まず初めに、私はこのブログで同じことを何度も書いている。
これは私が年のせいで少々呆けてきたから(まあそれもないことはないが)
ではなくて、何かの理由でこのブログを訪れてくださった方でも
かれこれ5年近く書き続けているブログを全部読んでくださるとは考えにくい。
それでギャンブル依存症を知るために特に大切と思われることについては
繰り返し書いていることをお断りしておきたい。

先月田辺等先生が書かれた「ギャンブル依存症」
を読んだ。この本の初版は2002年で、しばしば引用している帚木蓬生
(ははきぎほうせい)先生の著書「ギャンブル依存とたたかう」よりも
2年早い。
著者の田辺等先生は、精神科医で北海道立精神保健福祉センターの所長を
されている。この本によると、先生が所属されるセンターの精神保健相談
の窓口にギャンブルに関する相談が寄せられるようになったのは、1990
年になってから。今から約20年前のことだ。
(業界では1980年代にフィーバーと呼ばれる一度に大量の玉が出る
いわゆる大当たり、すなわち高額の報酬を得ることのできる機種が開発
され、その後何回にもわたり警察庁による規制がかけられてはいるが
現在のデジパチの構造もこのフィーバーを踏襲している)
この本はギャンブル依存症について、多くの実例をあげて、とても分かり
やすく書かれていると同時に、実際にギャンブル依存者と何十年も苦闘
してきた人間が読むと、序文から結びに至るまで、一言一句が身につまさ
れるというか納得できるものだと思う。
この本では、田辺先生が実践されてきた取り組みが紹介されている。
そこで私がポイントと感じたところを幾つかあげる。
まず先生たちは、ギャンブル依存症の、特に家族からの相談を受けて
相談援助グループを開始された。
その理由は、次のように述べられている。
「精神保健相談では、診療機関に紹介できる精神科の病気と、医療に
なじみにくい心の問題があります。例えば不登校問題や家庭内暴力
がそうです。薬物療法で解決が期待できないような心の問題では
本人や家族のカウンセリングを行います。センターでは、本人や
家族のグループを作り、グループでカウンセリングを行うことも
珍しくありません」
このように専門家が指摘されているように、ギャンブル依存症に限らず
依存症というのは「医療になじみにくい心の問題」という性質がある。
つまり依存症は、投薬とか化学療法といった医療行為だけでは回復を
めざすことが難しい病気なのである。
そこで田辺先生は、専門医として勤務した時の、アルコール依存症
の集団精神療法のノウハウと経験をもとに、ギャンブル研究会という
ギャンブル依存症の治療グループを1991年に立ち上げられた。
やがてその研究会から派生的に家族の会が生まれ、やがて家族の会は
自主的な活動を始める。それから数年して、依存者本人たちも自主的
にG.A(ギャンブラーズ・アノニマス)を立ち上げ、今に至っている。
この田辺先生たちが実践された北海道の場合が、ある意味モデルケース
なのだと私は思う。心の問題の相談にあたる県や市の精神保健福祉
センターが、まず依存症について正確な知識を持ち、的確な説明の
できる専門医なりカウンセラーなりを紹介し、そこで依存者本人も
家族も、これが医療行為だけでは回復が難しい心の問題で、グループ
カウンセリングが有効であることをちゃんと納得した上で、自分の
地域のG.Aに参加をする。このプロセスがとても大事なように思う。
しかし一方では「専門医に相談をしたが、どうすることもできない
と言われた」という話をしばしば見かける。人間の心の問題に携わ
る専門家の人たちが、もう少し依存症というものを正しく理解して
患者や家族をサポートできる体制が一日も早く整うことを心から願
ってやまない。
なぜ今回こういう風に長々と書いたかというと、数日前に「激増する
ネット依存」というニュースを見かけたからだ。前にこのブログでも
触れたが、PCや携帯の普及によって、新型の依存症が特に若年層
に発生するだろうということは、TVゲームなどの前例を見ても
ある程度は予見ができた。発表では50万人となっていたが、潜在
的な予備軍を考えると、そう遠くない将来これもかなり深刻な問題
になるのではないかととても危惧している。
依存症の問題は、依存する対象がなんであれ共通する点が多い。ギャン
ブル依存症の治療に、先行したアルコール依存症の治療のノウハウが
色々用いられていることを見てもそれが分かる。もし身近に「これは
依存症ではないか」と思われる家族がおられる場合は、そのことだけに
とらわれず、まず依存症全般について理解することを勧めたい。
いたずらに解決を焦って、叱責や恫喝を繰り返したり、闇雲に依存の
対象を取り上げたりすると、引きこもりや家庭内暴力、家出など
さらに問題をこじらせてしまうこともあるので、当事者にしてみたら
とんでもなく大変ではあるけれども、依存症の場合は、家族がその
問題に巻き込まれずに、冷静に対応することがとても大切なのだと
私自身はこれまでに嫌というほどの失敗を繰り返して、今そこに
思い至っているのだ。
これは私が年のせいで少々呆けてきたから(まあそれもないことはないが)
ではなくて、何かの理由でこのブログを訪れてくださった方でも
かれこれ5年近く書き続けているブログを全部読んでくださるとは考えにくい。
それでギャンブル依存症を知るために特に大切と思われることについては
繰り返し書いていることをお断りしておきたい。

先月田辺等先生が書かれた「ギャンブル依存症」
を読んだ。この本の初版は2002年で、しばしば引用している帚木蓬生
(ははきぎほうせい)先生の著書「ギャンブル依存とたたかう」よりも
2年早い。
著者の田辺等先生は、精神科医で北海道立精神保健福祉センターの所長を
されている。この本によると、先生が所属されるセンターの精神保健相談
の窓口にギャンブルに関する相談が寄せられるようになったのは、1990
年になってから。今から約20年前のことだ。
(業界では1980年代にフィーバーと呼ばれる一度に大量の玉が出る
いわゆる大当たり、すなわち高額の報酬を得ることのできる機種が開発
され、その後何回にもわたり警察庁による規制がかけられてはいるが
現在のデジパチの構造もこのフィーバーを踏襲している)
この本はギャンブル依存症について、多くの実例をあげて、とても分かり
やすく書かれていると同時に、実際にギャンブル依存者と何十年も苦闘
してきた人間が読むと、序文から結びに至るまで、一言一句が身につまさ
れるというか納得できるものだと思う。
この本では、田辺先生が実践されてきた取り組みが紹介されている。
そこで私がポイントと感じたところを幾つかあげる。
まず先生たちは、ギャンブル依存症の、特に家族からの相談を受けて
相談援助グループを開始された。
その理由は、次のように述べられている。
「精神保健相談では、診療機関に紹介できる精神科の病気と、医療に
なじみにくい心の問題があります。例えば不登校問題や家庭内暴力
がそうです。薬物療法で解決が期待できないような心の問題では
本人や家族のカウンセリングを行います。センターでは、本人や
家族のグループを作り、グループでカウンセリングを行うことも
珍しくありません」
このように専門家が指摘されているように、ギャンブル依存症に限らず
依存症というのは「医療になじみにくい心の問題」という性質がある。
つまり依存症は、投薬とか化学療法といった医療行為だけでは回復を
めざすことが難しい病気なのである。
そこで田辺先生は、専門医として勤務した時の、アルコール依存症
の集団精神療法のノウハウと経験をもとに、ギャンブル研究会という
ギャンブル依存症の治療グループを1991年に立ち上げられた。
やがてその研究会から派生的に家族の会が生まれ、やがて家族の会は
自主的な活動を始める。それから数年して、依存者本人たちも自主的
にG.A(ギャンブラーズ・アノニマス)を立ち上げ、今に至っている。
この田辺先生たちが実践された北海道の場合が、ある意味モデルケース
なのだと私は思う。心の問題の相談にあたる県や市の精神保健福祉
センターが、まず依存症について正確な知識を持ち、的確な説明の
できる専門医なりカウンセラーなりを紹介し、そこで依存者本人も
家族も、これが医療行為だけでは回復が難しい心の問題で、グループ
カウンセリングが有効であることをちゃんと納得した上で、自分の
地域のG.Aに参加をする。このプロセスがとても大事なように思う。
しかし一方では「専門医に相談をしたが、どうすることもできない
と言われた」という話をしばしば見かける。人間の心の問題に携わ
る専門家の人たちが、もう少し依存症というものを正しく理解して
患者や家族をサポートできる体制が一日も早く整うことを心から願
ってやまない。
なぜ今回こういう風に長々と書いたかというと、数日前に「激増する
ネット依存」というニュースを見かけたからだ。前にこのブログでも
触れたが、PCや携帯の普及によって、新型の依存症が特に若年層
に発生するだろうということは、TVゲームなどの前例を見ても
ある程度は予見ができた。発表では50万人となっていたが、潜在
的な予備軍を考えると、そう遠くない将来これもかなり深刻な問題
になるのではないかととても危惧している。
依存症の問題は、依存する対象がなんであれ共通する点が多い。ギャン
ブル依存症の治療に、先行したアルコール依存症の治療のノウハウが
色々用いられていることを見てもそれが分かる。もし身近に「これは
依存症ではないか」と思われる家族がおられる場合は、そのことだけに
とらわれず、まず依存症全般について理解することを勧めたい。
いたずらに解決を焦って、叱責や恫喝を繰り返したり、闇雲に依存の
対象を取り上げたりすると、引きこもりや家庭内暴力、家出など
さらに問題をこじらせてしまうこともあるので、当事者にしてみたら
とんでもなく大変ではあるけれども、依存症の場合は、家族がその
問題に巻き込まれずに、冷静に対応することがとても大切なのだと
私自身はこれまでに嫌というほどの失敗を繰り返して、今そこに
思い至っているのだ。