コスメティック業界の先駆者である2人の女性を描き、今年(2017)のトニー賞で3部門で4つのノミネートを受けた「War Paint」には、華麗な衣装がたくさん登場します。(写真は、作品に登場する衣装と、デザイナーのキャサリン・ズーバーさんです。)
「War Paint」のコスチューム・デザイナーのキャサリン・ズーバーさんが、自身のデザインした華麗な衣装で、主演の2人のブロードウェイ・スターを、コスメティック業界のアイコンへと変身させました。Playbill.comの記事は、こちらからどうぞ。下の方の画面右端の黄色い>マークをクリックすると、全部で22枚の衣装やアクセサリーの写真をごらんいただけます。客席から見たのでは分からない、細部のクローズアップもあります。記事の内容は、以下の通りです。
ネーデルランダー劇場で今年(2017)の3月7日から7回のプレビュー公演の後、4月6日にグランドオープンした「War Paint」は、共にトニー賞の主演女優賞を2回受賞しているパティ・ルポーンさんとクリスティン・エバーソールさんが主演しており、1935年から1964年のニューヨークを舞台に、コスメティック業界の先駆者として活躍し、共に自分の名前をブランド名にした化粧品会社を創業したヘレナ・ルビンスタイン(ルポーンさん)とエリザベス・アーデン(エバーソールさん)を描いています。
そして、作中、女性キャラクターを華やかに彩る華麗な衣装の数々をデザインしたのが、今回もトニー賞の衣装デザイン部門にノミネートされ、過去にトニー賞を6回も受賞したズーバーさんです。
「War Paint」の衣装をデザインする上で、ズーバーさんは、背景となっている時代と場所に合ったデザインをすることが重要と考えました。加えて、資料に残されている、実際にアーデンやルビンスタインが着ていた服に見られる、各人の好みを取り入れることも、2人の人生をステージに再現するための鍵になると考えたそうです。しかし、最も重要なポイントは、個々の衣装(ドレスからアクセサリー至るまで)に、主演女優が2人いることを反映するということでした。
ズーバーさん:「『War Paint』は、主演女優が2人いるという意味で、ユニークな挑戦でした。2人のバランスが重要なんです。どちらかだけに焦点を当てるのではなく、それぞれに、個性を持たせなくてはいけないんです。
ルビンスタインは、本質的にとても派手好きな人で、驚くべきテイストを持っていました。彼女は、スキャパレリ等の大胆なデザイナーのブランドを好んで着ていました。特に最新のファッションであることにこだわりはなく、彼女は、時代を超越した存在でしたが、常にファショナブルで、相応しい帽子を身につけていました。彼女の家や収集していた美術品は、実に素晴らしく、個性的で芸術的なものでした。つまり、彼女には、並はずれて素晴らしいひらめきのもとがあったのです。とてもやり甲斐がありました。」
アーデンのステージ衣装のデザインには、もっと創造の余地がありました。プライベートな生活の場面が多く、ルビンスタインよりも写真が少なかったからです。
ズーバーさん:「エリザベス・アーデンは、もっと個人的な人物で、写真があまり残っていませんでした。私達が見つけた写真によれば、あまり華やかな感じではなかったので、彼女の衣装には、少し手を加える必要がありました。彼女の服装は、とても上品でしたが、控えめで、ルビンスタインのような奇抜さはありませんでした。2人がステージに並んで登場する時に、アーデンの印象が薄くならないよう、2人のバランスを取るために、彼女の衣装を華やかにしました。」
また、ズーバーさんは、「War Paint」の中で、アーデンとルビンスタインの感情の状態を微妙に表現するために、色を使いました。
ズーバーさん:「ストーリーの流れの中で、2人は、協調する時もあれば、そうでない時もあります。2人が感情的に共感を持ついくつかのシーンで、色が、2人が共にあることの象徴になるように、彼女達の衣装の色に関連性を持たせました。
これらの衣装は、ラストシーンで2人が着るのですが、この衣装で2人が並ぶと、とても美しいんです。作品では、2人の女性の30年間が描かれていて、ラストシーンでは、2人共かなり年配になっていますが、それでも彼女達は、それぞれに個性のあるスタイルを貫いているのです。このラストシーンで、我々は、2人のスタイルの違いと独自性を伝えたいと思いました。アーデンのドレスは、とても時代にマッチしていて、対照的にヘレナ・ルビンスタインのものは、時代を超越しています。
シカゴ公演の時、パティが、スカートのボリュームが足りないと感じて、我々に、スカートの中のペチコートの作りを変えさせたんです。彼女は、本当にもっとボリュームが必要だと思ったんですね。また、アクセサリーが多い方がステキだから、もっと着けたいとも希望しました。自分の演じる役に何が必要かについてのパティ・ルポーンの直感は、素晴らしいですね。彼女の意見で、より素晴らしいシーンになりました。
このスカートについては、我々もリサーチしたのですが、アーデンがこのスカートを着ている実際の写真では、ゾウのモチーフが描かれた小さなジャケットを着ています。アーデンは、このスカートを何度も着ているので、彼女のお気に入りだったのではないでしょうか。
エリザベスが最後の彼女の見せ場のナンバー「Pink」の時に着る衣装については、エネルギーと相応しい色を持ち続けている衣装にしなくてはと思いました。ショーの中で、この時点の彼女は、かなりの年配になっています。晩年のエリザベス・アーデンがイベントに出席した時の写真があるのですが、この衣装は、それらのたくさんのドレスと偶然にもよく似ていました。彼女が実際に着ていたドレスのどれかをそのままコピーしたものではないのですが、彼女のスタイルの本質がありました。デザインの基にしたのは、舞台となっている年のコレクションの数々でした。私が所有している60年代初頭のヴォーグで見つけたのですが、エリザベスにピッタリだと思いました。トップス用に、60年代のテイストを持つビーズのついた生地が見つからなかったので、私達は、ステキな刺繍の施された生地に、ビーズを付け加えました。
こちらは、同じシーンのドリアン・リーの「炎と氷」ドレスです。鏡が登場して、4つか5つの彼女のリフレクションが現れ、それが実体を持ちます。これは、レブロンの炎と氷の広告を基にしました。ダンスに合わせて、ドレスを調整することで、動きを出すことができました。早変わりするので、ドレスにはボディが組み込まれていて、ファスナーで簡単に着ることができます。」
前評判で噂されていた通り、主演のルポーンさんとエバーソールさんが共に2017 トニー賞の主演女優賞にノミネートされたことでも話題のこの作品、果たして2人のどちらかが受賞して3度目のトニー賞を手に入れるのか、また衣装デザイン賞にノミネートされているズーバーさんが7度目の受賞を果たすのか、6月11日の授賞式が楽しみですね~!
キャサリン・ズーバーさんのプロフィール:英国で生まれ、9才の時に家族と共にニューヨークに移り住みました。写真家になることを夢見ていたのですが、写真は「孤独な芸術スタイルだ」と考えるようになり、コスチューム・デザインの道を選びました。
1993年の「The Red Shoes」でコスチューム・デザイナーとしてブロードウェイ・デビューを果たし、数々のブロードウェイ、オフ・ブロードウェイ、オペラ等の作品で、コスチュームをデザインしてきました。トニー賞の常連でもあり、最近では、2015年の渡辺謙さん主演の「The King and I 王様と私」で受賞しました。
ズーバーさんのブロードウェイでのキャリアは、こちらからどうぞ。
「War Paint」のコスチューム・デザイナーのキャサリン・ズーバーさんが、自身のデザインした華麗な衣装で、主演の2人のブロードウェイ・スターを、コスメティック業界のアイコンへと変身させました。Playbill.comの記事は、こちらからどうぞ。下の方の画面右端の黄色い>マークをクリックすると、全部で22枚の衣装やアクセサリーの写真をごらんいただけます。客席から見たのでは分からない、細部のクローズアップもあります。記事の内容は、以下の通りです。
ネーデルランダー劇場で今年(2017)の3月7日から7回のプレビュー公演の後、4月6日にグランドオープンした「War Paint」は、共にトニー賞の主演女優賞を2回受賞しているパティ・ルポーンさんとクリスティン・エバーソールさんが主演しており、1935年から1964年のニューヨークを舞台に、コスメティック業界の先駆者として活躍し、共に自分の名前をブランド名にした化粧品会社を創業したヘレナ・ルビンスタイン(ルポーンさん)とエリザベス・アーデン(エバーソールさん)を描いています。
そして、作中、女性キャラクターを華やかに彩る華麗な衣装の数々をデザインしたのが、今回もトニー賞の衣装デザイン部門にノミネートされ、過去にトニー賞を6回も受賞したズーバーさんです。
「War Paint」の衣装をデザインする上で、ズーバーさんは、背景となっている時代と場所に合ったデザインをすることが重要と考えました。加えて、資料に残されている、実際にアーデンやルビンスタインが着ていた服に見られる、各人の好みを取り入れることも、2人の人生をステージに再現するための鍵になると考えたそうです。しかし、最も重要なポイントは、個々の衣装(ドレスからアクセサリー至るまで)に、主演女優が2人いることを反映するということでした。
ズーバーさん:「『War Paint』は、主演女優が2人いるという意味で、ユニークな挑戦でした。2人のバランスが重要なんです。どちらかだけに焦点を当てるのではなく、それぞれに、個性を持たせなくてはいけないんです。
ルビンスタインは、本質的にとても派手好きな人で、驚くべきテイストを持っていました。彼女は、スキャパレリ等の大胆なデザイナーのブランドを好んで着ていました。特に最新のファッションであることにこだわりはなく、彼女は、時代を超越した存在でしたが、常にファショナブルで、相応しい帽子を身につけていました。彼女の家や収集していた美術品は、実に素晴らしく、個性的で芸術的なものでした。つまり、彼女には、並はずれて素晴らしいひらめきのもとがあったのです。とてもやり甲斐がありました。」
アーデンのステージ衣装のデザインには、もっと創造の余地がありました。プライベートな生活の場面が多く、ルビンスタインよりも写真が少なかったからです。
ズーバーさん:「エリザベス・アーデンは、もっと個人的な人物で、写真があまり残っていませんでした。私達が見つけた写真によれば、あまり華やかな感じではなかったので、彼女の衣装には、少し手を加える必要がありました。彼女の服装は、とても上品でしたが、控えめで、ルビンスタインのような奇抜さはありませんでした。2人がステージに並んで登場する時に、アーデンの印象が薄くならないよう、2人のバランスを取るために、彼女の衣装を華やかにしました。」
また、ズーバーさんは、「War Paint」の中で、アーデンとルビンスタインの感情の状態を微妙に表現するために、色を使いました。
ズーバーさん:「ストーリーの流れの中で、2人は、協調する時もあれば、そうでない時もあります。2人が感情的に共感を持ついくつかのシーンで、色が、2人が共にあることの象徴になるように、彼女達の衣装の色に関連性を持たせました。
これらの衣装は、ラストシーンで2人が着るのですが、この衣装で2人が並ぶと、とても美しいんです。作品では、2人の女性の30年間が描かれていて、ラストシーンでは、2人共かなり年配になっていますが、それでも彼女達は、それぞれに個性のあるスタイルを貫いているのです。このラストシーンで、我々は、2人のスタイルの違いと独自性を伝えたいと思いました。アーデンのドレスは、とても時代にマッチしていて、対照的にヘレナ・ルビンスタインのものは、時代を超越しています。
シカゴ公演の時、パティが、スカートのボリュームが足りないと感じて、我々に、スカートの中のペチコートの作りを変えさせたんです。彼女は、本当にもっとボリュームが必要だと思ったんですね。また、アクセサリーが多い方がステキだから、もっと着けたいとも希望しました。自分の演じる役に何が必要かについてのパティ・ルポーンの直感は、素晴らしいですね。彼女の意見で、より素晴らしいシーンになりました。
このスカートについては、我々もリサーチしたのですが、アーデンがこのスカートを着ている実際の写真では、ゾウのモチーフが描かれた小さなジャケットを着ています。アーデンは、このスカートを何度も着ているので、彼女のお気に入りだったのではないでしょうか。
エリザベスが最後の彼女の見せ場のナンバー「Pink」の時に着る衣装については、エネルギーと相応しい色を持ち続けている衣装にしなくてはと思いました。ショーの中で、この時点の彼女は、かなりの年配になっています。晩年のエリザベス・アーデンがイベントに出席した時の写真があるのですが、この衣装は、それらのたくさんのドレスと偶然にもよく似ていました。彼女が実際に着ていたドレスのどれかをそのままコピーしたものではないのですが、彼女のスタイルの本質がありました。デザインの基にしたのは、舞台となっている年のコレクションの数々でした。私が所有している60年代初頭のヴォーグで見つけたのですが、エリザベスにピッタリだと思いました。トップス用に、60年代のテイストを持つビーズのついた生地が見つからなかったので、私達は、ステキな刺繍の施された生地に、ビーズを付け加えました。
こちらは、同じシーンのドリアン・リーの「炎と氷」ドレスです。鏡が登場して、4つか5つの彼女のリフレクションが現れ、それが実体を持ちます。これは、レブロンの炎と氷の広告を基にしました。ダンスに合わせて、ドレスを調整することで、動きを出すことができました。早変わりするので、ドレスにはボディが組み込まれていて、ファスナーで簡単に着ることができます。」
前評判で噂されていた通り、主演のルポーンさんとエバーソールさんが共に2017 トニー賞の主演女優賞にノミネートされたことでも話題のこの作品、果たして2人のどちらかが受賞して3度目のトニー賞を手に入れるのか、また衣装デザイン賞にノミネートされているズーバーさんが7度目の受賞を果たすのか、6月11日の授賞式が楽しみですね~!
キャサリン・ズーバーさんのプロフィール:英国で生まれ、9才の時に家族と共にニューヨークに移り住みました。写真家になることを夢見ていたのですが、写真は「孤独な芸術スタイルだ」と考えるようになり、コスチューム・デザインの道を選びました。
1993年の「The Red Shoes」でコスチューム・デザイナーとしてブロードウェイ・デビューを果たし、数々のブロードウェイ、オフ・ブロードウェイ、オペラ等の作品で、コスチュームをデザインしてきました。トニー賞の常連でもあり、最近では、2015年の渡辺謙さん主演の「The King and I 王様と私」で受賞しました。
ズーバーさんのブロードウェイでのキャリアは、こちらからどうぞ。