友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

名演11月は『王女メディア』

2015年11月27日 17時08分24秒 | Weblog

 名演11月例会は平幹二朗さんが演じる『王女メディア』だった。2時間10分ほどの芝居だが、途中休憩はなく、舞台転換もなく、平幹二朗さんが演じ続け、圧巻だった。舞台に立つのは男性ばかりで、はじめは少し戸惑ったが見ているうちに見事に女性になっていた。平幹二朗さんだから演じられるメディアだ。そう思った。

 紀元前430年も前に書かれたギリシア悲劇なのに、全く違和感がなかったのは、メディアの悲劇が今も変わらないからだろう。女性は強い、いや弱い、いいや恐ろしい。ギリシア悲劇は人間観察が見事だ。舞台は、愛を誓った夫がこの国の領主の娘と結婚することを伝え聞いてメディアが嘆き悲しむところから始まった。

 夫の裏切りを罵るメディアに対し、夫は子どもたちの将来のためだと言う。メディアは夫に対して尽くしてきた数々を挙げ、それなのに捨てるのかと夫を責める。夫はそういうお前の冷酷さが嫌だと本音を漏らす。メディアは夫を奪った領主とその娘を殺す。そしてふたりの息子も殺してしまう。

 フランス革命時代の画家ドラクロアは幼い我が子を殺害しようとしている豊満なメディアを描いている(上の絵)が、平幹二朗さんは殺害をためらう母親の苦しみをのたうち回って演じた。隣国の王子を色仕掛けで手なずけ、自分の安全を確保した悪女とは思えないが、人は決して悪と善とに分かれるのではなく二面性を有しているということだろう。

 裏切ったのは夫なのに、なぜ領主と娘を殺さなければならないのか。領主は娘のためにメディアに国を出て行けと命じるけれど、娘はメディアの悪口を言ったわけでもない。ただ、夫が「優しい女性」と言ったことが気に入らなかったようだ。それにしてもなぜ、我が子までも殺してしまうのだろう。夫との間に生まれた可愛い息子を殺すことは、殺害する以上に夫への復讐と考える女性の悲劇である。


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