さすらうキャベツの見聞記

Dear my friends, I'm fine. How are you today?

「お取り次ぐ」だけ

2009-09-21 23:30:12 | 日々の雑感
(「名作コピーに学ぶ 読ませる文章の書き方」(鈴木康之著、日本経済新聞出版社、2008、P.106~)より引用)


 私は落語ファンで、とりわけ東京落語・昭和の双璧、五代目古今亭志ん生と八代目桂文楽が大好きです。…(中略)…

 桂文楽の十八番の演目に『心眼』があります。その語り始めを、持っているテープから書き取ってご紹介します。



    .。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*

 毎回のお運びでございまして、有り難く御礼を申し上げます。
 間に挟まりまして、相変わらずのお馴染みのお笑いを申し上げ
ることに致します。

 『心眼』と言いまして、これは、えー、三遊亭圓朝師の作でご
ざいます。
 門弟のいちばん裾のお弟子さんに、圓丸てえ方がいまして、盲
人でございまして、えー、娘さんが介添えで舞台に上がった。楽
屋であたくしも働いておりました子供時代でございます。

 この圓丸てえ人が師匠に向かって「えへー、師匠、あたくしは
こういう口惜しいことがございました」と言って圓朝師に話をし
たのを、即座にこの『心眼』という話にまとめたんだそうでござ
います。

 わたくしはそれをお取り次ぐするだけでございます。
一席お付き合いのほどを願っております。


(引用終わり)

    .。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*


 「わたくしはそれをお取り次ぐするだけ」-。

 じーんとくる。

 私たちもまた同じなんだ、と。
 私たち『が』伝えるのではなくて、『お取り次ぐ』するだけなんだ、と。
 ごく当たり前のことだけれど。



    .。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*  


 その昔、大学時代、祖父母と東京に来ると、帰りは決まって上野の鈴本にお供した。
(2,3回程度ですが。
 ハイ、そのわりに全然、落語わかっておりませんが。
 ええ、○月のその頃ですが。

 ・・・ここだけの話にしてください。

 それにしても、噺のわからん私さえも、つい聴き入ってしまったり・・・すごいなぁと思わされたものでした)

 その祖父からは、昔、
「一節で、一時間話せるように」
と言われたが、
(じさま・・・え・・・、いや、私の立場では、ソレハありえないのですが・・・)
さりとて、たった一節でも一時間伝えられるほど、私は咀嚼しているだろうか、と想うこともしばしば。
 たとえば、ヨハネ3章16節。

 寄席であったような、あんな、全然わかっていない私でさえ自然と噺に聴き入れるように、
 このとても大事で、奥深いことを、
相手に伝わるようにわかりやすく、簡潔に、的確に、
そして、相手の心に届くように、
伝えるためには・・・

 と、悩みつつ。


「わたくしはそれをお取り次ぐするだけでございます」
-祈りつつ、時には答えさせて頂くわけだが、
 そもそも、私自身、その「お取り次ぐする」ものを、まだまだ知らないのだ、と
思い知る。

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