風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

イチロー先生 対 女子高生

2021-12-28 23:01:33 | スポーツ・芸能好き
 現役引退したイチローは普通に「さん付け」で呼ぶべきなのだろうが、敬愛をこめて、確立された野球ブランドの「イチロー」と呼び捨てにさせて頂く。10日ほど前のことになってしまうが、そのイチローが、「女子高校野球選抜強化プログラム2021」に協力し、所属する草野球チーム「KOBE CHIBEN」と女子高校野球選抜チームとのエキシビションマッチを行った。「9番・投手」で先発したイチローは、足をつりながらも147球を投げ抜き、最速135キロ、9回を無失点、17奪三振で完封した(打席では3打数無安打)。
 高校生の指導に必要な「学生野球資格」を回復したイチローは、昨年暮れの智弁和歌山に続き、今年は国学院久我山、千葉明徳、高松商を訪れて高校生と交流し、いずれブログで取り上げようと思っていたが、今回の女子高生との対戦を知って、すぐに取り上げなければ・・・と思い立った(それにしては既に10日も過ぎてしまったが 笑)。女子が相手だからと言って手加減することなく、足がつるほどに全力投球したことに感動し、その勢い余って、たまたま二度も続けて死球を与えてしまった選手から「イチローさんが投げた球だったので嬉しさのほうが大きかったです」と言われたことに、さもありなんと、不覚にもつい涙してしまった(笑)。7回無死一塁で中前打を放った選手には「スピードが格別。女子野球にはない球筋だった。外角の直球を素直に打ち返すことができた。とてもうれしかった」と言わしめ、女子チーム監督には、試合前にイチローに「120キロでも打てない」と“示し合わせ”をしていたのに、実際には初球から134キロとまるで手加減なしで、「夢のような時間。あんな間近に見られただけで感激。全力で真剣勝負してくださったのがうれしかった」と言わしめた。
 まさに夢のような時間で、羨ましくて仕方がない。
 野球の前でも男女の区別はあろうはずがなく、女子の高校野球のことを忘れることはなかったのは当然のこととして、神聖なる野球に当然のことながら全力で向き合ったことがなんだか無性に嬉しい。張本勲さんは、高校生ばかりでなく、プロ野球キャンプにも足を運んで欲しいと要望された。そのお気持ちは理解するが、プロ野球に目を掛けるOBは多い(と言うより殆ど全てがそうだ)のに対し、プロ予備軍の高校生を直接指導するOBは多くない(と言うより殆ど知らない)ことに留意すべきだ。メジャーで活躍した伝説的とも言えるイチローだからこそ、日本のプロ野球界に与える影響は大きいはずだが、敢えて「正面」を避けて、これまでプロ野球人が見向きもしなかった(必ずしもドラフトで選ばれるエリートだけではない)普通の高校生という「側面」、ある意味でマイナーでニッチな領域に優しいまなざしを向け、限りない愛情を注ぐのは、実は野球界全体を盛り立てる意味ではドツボに嵌った戦略的に重要なポイントではないかと思われ、へそ曲がりながらも本質を捉えて逃さないイチローらしいユニークな立ち位置だと、今さらながら感心するのだ。
 一連の高校生指導の中で今日はどういう印象だったかと問われたイチローは、「女子の野球熱は男子に全然負けてないというか、こうやって野球をやる子たちはきっと男子よりもそういう思いが強い子が多いんじゃないかと。負けるのは嫌いでしょうし。本当に今日は僕も負けたくなかった。緊張感があったし。こんなのいつ以来だろう。本当にWBC以来じゃないか(笑い)。それくらい負けられない緊張感を味わいました」と、最大級の賛辞を贈った。これを聞いて女子の高校野球が盛り上がらないはずはない。野球を愛してやまないイチローの面目だろう。
コメント
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