朝から雨が降っている。ありがたいことだ。雨が降る毎に、少しずつ暖かくなる。今年の冬は寒くて、植木鉢のチューリップも芽を出し切れずにいた。我が家に私の兄弟につながる者たちが集まった時、義弟がたくさんの鉢を眺めながら、「もう芽が出ていますね」と感心していたけれど、あれから成長は止まっていた。寒さで鉢の土が凍っていた時もあった。それが、最近の暖かさですっかり凍土はなくなった。そこへ今日のように雨が降れば、根を張ることができ、芽も大きくなっていくだろう。この時期になると、カラスがチューリップの芽を食べに来るから、よく見張っていなくてはならないが‥。
植木鉢に張り付いているアゲハチョウのサナギを毎日心配して見て歩く。ミカンの木に張り付いたサナギは大丈夫だと思うけれど、植木鉢の方は風や雪がまともに当たってしまうものもある。今日までのところは皆無事である。このまま暖かくなり、花が咲くようになれば、サナギも殻を破って羽化するだろうが、今年はいつ頃になるのだろう。白い山茶花は毎日よく咲く。1つの花が長く咲いているのか、次々と花を咲かせているのか、この寒さの中で咲き続けている。私は山茶花よりも、ヤブツバキか侘助のような赤い椿が好きだ。子どもの頃、母の実家の庭で見た椿が忘れられない。
私の家の庭にも椿はあったけれど、まだら模様のピンク色した大きな花だった。けれども、母の実家の椿は小ぶりで、とてもきれいな赤い色だった。しかもその日は、前夜に珍しく雪が降ったから、真っ白な雪と真っ赤な花と深い緑の葉がとても美しく思った。多分この体験は、まだ小学生だったけれど、色の配置を美しいと思い、日本的だと、大人になって感じる原点だったのだろう。教員になって冬の京都を歩く機会があった。法然院だったか定かではないけれど、参道だったか寺に行く道だったか、それもはっきりしないけれど、道路におびただしい椿の花が落ちていた。その時も道路は薄っすらと雪が積もっていて、その上に無数の赤い椿の花があり、美しいと思った。
椿はヤブツバキのように飾り気のない方がいい。母の実家の椿も、故郷の寺の椿も、法然院(?)で見た椿も、ヤブツバキであったように思う。椿は日本の各地で見ることができるが北限はどのあたりなのだろう。夏の暑さには強いと聞いた。椿の葉の黒っぽい艶のある緑もいい。中学からの友人が額田郡幸田町の本光寺の椿がいいと言っていたので、いつか見に行きたいと思っている。いろんな椿が咲き誇っているよりも、同じ種類の椿がひっそりと咲いている方が風情がある。椿は冬の花、可憐であっていいと思う。でも、どんな花でもひとりで見るというのは寂しすぎる。花はふたりで眺めるからいいのかも知れない。