かたつむり・つれづれ

アズワンコミュニテイ暮らし みやちまさゆき

東北の旅からはじまる(最終回)・・・ゆいまーる那須

2014-08-01 05:58:45 | アズワンコミュニテイ暮らし

東北の旅は7月8日~13日だった。

ずいぶん昔のことみたい。

いまにつながっている印象もある。

 

7月12日昼ごろ、”ゆいまーる那須”を訪問した。

(ゆいまーる那須とは:

 http://c-net.jp/nasu )                   

 

「分け隔てのない社会IN那須」という会に参加するためだ。

この会は鏑木孝昭さんと、ゆいまーる那須の設計をしてきた

一人の近山恵子さんがすすめている。

鏑木さんは、大手企業の現役で活躍しながら、ライフワークとして

都市型の持続可能なコミュニテイの研究、実践をしている。

 

今の施設に隣接して、”ゆいまーる那須2”の構想が練られている。

そこは、施設が充実していくだけでなく、目には見えなくとも、無形の

安心や豊かさが形に現れるようにという願いがある。

そのためには、どういうところに着眼するか、鏑木さんはじめ、

スタッフや住民が知恵を寄せ合いはじめている。

今回の会はそういう機会の一つだ。

 

鏑木さんと近山恵子さんは、昨年7月、アズワンコミュニテイに

1泊で見学に来ていただいた。その時以来のおつきあい。

 

今回は、話題提供というのでアズワンコミュニテイから

小野雅司さんが招待された。

たまたま東北の旅の日程に合ったので、ぼくら夫婦も参加させて

もらった。

エコビレッジ推進プロジェクトの佐藤慎時・文美夫妻も東京から

やってきた。

 

”ゆいまーる那須”に行くといっても、ほとんど何も知らなかった。

ただ「一度行ってみたい」好奇心、観光気分といってもいい。

その一心で出かけた。

 12日10時30頃、新幹線新白河駅に、先に着いていた佐藤夫妻が

車で迎えに来てくれた。

改札口で鏑木さんにバッタリ会う。

「やあ」

車に5人ギュー詰めで、高原の景色を眺めながら、とある一角に

着いた。

 

”ゆいまーる那須”を表示する看板はあるけど、それを見そこなったら。

「ここは一体、何?」ってなりそう。

 

 「正面がデイケアの建物で、左が食堂です」と鏑木さん。

そこからなだらかな坂を上って、今日の会場になる建物へ。

そこは、自由室兼音楽室。

 

近山恵子さんが迎えてくれた。

「まず、この中を案内します。はじめに、私の部屋を見てもらいます」

近山さんの仕事場は、東京にあるコミュニテイネットワーク協会。

彼女の住まいは、ここだという。「へえー」と思った。

 

恵子さんは一人暮らし。

落ち着いた部屋だった。

ゆいまーる那須の全景の模型も置いてあった。

 

見学の人があると、見てもらっているみたい。

おおらかで、オープンな人、そんな印象だった。

 

ひとり暮らしの人が多いと聞いた。

いまは50人が入居している。

「食堂を大事にしている。元気な人にはなるべく自炊を

すすめているけど、いつでも食堂が利用できるというのが、

安心よね」と恵子さん。

みんなが寄り合える部屋では、何かみんなで作っていた。

手を動かしながらのおしゃべり。井戸端のような感じかな。

 図書室もある。

周囲の環境が素晴らしい。

森に囲まれている。

建物があるところには、大きな木はない。

「その分、空が広がっているのが、いいのよね」

恵子さんは、いろいろな問題を問題にしない心があるのかも。

 


「分け隔てのない社会IN那須」の会は、自由室で開かれた。

全国各地で”ゆいまーる”をつくっているスタッフや、那須の

住民も参加した。

「アズワンーーやさしい社会の試み」

小野雅司さんがスライドを使いながら紹介した。

 

「コミュニテイに参加するのにはどうしたらいいか。

手続きとかあるのか」

「アズワンには、ここからここまでというような範囲があるのか」

「家族の中で、分け隔てなく、経済を一つでやるというのは

出来そうだけど、規模が大きくなってできるのか。それができる

というなら、何が決定的に違うのか」

「一人ひとりに個性や多様性があるなかで、関係が濃くなって

いったときにお互いに気を使ったり、自由な選択ができなかったり

しないだろうか」

どれも、その場の話だけでは検討しきれないテーマと思った。

これらのことを検討しながら、具体的に”ゆいまーる那須2”を

構想していくのかなあ。鏑木さんは、そんなことを目指している

のかなあ。

 

夜はゆいまーる食堂で居酒屋。

月に何回かそういう日があるらしい。

今回はその日に当たったらしくビールやお酒を飲みながら、

夕食も食べながらおしゃべりした。

近山恵子さんは、自分の志は歯に衣せぬ勢いで話すし、実行

するけど、他の人が言っていること、欲していることを受け入れて

いく柔らかい心も持っていると感じた。

恵子さんはぼくと同時代を生きてきた。

恵子さんの周りには、そのころから同志といってもいいような、

”女傑”とも言えるようなの人たちが寄っていて、何か誰もが

心の底で願っていることの実現に傾倒しているようだった。

 

 

”ゆまーる那須”の運営は(株)コミュニテイネットが受け持っている

      http://c-net.jp/company

近山恵子さんは、コミュニテイネットワーク協会の理事長である。

     http://www.conet.or.jp/

 

この二つの団体がどういう関係かよく分からない。

でも、鏑木さんや近山さん、その仲間の人たちの話を聞いて

いくと、どうも「百年コミュニテイ」というのが共通のキーワードの

ように受け取れる。

 

「百年コミュニテイ」

ーー子どもから高齢者まで、さまざまな価値観を持つ人たちが

   世代や立場を超えて、お互いの生活を尊重しながら、

   ともに支え合う仕組みのある「まち」づくり。

   それが、一般社団法人コミュニテイネットワーク協会が

   提唱する「百年コミュニテイ」です。

 

誰から聞いたというのでもないが、そういう構想が口で唱えるだけ

でなく、「実現」とはっきり言い切っている空気があった。

”ゆいまーる”シリーズという、全国に展開していく試みがあるが

そのような事例を1000作っていくとい目標がある。

調査・研究、モデルの創設、地域プロデューサー養成講座を

開設するとか人材の育成、そのほか具体的である。

 

ゆいまーる那須には1晩泊まった。

その間、神代尚芳さんという名前を何回か聞いた。

鈴鹿に戻って、ネットでしらべてみた。

末期がん患者を看取り続けた神戸在住の医師。

一昨年の春、末期がんとなり、昨年5月に亡くなった。

コミュニテイネットワーク協会の会長でもあった。

神代尚芳さんが生前に書いた文章が伝わってきた。


 

「コミュニティの新再生を目指して」
~老いと死を豊かにむかえるために~
社団法人コミュニティネットワーク協会会長 神代尚芳

 

 ここ20余年、持ち続けていた夢――最期まで自分らしく

 生ききることができる社会――の実現、そして今日、

 大きな問題となっている高齢社会の中で人間性豊かに老いを

 過ごすために、また、現在様々なかたちで頻発している多くの

 社会問題の解決のためにもコミュニティの新再生は必須のこと

 である。

 全てがこれで解決するわけではないだろうが、ひとつの解決策で

 あるにちがいない。しかも急速に取り組まねばならない。

 むつかしいことではあるが、多くの人がコミュニティの重要性に

 気づき行動して欲しい。
 

 多機能(医療・福祉・教育など)をもつコミュニティの中で人と人と

 つながりがあってこそ人は真に自分らしく生ききれるのではないか。
  

 コミュニティなくしては、在宅医療も在宅福祉もありえないし、介護保険も

 十分に機能しないであろう。(中略)

 高齢社会の到来とともに老いの厳しい現実に深くかかわっていく中で、

 老いも〈完成〉へのひとつの道であり、〈完成〉への助走の時とみる。

 老いも死も豊かである社会にしなければならない、これが私の活動の

 原動力となっている。
 

 コミュニティの新たな再生、それは長い道のりにちがいない。しかし、

 たとえ困難であっても、気づいた者が進まねばならない。

 1人の気づきと行動が、2人を引き寄せ、それが4人に、8人に、

 16人に・・・と輪が広がる。広げなければならない。

 老いや死、また障害を豊かに支えうるコミュニティの新たな再生こそが

 21世紀の初頭に取り組まねばならない大きな課題だと私は考える。

                 (『伊川谷通信』※ 創刊号より) 

 

いま、鈴鹿で暮らす有志の人たちと、老後の暮らしを語り合おうと

「理想の暮らしを語る会」というのを昨年末から続けている。

鏑木さんや近山さんがアズワンに訪問してくれたことが刺激に

なっていると思う。

いまのところ、寄っては取りとめもない話をしている感じだけど、

「老いと死を豊かに迎える」とか、「死は人生の完成」とか聞くと

ボンヤリしていた焦点が、どこを見ていくのか、気持ちにギヤが

入ると感じている。

”ゆいまーる那須”は、制度的には「サービス付高齢者住宅」と

いうカテゴリーにはいるらしい。

現状の地域の中に、そのような機能が生き生きと発揮されるには、

「百年コミュニテイ」で提唱しているように、お互いが気持ちを

出し合える交流の場が不可欠だろう。

 

いま、細々とやっている「理想の暮らしを語る会」って、そんな風に

見てみると、面白いんじゃないか。

今のところ。やろうという人ではじめる。

そんな会、面白そうとなれば、あちこちでも出来る。

神代さんがいっているような感じで。

 

鏑木さん、近山さん、その他出会った皆さん、これからも

よろしく。

今も余韻が続いている。