思いを伝えることは難しい。9月の大雨の日、我が家のルーフバルコニーはプールのようだった。しかし幸いなことに、雨が止むと水は一気に引いていった。翌日、友だちから「ルーフバルコニーの階下の家で水漏れがあったので、バルコニーを調べてさせてもらう」と電話が入った。もちろん承諾した。その後の修繕委員会で、「原因はわからなかった」と報告があり、階下の修復についてはマンション保険で行なうと確認された。
既に、3ヶ月を経ているから修復工事は終ったものと思っていた。ところが先日、エレベーターの前で、階下の住まいの方に会ったので、「部屋はきれいになりましたか?」と尋ねたところ、ムッとした表情で、「何もやってくれないのはどういうわけ」と言われる。そこで管理事務所長に聞くと、「忘れとった。あれは原因がわからないので、マンション保険では出来ない。お宅の個人賠償保険でやって欲しい」と言う。
ルーフバルコニーは共有財産の部分だから、個人保険が適応されるのは疑問だったけれど、正月までには水漏れの染みで汚れた箇所はきれいにしておきたい。どの保険で行なうかよりもまず住民の苦情を早く処理してあげなくてはならない。そこで、保険会社に電話して、管理事務所長と連絡をとってもらうことにした。保険会社としては事情を把握できなくては対処できないので、詳しい話を聞こうとするが、我がマンションの管理事務所長は説明が出来なかったようだ。
保険会社の人から、「まるでケンカ腰で話が出来ない」と言ってきた。するとすぐに管理事務所長から「お宅の保険屋は話しにならん。もういいです。マンション保険でやりますから」と電話が入った。冗談じゃーない。マンション保険では適応しないから個人賠償保険でやって欲しいと言っておきながら、「もういいです」は無いだろう。「ご迷惑をおかけしましたが、マンション保険で処理するようにします」とくらい言ってもいいではないか。
そもそも管理事務所長が、水漏れの後すぐに対処していればもう済んでいたはず。もっと言えば、「保険で対処します」と言ったのに、「忘れた」ことに責任がある。誰でも過ちはある。素直に認めて謝ればお互いに不愉快な思いも小さくてすむ。男は皆、謝ることを嫌う、その気持ちは分かるけれど、自分の落ち度を隠そうとするからますます険悪になってしまう。思いを伝えることは難しい。