る時みてえに、シの音が鳴りっぱなしになっちまうべ?)
ギターの場合、その楽器の構造上、ピアノと違ってこのような現象がおきちまうことはいたしかたがないこととはいえ、これはなんとかしてもらわんとあかん。

 ピアノの場合は、音階を上がる時も下がる時も、音の出方の条件は変わらない。
 そこがピアノという楽器の、構造上の完成度の高さなのであって、一つひとつの音をだぶらせるかだぶらせないかは、弾く者が自由に選択できて「ぐやじー!」と思うのだけど、ギターの場合はそうはいかんところがなんとも悲しく切ない。
 当然ギターを演奏するものとして、音に関しては、出すだけではなく、出した音をどこまで響かせるかといったことまで責任を持たんとあかんことになる。
 広い意味での消音っちゅうことになるが、いずれにしても、自分の音をよく聴きながら練習をしておれば、必ず気がつくはずでなので、「なに? 気が着かんかったあ?」そりゃあかん。一大事!
もし今までそのことに気がつかんかったとしたら、これからの練習は、必ず自分の「出す音」ではのおて、「出した音」をよく聴きながら練習するこった。
 そうでねえと、出した音が出っぱなしで、流しっぱなしのトイレみてえなもんで、まったくコントロールされてねえ演奏っちゅうことになっちまう。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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<あれも聴きたい、これも聴きたい> アル・ヴィオラとT・ハーン

 今回はいつもとちょっと違った、素敵なLPとCDをご紹介。
ギターちゅうものにはいろいろあって、クラシックギターもあればエレキギターもある。フォークギターあるし、エレアコなるものもある。最近じゃぁサイレントギターなんていって音の出ねえギターもあるそうな。(む、音が出ねぇ?)
みなそれぞれ世界中いろんなところで使われておるが、「癒されたいなぁ」と思った時、そんな時にゃぁなんといってもガットギターのソロ。これに勝るものはちょっとねえべ。ギター1本の他はなーんにも無し。ベースもドラムもサックスも尺八もなーんも無し。これが一番!
とにかく、しーんとしたところにガットギターの弦の音だけが、ぼそぼそ響く。クラシックギタリストみてぇに、あんまし見事なテクニックで弾きまくってもらわん方がええなあ。むしろ、ちょっと拙い指さばきというか、ぼそぼそぼそぼそ指頭で弾いてもらった方が、やっぱし雰囲気が出るってもんだ。
薄暗い部屋の片隅からそんなギターの音色が聞こえてくると、おめえ、ウィスキーかなんか片手に、ちびちりちびりやりたくなっちまうべ。そっちのお姉さんなんかブランデーがええかな?なに?焼酎がええってか?ちょっと違うような気がするけど、まぁええわな。好きにしたってちょ。え?私?私はウーロン茶にしてください。

そんな雰囲気で聴くともなしに聴いていると、なんだか変にしんみりしちまって、昔の女に電話なんかしたくなったりして、・・・受話器を取る。すると・・・「おっといけねぇ、おれとしたことが妙にしんみりしちまった。」とかなんとか言ったりして。それでまた聴くともなしにギターの音色に聴き入ってしまう。なーんかそんなええ雰囲気をもったレコードが、写真のLPとCDなのよね。
LPの方は、アル・ヴィオラという1919年、ニューヨーク生まれのジャズギタリストが1957年に録音したもの。彼はいろいろなバンドでも演奏しとったけども、ジュリー・ロンドンやフランク・シナトラなんかとギター1本で共演もしとる。このLPは彼の代表作でその名も“solo guitar”
このレコードはある時偶然見つけたんやけども、もうおいちゃんのお宝レコードの中の最右翼の1枚なんよ。さっき言ったように、ガットギター以外はなーんにも無し。ギターだけ!それもギターをそのまま指頭で弾いており、なんとも素朴というか、正にぼそぼそぼそぼそ弾いとるんやねぇ。

全部ジャズのスタンダードナンバーといっとるけども、あんまし馴染みのある曲は少ない。(おいちゃんが知らんだけかな?)でも中には作者としてデューク・エリントンだのコール・ポーターだのアーヴィング・バーリンだの、はたまたガーシュウィンだのとあるから、詳しい人はみな知っとるんやないやろか。とにかく全編ガットギターのソロばっかし。ほかにはなーんにも無し。
そんなガットギター1本だけの演奏っていやぁ、ほかにもジョー・パスやらアール・クルー、ローリンド・アルメイダ、チャーリー・バード、バーデン・パウエルなど、いろいろおるけども、そのあたりについちゃぁこの次の機会にして、今回は写真の右のCD。これはもうかの有名な「弾き語リスト」T・ハーンこと田中章弘の最新アルバム。え?なに?知らんってか?あっそぉ。まあ最新ったってこれが初めてのCDじゃから、いたしかたねぇといえばいたしかたねぇけど。
とにかくその田中章弘の弾き語りCD。今年7月に出たばっかし。まだ湯気が上がっとるくれえの出来立てのほやほや。日本の文化はなんたって「・・・・立て」を大切にする文化。なんでも採れたて、もぎ立て、炊きたて、焼きたて。とにかく「出来立て」はええよ。

このT・ハーン(関西弁でたなか・はんのしゃれ)のCD。何だか知らんが中のライナーをおいちゃんが書くことになっちまって、夜も寝ずに昼寝しながら書いたがな。そんなことはともかく、このT・ハーンの弾き語り。正に先ほどのアル・ヴィオラのソロギターにボーカルを乗せたような、これまたええ雰囲気のCDに仕上がっとるんやねぇ。
そして入っておる曲も皆さんよーくご存知の曲が一杯。ボサノバあり、ジャズのスタンダードありでなかなかええムード。中にはかの有名なボサノバギタリスト、佐藤正美さんが5曲見事なアドリブで花を添え、ちょっとゾクゾクするところも有り。
生ギターと歌ってぇと、エラ・フィッツジェラルドとジョー・パスの名演があるけども、その向うを張ってええ勝負しとるかな?
このCDはミューズのおいちゃんとこで千円札2枚と交換しておるので、是非に一遍聴いてみたってちょ。しかし、ビール瓶じゃねぇんだからCD返しに来ても千円札2枚は返してくれんと思うけどね。とにかく夜も寝られんくりゃぁ感激して、うなされっちまうぜ。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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24日(日)には高岡誠さんによる『私の脱力法』~もっと楽に弾くために~と言うタイトルでワンコイン講座をやっていただきました。

今回はステージでレクチャーするのではなく、客席右側に高岡さんが陣取って横長に半円を描くようにイスを並べました。これは高岡さんの希望で出来るだけ参加者に近くで手の形などを見ていただけるようにと言う配慮からでした。
最初に参加された皆さんから普段感じている問題点や悩みを訊いて、書き出しました。そして高岡さんの脱力の方法、押弦方法、弾弦方法などを説明しながら、皆さんから聞いた悩み、問題点を一つ一つ解決していく方法で講座が進められました。

真っ先に出た悩みはセーハがうまく出来ない、セーハしたときにセーハする1の指以外が上手く押さえられないなど。またスラーする時に力が入ってしまう、アポヤンドすると隣の弦を強く押してしまう、などなど10項目ほどの悩みが出ましたが、ホワイトボードに書いた各項目を一つ一つ消し込んで行きました。

参加した方からは『大変いい勉強になりました』『今後の練習で一つ一つ実践していきます』など感謝の言葉をいただきました。

手前味噌で申し訳ありませんが、これらのワンコイン講座は本当に皆さんの役に立ってるんだなあとうれしく思います。先生に習っていない人は勿論ですが、習っていても普段のレッスンではなかなか勉強できない事を勉強してもらえるように今後も続けて行きたいと思います。皆さんも是非振るってご参加ください。

次回は10/1に池田浩さんの『ラスゲアードとフラメンコのリズム』です。
お待ちしています。

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10月6日(金)おじゃまします!尾尻です。

今年はモーツァルト、シューマン、ショスタコーヴィッチなどの記念の年ですが、自分的にはどうしても祝いたい作曲家がいた! ブラジル人作曲家ハダメス・ニャタリだ!生誕100周年を迎えたニャタリは惜しくも1988年に亡くなってしまいましたが、協奏曲や室内楽を含めるとギターのための作品は数多く、ギター界への貢献度は高い。ニャタリの音楽は純粋なクラシックなものとは言いがたい面も多々あるが、母国ブラジルの民俗音楽やジャズ等の影響とクラシックとの融合が僕のハートをくすぐる。普段あまりジャズなどの影響を受けているクラシック・ギター曲にはほとんど興味を示さない自分なのにとても不思議・・・・。ということで、7月26日「ブラジルの魂/ニャタリ・ギター作品集」という2枚組のCDをリリースしてしまった。Disc1はギター界でもあまり知られていないが、個人的には素晴らしい作品と信じて疑わないギター協奏曲2曲とピアノとのDuo2曲が収められています。うち1曲はエレキギターとのDuoです。当初エレキは借りる予定にしていたが、練習していくうちに欲しくなってとうとう買ってしまった!Disc2は現在出版されているギター・ソロのオリジナル作品、編曲作品の全てが収められている。これまでオクタヴィア・レコードから、純クラシック音楽のCDばかりをリリースしてきた。今回のレコーディングはそれらと少し違い、とても良い気分転換にもなり、ハードなスケジュールで準備が大変だったことを忘れさせてくれるほど、とても楽しいレコーディングとなりました。

今回そのCDの発売を記念した演奏会をミューズ音楽館で行わせていただくことになりました。選曲はニャタリのソロの曲を中心に、チック・コリアやラルフ・タウナー、今年没後10年となる武満徹の作品で構成し、全体を通してジャズのエッセンスが感じ取られるようなものにしました。ご存知の方もいらっしゃるかも知れませんが、僕は昔ジャズ一筋に勉強していた時期がありました。今日クラシック・ギターの演奏を続けていて、たま~にジャズっぽい仕事もしましたが、それらは自発的にジャズがやりたかった訳でもなく、正直あまり気乗りのしない受身態勢での仕事でした。今回のニャタリのレコーディング以来、昔やっていたジャズの演奏がしたくてたまらなくなってきています。来年以降徐々に自発的なジャズの演奏が始まっちゃうかも!

話は今回の演奏会のことから少し脱線してきましたが、blogっぽくニャタリを通じての近況報告とでもいいましょうか。でもでも、お近くにお住まいのギターFANの方々、お時間がありましたら、是非々々聴きにいらして下さい!お会い出来るのを楽しみにしています!

尾尻雅弘


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昨日は期待の女流ギタリスト宮下祥子さんにミューズサロンで演奏していただきました。彼女との出会いは4~5年前に福田進一さんの企画で静岡で行われた国際ギター講習会とその演奏会でした。その時は受講生による演奏とゲスト(鈴木大介、村治佳織、大萩康司)によるのコンサートもあったのですが、宮下さんはオスカー・ギリアにより最優秀生として選出されました。その時の印象は他の一流の演奏家に混じっても遜色ないものでした。

そして今回は彼女のソロコンサートとして札幌からやってきてくださいました。
私は改めて彼女の人気ぶりに驚きました。先ずはサロンが満席になったことから見ても彼女の人気振りが覗えますが、驚いた事に福岡からもコンサートを聴きに見えた方がいらした事です。その方は先日の大阪のコンサートにも行かれたそうです。そして浜松からもお二人、三重の津市からもと結構遠方から彼女を聴きに来て頂きました。

彼女はとても端正な演奏をします。決して派手にダイナミックな演奏をするのではなく、音楽に正面から四つに組んだ、正統派で美しい演奏です。
楽器は2003年のアルカンヘル・フェルナンデスで、彼女の特注で同厚を少し薄く、ネックも少し細めにしたものを使用されました。現高が少し高めですがローテンションの弦を張り、弾き易い楽器でした。芯のあるしっかりとした音ですが、固くもなく気持ちよく鳴ってくれる楽器です。

プログラムは:
1.社交界の小品作品33-1 (F.ソル)
2.アラビア風奇想曲  (F.タレガ)
3.ヘネラリーフェのほとり  (J.ロドリーゴ)
4.さくらの主題による変奏曲 (横尾幸弘)
5.祈祷と踊り(J.ロドリーゴ)
6.ソナタ (L.ブローウェル)
    1楽章 ファンダンゴとボレロ
    2楽章 スクリャービンのサラバンド
    3楽章 パスキーニのトッカータ
7.トゥリアエラ (R.ディアンス) 
    1楽章 ライトモチーフ ~ ブラジルの武満
    2楽章 ブラックホルン ~ スペインがジャズと出会う時
    3楽章 クラウンダウン ~ サーカスのジスモンチ

先日ブログにも彼女自身のメッセージをご紹介した通り、聴き所としてはフェルナンド・ソルの「社交界の小品」、レオ・ブローウェルの「ソナタ」、彼女が今年5月に日本初演したと言うローラン・ディアンスの「トリアエラ」。この曲は私も初めて聴きましたが楽しい曲です。6弦を超低音の「ラ(5弦より一オクターブ低い)」に下げで全楽章演奏されるんですが、美しくメランコリックなメロディーの1楽章、ジャズ、ブルースのフレーズ有りの2楽章、タッピングやボディーを叩く特殊奏法満載の3楽章とディアンスらしい面白い作品でした。ただ、普通の6弦をラに下げているので音量が物足りなさを感じました。理想的にはギターを2本用意しておいてこの曲用にはバスギター用の弦を張るといいのではと思いましたね。

アンコールの2曲目にはタンゴ・アン・スカイを披露してくれましたが、これも有りがちなオーバーな演奏ではなく、しなやかな美しい演奏でした。大きな会場の場合はもう少しメリハリを利かした派手目の演奏が聴き栄えするとは思いますが、意図してかどうかは別にしてミューズサロンで聴くには全プログラムを通して彼女らしくまた会場の大きさにあった演奏だったと思います。これで中部にも宮下ファンが出来た事と思います。
終演後の打上げでも皆さんから『また来て下さいね!』と熱いラブコールが飛んでいました。


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