息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

絵のない絵本

2013-02-13 10:31:31 | 著者名 あ行
アンデルセン 著

月は地球をあますことなく照らす。
富める者も貧しい者も、寒い国も暑い国も、老いたものも幼いものも。

貧しい靴屋の男の窓辺で、月が語りかける。
自分が見たさまざまなものを話してあげるから、それを絵に描きなさい。
そして33の小さな話が生まれた。
パリ、ウプサラ、ドイツ、インド、中国、リューネブルク、フランクフルト
アフリカ、デンマーク。

お天気が悪ければ月は休み。建て込んだ小さな路地では、ほんのわずかな時間
覗いてみた話になる。

月が出るような時間のことであるから、働いているものはどこか哀愁があるし、
小さな秘密を抱えているものもいる。
喜びも悲しみも包み込んだ月の話は、まるで詩のようだ。

幼い頃見た満月の夜のイメージが湧き上がってくる。
とても明るいけれど温度のない光。
煌々と照る丸い月と、青みを帯びた空を流れるグレーの雲。
そして白く浮かび上がる庭の砂利。
子供心に空恐ろしいと思うほどの美しく静かな夜だった。

男が屋根裏部屋で見た月も、あんなふうに輝いていたのだろうか。