息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

日なたが丘の少女

2013-02-01 10:37:59 | 著者名 は行
ビョルンソン 著

ノルウェーといえばとても寒いところという印象があるものの、
北欧ブームなども手伝ってそんなに悪いイメージはない。
しかし20世紀に入って石油が採掘されるようになるまで、貧しい国で
あったという。
それはそうだ、一年の多くが冬。厳しい自然の中、ただ生きるだけでも
懸命に働かなければならない。

そんな時代を舞台に描かれたノーベル賞作家による物語だ。

ノルウェーの農村にあるふたつの丘。
ひとつはよく日光があたる日なたが丘。そこにはシンネーベという女の子がいる。
もうひとつはもみの丘。日あたりがあまりよくないため、労働はより厳しい。
そしてこの家の男児は代々セームン、トルビョルンという名を交互にもらう
ことになっており、セームンは幸福にトルビョルンは不幸になると伝えられていた。
そしてシンネーベと同じ頃生まれた男児は不安の中、トルビョルンと名付けられた。

父・セームンは息子の幸せを願うあまり厳しく育てる。それなのにトルビョルンは
乱暴者になっていく。毎日ぶたれ、仕事を言いつけられるトルビョルンにとって
ひなたが丘を眺めることだけが救いだった。

教会でシンネーベと出会ったことを機にトルビョルンは自分を良くしていこうと
努力するようになる。
しかし、一度ついた乱暴なイメージを覆すことは難しく、さらには村の乱暴者
クヌートに刺されてしまう。

最後はちゃんと幸せをつかむのだが、そもそも不幸になると言われながら
どうしてもトルビョルンにこだわるのはなぜ?って思ってしまうのが、
現代の感覚なんだろうな。私の親もこんな感じのところがあったし。
先祖代々とかに弱いんだよね。自分の代で終わらせることはできないっていうか、
終わらせる人になりたくないっていうか。

この作品、平成17年ノルウェーご訪問に際して、天皇皇后両陛下のコメントの中で
ちらりと出てきます。同じものを読み、喜びを共有させていただいた、というのは
ちょっと嬉しかったりする。