このブログで、伊藤計劃さんについて
書いた記事へのアクセスが案外多いことにちょっと驚いています。
当初の予定では「屍者の帝国」が10月公開
「虐殺器官」が11月、「ハーモニー」が12月と
年内に三作品すべてが公開されるはずだったのですが
製作会社の事情により「虐殺」の公開が延期になり
来週11月13日(金)から「ハーモニー」が繰り上げて公開されます。
実は私が、伊藤計劃という作家さんを心から「これはすごい」と思ったのは
この「ハーモニー」を読んだ時でした。
とても、簡単な要約で説明できるようなお話ではないのですが
小説の表現をお借りして要約します。
「半世紀昔<大災禍>によって、世界中に核弾頭が落ち
放射能によって、癌や未知のウイルスが蔓延し
人類が生存の危機に直面したことで
世界は、政府を単位とする資本主義的消費社会から
構成員の健康を第一に気づかう生府を基本単位とした
医療福祉社会へと移行した。
すべての人間は大人になるとWatchMeという個人用医薬情報システムを
体に埋め込み、体内の病原をやっつけるメディモル(医療分子)を
精製し、どんな病気でもたちどころに治すことができる。
肉体や精神の健康を維持するのに有害とみなされたものはすべて排除され
人々はお互いを慈しみ、支えあって
完全に調和のとれた理想の社会を実現させていた」
「ハーモニー」はそんな社会を拒絶し、NOを突きつけた三人の少女たちの物語。
核戦争の結果、人類が絶滅の危機に瀕しているという状況は
すでに1968年に刊行された「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の時代から
たくさんの小説や映画やアニメ、漫画で使われたモチーフです。
テクノロジーが、全ての人間の夢や希望を実現し
あらゆる人間が平和で幸福に暮らせる未来が訪れるという幻想は
おそらく核兵器の登場で、大きく変貌したのだと思います。
一部の人たちは「これは実はとんでもないことだ」ということに気づきました。
核兵器のみならず、すべてのテクノロジーが
人間にとって、実はとんでもないものなのではないかと考えていて
伊藤計劃さんの小説もその延長線上にあります。
けれど例えとんでもないものであるにしても、それがなかった時代や社会に
時間を巻き戻すことはできません。
とても大きな枠組みでのセカイは、まさに
「どうしようもない」ものだということを描いているのがSFなわけです。
「A.I」や「猿の惑星」では、人類は絶滅しちゃいますし
今年私が激ハマりした「チャッピー」では
「もう、みんな人間やめちゃって、メカになって
幸せに暮らそうよ」という、やりっぱなしの結末です。
けれども「人間とはなにか」を問うているという一点では共通しています。
一番最初に「ハーモニー」を読んだ時は
自らが癌という病を得ている状況で、こういう小説が書けるという
その精神力に仰天しました。
けれどそれはとても表面的な理解の仕方で
伊藤さんの小説や、映画について書かれたもろもろの文章を読んでいくにつれて
伊藤さんの思考を構成している、ものすごく大量の要素に愕然としました。
私がお粗末な語彙や薄っぺらな知識で、伊藤さんはこういう人とか
伊藤さんの小説はこういうものなどと書いたら怒られそうです。
それでも私がしつこく伊藤計劃という作家と作品について書いているのは
特に、若い人たちに、こういう人がいる、こういう世界がある
ということを知ってほしい、気づいてほしいからです。
入り口は伊藤計劃という作家でも、彼の周りに広がる世界は広大です。
伊藤さんが何回も読んだと書かれていた「ニューロマンサー」を最近読みました。
SFの世界で、初めて電脳空間を扱った小説で
例えば「攻殻機動隊」や映画「マトリックス」へのつながりが分かります。
今自分たちが生きている世界が、どういう場所なのかを知ること
それを自分の言葉で分析し、どう向き合えばいいかを考えること
それはこれから長い人生を生きていくうえで、必ず何かの役に立ちます。
もちろん、アプローチの仕方はたくさんあります。
SFの世界というのは、その中の一つの選択肢です。イチ押しではありますが。
実は娘に「たぶんこれが一番読みやすいから」と
「ハーモニー」を貸した(押し付けた?)のですが
「難しかった」と返品されてしまいました。
けれどこの前一緒に観にいった「屍者の帝国」は
「時間が経ったら、だんだん良く思えてきた」とコメントされて、小躍りしました。
布教活動は、地道ないばらの道です。
けれど、今日はツイッターで
ジュンク堂に「SFフェア」のコーナーができたというのを見かけて
これまた「よっしゃ」と嬉しくなりました。
来てます、確実に来てます。時代はSFです(笑)
せめてあと三年早く伊藤計劃さんに出会えていたら
映画も本も、もっともっと観たり読んだりすることができたのにと思います。
そういう後悔をする人が、一人でも減るように、めげずに布教活動を続けます。
一つだけ前置きをすると、小説とアニメは別物です。
「屍者の帝国」もそうでしたが
アニメは、原作をまったく知らない人でも
それなりに楽しんで観れるような作りになっています。
それでもし興味が持てれば、小説へ
もっと興味が持てれば、脱出不能なSFの迷路へという重層構造です。
私の年になると、新しい情報を理解することが、日に日に難しくなりますが
若者の脳の機能やキャパは、ほぼ無限大です。
ですから、そういう時期にこそ、
人生が変わるような衝撃的な出会いをたくさんしてほしいと心から思います。
書いた記事へのアクセスが案外多いことにちょっと驚いています。
当初の予定では「屍者の帝国」が10月公開
「虐殺器官」が11月、「ハーモニー」が12月と
年内に三作品すべてが公開されるはずだったのですが
製作会社の事情により「虐殺」の公開が延期になり
来週11月13日(金)から「ハーモニー」が繰り上げて公開されます。
実は私が、伊藤計劃という作家さんを心から「これはすごい」と思ったのは
この「ハーモニー」を読んだ時でした。
とても、簡単な要約で説明できるようなお話ではないのですが
小説の表現をお借りして要約します。
「半世紀昔<大災禍>によって、世界中に核弾頭が落ち
放射能によって、癌や未知のウイルスが蔓延し
人類が生存の危機に直面したことで
世界は、政府を単位とする資本主義的消費社会から
構成員の健康を第一に気づかう生府を基本単位とした
医療福祉社会へと移行した。
すべての人間は大人になるとWatchMeという個人用医薬情報システムを
体に埋め込み、体内の病原をやっつけるメディモル(医療分子)を
精製し、どんな病気でもたちどころに治すことができる。
肉体や精神の健康を維持するのに有害とみなされたものはすべて排除され
人々はお互いを慈しみ、支えあって
完全に調和のとれた理想の社会を実現させていた」
「ハーモニー」はそんな社会を拒絶し、NOを突きつけた三人の少女たちの物語。
核戦争の結果、人類が絶滅の危機に瀕しているという状況は
すでに1968年に刊行された「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の時代から
たくさんの小説や映画やアニメ、漫画で使われたモチーフです。
テクノロジーが、全ての人間の夢や希望を実現し
あらゆる人間が平和で幸福に暮らせる未来が訪れるという幻想は
おそらく核兵器の登場で、大きく変貌したのだと思います。
一部の人たちは「これは実はとんでもないことだ」ということに気づきました。
核兵器のみならず、すべてのテクノロジーが
人間にとって、実はとんでもないものなのではないかと考えていて
伊藤計劃さんの小説もその延長線上にあります。
けれど例えとんでもないものであるにしても、それがなかった時代や社会に
時間を巻き戻すことはできません。
とても大きな枠組みでのセカイは、まさに
「どうしようもない」ものだということを描いているのがSFなわけです。
「A.I」や「猿の惑星」では、人類は絶滅しちゃいますし
今年私が激ハマりした「チャッピー」では
「もう、みんな人間やめちゃって、メカになって
幸せに暮らそうよ」という、やりっぱなしの結末です。
けれども「人間とはなにか」を問うているという一点では共通しています。
一番最初に「ハーモニー」を読んだ時は
自らが癌という病を得ている状況で、こういう小説が書けるという
その精神力に仰天しました。
けれどそれはとても表面的な理解の仕方で
伊藤さんの小説や、映画について書かれたもろもろの文章を読んでいくにつれて
伊藤さんの思考を構成している、ものすごく大量の要素に愕然としました。
私がお粗末な語彙や薄っぺらな知識で、伊藤さんはこういう人とか
伊藤さんの小説はこういうものなどと書いたら怒られそうです。
それでも私がしつこく伊藤計劃という作家と作品について書いているのは
特に、若い人たちに、こういう人がいる、こういう世界がある
ということを知ってほしい、気づいてほしいからです。
入り口は伊藤計劃という作家でも、彼の周りに広がる世界は広大です。
伊藤さんが何回も読んだと書かれていた「ニューロマンサー」を最近読みました。
SFの世界で、初めて電脳空間を扱った小説で
例えば「攻殻機動隊」や映画「マトリックス」へのつながりが分かります。
今自分たちが生きている世界が、どういう場所なのかを知ること
それを自分の言葉で分析し、どう向き合えばいいかを考えること
それはこれから長い人生を生きていくうえで、必ず何かの役に立ちます。
もちろん、アプローチの仕方はたくさんあります。
SFの世界というのは、その中の一つの選択肢です。イチ押しではありますが。
実は娘に「たぶんこれが一番読みやすいから」と
「ハーモニー」を貸した(押し付けた?)のですが
「難しかった」と返品されてしまいました。
けれどこの前一緒に観にいった「屍者の帝国」は
「時間が経ったら、だんだん良く思えてきた」とコメントされて、小躍りしました。
布教活動は、地道ないばらの道です。
けれど、今日はツイッターで
ジュンク堂に「SFフェア」のコーナーができたというのを見かけて
これまた「よっしゃ」と嬉しくなりました。
来てます、確実に来てます。時代はSFです(笑)
せめてあと三年早く伊藤計劃さんに出会えていたら
映画も本も、もっともっと観たり読んだりすることができたのにと思います。
そういう後悔をする人が、一人でも減るように、めげずに布教活動を続けます。
一つだけ前置きをすると、小説とアニメは別物です。
「屍者の帝国」もそうでしたが
アニメは、原作をまったく知らない人でも
それなりに楽しんで観れるような作りになっています。
それでもし興味が持てれば、小説へ
もっと興味が持てれば、脱出不能なSFの迷路へという重層構造です。
私の年になると、新しい情報を理解することが、日に日に難しくなりますが
若者の脳の機能やキャパは、ほぼ無限大です。
ですから、そういう時期にこそ、
人生が変わるような衝撃的な出会いをたくさんしてほしいと心から思います。
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