我が家へ3人の美女がバラを見に来た。マンションの仲間の人たちだ。「好きなバラを好きなだけ持って行って」と花バサミを渡す。誰がどんなバラが好きなのか、切り取るバラで分かる。ところが3人とも、意外に地味で清楚なバラを選んだ。午後のルーフバルコニーは暑いので、部屋に戻ってもらい、その間に私はコーヒーを用意する。
建設されて40年以上になるマンションの中で、私たちはいわば古株に属する。マンションの周りはすっかり家屋で埋まった。建設も盛んで、マンションから工事中の建物が何軒か見える。「昔は田んぼばかりで、カエルの鳴き声がとっても喧しかったわね」と昔話に花が咲く。「お年寄りの引っ越し者も結構いるね。先日も知らないご夫婦とエレベーターで一緒だったから、ごあいさつしたんだけど、何にも言われなかった」。
一戸建てでは管理が出来ないからと、マンションに移ってくる高齢者が増えた。「『このマンションでは今、あいさつ運動中ですよ』って言ってあげるといいわよ」と言う人がいれば、「きっと耳が遠かったのよ」と優しい人もいる。神戸のマンションでは「あいさつ禁止」を決めたそうだ。知らない人に近づかないためというが、不審者を無くすなら「あいさつ」を交わした方がいいと私は思う。
不審なメールがまた来た。2,900万円を受け取って欲しいという女性からの依頼の後、手続き代行センターのお客様担当から、2,900万円の振り込み依頼があるので、相手に確認され上で銀行名と口座番号を知らせて欲しいとある。共にsoftbankを使っている。楽して金が手に入るのに、私の母親は「金は汗して稼ぐもの」と言っていた。
マンションも年寄りが増えたから、「うっかり欲を出してとんでもない目に遭わないようにみんなで注意し合う他ないね」とみんなで確認する。便利な世の中になったのか、とんでもない世の中になりつつあるのか、高齢者が被害を受けるのは時代に乗っていけないのか。困ったものだ。