息をするように本を読む

初めて読んだ本も、読み返した本も、
ジャンルも著者もおかまいなしの私的読書記録
と、なんだかだらだら日常のことなども

たましくる

2012-06-22 10:56:07 | 著者名 は行
堀川アサコ 著

昭和のはじめ、双子の姉が幼い娘・安子を遺し、恋人と無理心中した。
妹・幸代は安子の父である富豪の息子・新志に姪を預けようと、北へ向かう。
弘前で幸代を出迎えたのは新志の妹で美貌のイタコ・千歳。
そして新志は衝撃のあまり心を患い、座敷牢に閉じこもっていた。

一度は帝都へ戻った幸代であるが、千歳の好意により彼女の家に住込み、
安子を育てながら、家事手伝いをすることとなる。
幼い頃からか幽霊の声が聞こえる幸代。誰にもいったことはなかったが、
千歳のもとに持ち込まれる謎解きに、いつしか手を貸すことになる。

千歳の日本人形のような無邪気さすら感じさせる雰囲気。
そこに都会的なモガのような幸代が加わり、なんとも不可思議なコンビが成立する。

イタコとはいえ、実に冷静にものごとを考え、論理的に判断する千歳。
むしろ幸代のほうが直観的な行動をとる。
まったく違う二人の力が合わさることで、厄介ごとがかたづいていくさまは壮観。

幸代にそっくりの蝶子という女性がそこここに登場するのだが、ラストで
いくべきところに落ち着いたのがよかった。

構成がとてもしっかりしていて面白い。
それを東北弁がやわらかく包み込む。
生臭い事件もあるが、ドロドロにはならないのもいい。
貧しさ、つらさはあっても、嫌悪感は感じない作品だ。