バレが仕事から帰ってきて、エースの部屋のドアをノックしたが誰も出ない。
「エースいる?」と聞いてきたから、僕は「いるよ、きっと」と答える。
「じゃあ、クリスタルは?」
クリスタルとはエースのコースメイトだ。というか、僕は彼女の顔は知っていたがちゃんと話したことも名前も聞いたことがなかった。
今日の食事会で初めて顔と名前が一致した。
年末、孤独な僕を差し置いて、エースがいちゃいちゃしていたであろうあの彼女だ。
彼女は滅多にうちのフラットには来ない。でも、ふたりはコースメイトだからよく会っている。彼らのコースは特に忙しいから、なかなか沢山一緒に過ごすというわけにはいかないのかもしれない。あるいは、ちゃんと付き合っていなかったのかもしれない。
性格はとても穏やかで理知的、そしてフレンドリ-。それがクリスタル。必ずしも日本で受ける顔立ちではないかもしれないが、小柄でかわいらしい雰囲気だ。
バレが「開けるよ、エース」と言ってドアを開けると、エースとクリスタルはベッドに、ジョン・レノンとオノ・ヨーコよろしく仲良く寝ていた。
開けてはいけなかった、というほどではない。が、僕らは笑った。
研究をして、ギターなんかを弾いて、歌ったりもして。それでも何か満たされなくて、また研究をして、アニメなんかを見たりして。
でも、まだ満たされていないとき。一体、どうしたら満たされるのだろう?
僕は叫びたかった。「英語で話したくない!英語で話したくない!英語で話したくない!」
2年間イギリスでたっぷり暮らして、でも僕にとってはまだ英語だけで暮らすのはストレスだ。
でも、違うのかもしれない。とも思う。
英語が嫌なんじゃなくて、ただ寂しいだけなんじゃないかって。
イギリス人だって誰だって、知らない土地で暮らすのは大変だ。
どこかで誰かと分かり合いたい。何かを分かち合いたい。自分のことを見てほしい。誰かのことを沢山深く知ってつながりたい。
そのためには相手のことをよく見て、自分のことを沢山話して、そして誠実でいなければいけない。何より誠実でいなければ。
そのあと、また僕はバレと廊下で立ち話をして、そしてまたエースの部屋のドアを開けた。
クリスタルはエースに覆いかさなって微笑していた。
僕らはまた沢山笑った。
大事なことが言葉になりそうでならないまま、僕は自分の部屋でこれを書いている。
もう少しだけ待って。
まだ言葉にするには早すぎる。
「エースいる?」と聞いてきたから、僕は「いるよ、きっと」と答える。
「じゃあ、クリスタルは?」
クリスタルとはエースのコースメイトだ。というか、僕は彼女の顔は知っていたがちゃんと話したことも名前も聞いたことがなかった。
今日の食事会で初めて顔と名前が一致した。
年末、孤独な僕を差し置いて、エースがいちゃいちゃしていたであろうあの彼女だ。
彼女は滅多にうちのフラットには来ない。でも、ふたりはコースメイトだからよく会っている。彼らのコースは特に忙しいから、なかなか沢山一緒に過ごすというわけにはいかないのかもしれない。あるいは、ちゃんと付き合っていなかったのかもしれない。
性格はとても穏やかで理知的、そしてフレンドリ-。それがクリスタル。必ずしも日本で受ける顔立ちではないかもしれないが、小柄でかわいらしい雰囲気だ。
バレが「開けるよ、エース」と言ってドアを開けると、エースとクリスタルはベッドに、ジョン・レノンとオノ・ヨーコよろしく仲良く寝ていた。
開けてはいけなかった、というほどではない。が、僕らは笑った。
研究をして、ギターなんかを弾いて、歌ったりもして。それでも何か満たされなくて、また研究をして、アニメなんかを見たりして。
でも、まだ満たされていないとき。一体、どうしたら満たされるのだろう?
僕は叫びたかった。「英語で話したくない!英語で話したくない!英語で話したくない!」
2年間イギリスでたっぷり暮らして、でも僕にとってはまだ英語だけで暮らすのはストレスだ。
でも、違うのかもしれない。とも思う。
英語が嫌なんじゃなくて、ただ寂しいだけなんじゃないかって。
イギリス人だって誰だって、知らない土地で暮らすのは大変だ。
どこかで誰かと分かり合いたい。何かを分かち合いたい。自分のことを見てほしい。誰かのことを沢山深く知ってつながりたい。
そのためには相手のことをよく見て、自分のことを沢山話して、そして誠実でいなければいけない。何より誠実でいなければ。
そのあと、また僕はバレと廊下で立ち話をして、そしてまたエースの部屋のドアを開けた。
クリスタルはエースに覆いかさなって微笑していた。
僕らはまた沢山笑った。
大事なことが言葉になりそうでならないまま、僕は自分の部屋でこれを書いている。
もう少しだけ待って。
まだ言葉にするには早すぎる。
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