朝は穏やかに晴れ渡っていた。西の空に黒い雲が広がり、風邪が強く吹き出すとにわかに雨が降って来た。変わりやすい天候に戸惑った。こんな風にして秋は深まり、冬へと向かうのだったかと思案する。暦の今日は「大雪」とある。
昨夜はそんなに寒くもなく、風も無くて本当に助かった。忘年会に参加してくれたのは12人で、どうやらこのメンバーで固定してきたようだ。最高年齢は94歳、まだまだ元気で、ご自分も「いつまで生きるのかねえ」と笑ってみえたが、「みんなのお手本なので、うんと長生きしてください」と声がかかった。
「特に何もしていない」と話されたが、「出来るだけ外に出て、歩くようにしている」と健康の秘訣を話す。近くに娘さんが住んでいるとはいえ、独り暮らしを続けている。「ご主人を早く亡くされたから、それが良かったのよ」と無茶を言う人もいれば、「相方が生きているのは本当に大変よ」と茶々を入れる人もいる。
「夫婦は赤の他人じゃーない。『おい、お茶』とか、『風呂沸いてるか』とか、私はあなたの奴隷じゃーない。もう、早く死んでほしい」と言えば、早くに妻をガンで亡くした人が、「もっと話したかったですよ」と言う。そこから、どこで、どういう出会いだったのかという話へと展開していった。
彼は「いつ死んでもいい」と言いながら、「いや、1週間か2週間は時間が欲しい」と言うので、「えっ、どうして」と尋ねると、「子どもにやって欲しいことを伝えておく時間が要る」と答えるので、「そんなら、今、話せばいいじゃないの。会話がないの」と詰問されていた。
そこから、「血のつながった親子でも意思疎通は難しいでしょう。ましてや赤の他人同士なんだから」と夫婦の話に戻っていく。すると彼は、「夫婦だからこそ、いたわり合い、愛し合えるのではないですか」と切り返す。確かに、子どもよりも夫婦の方が人としての関係は深いかも知れない。久しぶりに話が弾んだ忘年会だった。