8月16日の夜、毎年、京都で行われる「五山の送り火」。ご先祖様の精霊を、お見送りするために、山に火が灯される伝統の行事です。
コロナ禍の今年、それぞれの山には、送り火の数が少なくなることを発表。どんな形でも、ご先祖様を送る行事は、決して中止にはしない…という京都の人の強い思いがあるのです。
「今年、大文字は6つの点で送り火が灯されるんだって~見えるかなあ~」と、ちょっと心配するミモロ。
通常は75基の灯りが点火されます。
そこで、今年は、大文字の灯される如意ケ嶽、通称大文字山の近くまで出かけることに…
今出川通を東に向かい、19時50分ごろ吉田山の麓、神楽岡通にやってきました。
送り火の点火は、20時に「大文字」から始まり、次々の山に点火されていきます。
住宅の間から、山が見やすい場所を探したミモロ。すでにそこには、数人の人が…「もうすぐだね~」「どんな風になるんだろ?」とミモロは、そこにいらした方々と距離を保ちながらお話して、点火の時を待ちます。
「あ、なんか火が見えた~」
山に点火されたよう…いつもなら、次々に火がともされ、大きな「大」の字が山に浮かび上がります。
「う!やっぱり点なんだ~え~とひとつ、ふたつ、三つ、四つ、五つ…あれ?5つしか見えないよ~確か6か所のはずだけど…」
ミモロは、背伸びしたり、飛び上がったりして、送り火の数を数えますが、どうしても5つしか見えません。
「大」の文字の右側の足の部分は、他の部分より離れているので、山か住宅の陰になり、ミモロの場所からは見ることができません。
「う~残念…でも、送り火見えたからいいの~」と言いながら、送り火に静かに手を合わせ、ご先祖様の精霊をお見送りするミモロです。
「今年は、あんまりおもてなしできなくて、ごめんなさい~来年は、盛大におもてなしするから、どうぞこの1年、お守りください~」と祈ります。
ふと周囲を見回すと、たくさんの見物人…「めったに点だけの送り火は見られないから…」という人も多かった今年。
「わ~なんか送り火って知らなかったら、山火事みたいに見えるかも…」という人も。
確かに文字になっていないので、山の一部が燃えているように見えます。
ミモロは、一緒に行ったお友達と、今出川通に戻ります。「わ~結構人多かったんだ~」と驚くほど、たくさんの人が、舗道から山を見上げていました。
「みんな、やっぱり見に来たんだ~」京都の人にとって、お盆の大切な行事のひとつの「五山の送り火」拝まないわけにはいきません。
今出川通には、車も多く、警察車両も待機する混雑ぶり。
「あ、だんだん火が弱くなってる~ご先祖様、ご出発なさったんだ~」と、最後の光に再び手を合わせるミモロです。
昨年は、満月といっしょに拝んだ「五山の送り火」
この景色が、来年こそ見られることを、祈ります。
「やっぱり点より、文字がいいね~」とミモロ。それは誰もが思うこと…。
来年の今ごろ、どのような思いで、送り火を見上げることか…誰も想像できません。
「オリンピックが終わって、まだたくさんの外国人観光客が京都に来てるのかなぁ~」
今年の「五山の送り火」の開催前に、無断でLED電球で「大」の文字を浮かび上がらせるという事件が起きました。
「五山の送り火保存会」の方々の怒りは、相当なもの…大切な行事をどう考えているのかと…。
実は、「五山の送り火」は、戦時中の1943年に、火を灯す人材が戦争に行ってしまったため、点火できず、それに代わり、国民学校の生徒と市民800人が、朝、白いシャツを着て、人文字で「大」を描き、ラジオ体操を奉納したそう。
また、2000年の大みそかには、ミレニアムを記念して、五山すべてに火が灯されたことも。
「LEO電球を灯した人も、きっとコロナ禍で苦しむ人たちを応援したかったんじゃないの…でも、時期が悪かった…ちゃんと許可を取ったら、こんなに非難されなかったのに…」と思う人も多いのではないでしょうか?
今年の「五山の送り火」は、点火する人の密を防ぐということから、点火する数が減らされたとも…。
LED電球での点灯に、どれほどの人が加わっていたかは不明ですが、短時間の準備でLED電球により「大」の文字を浮かび上がらせることができるという事実は、驚きを人々にもたらしました。
伝統の行事をないがしろにした…ということは紛れもない事実です。でも「見たかったね~」と思いも否定できない人も多いはず…。
いつか、ミレニアム記念で点火されたように、医療従事者などへの応援に、また、みんなでコロナを収束させようという思いを込めて、今の時代を象徴するLED電球での点火が、受け入れられる時が訪れるかも…
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