みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1027「分岐点」

2021-02-08 17:52:19 | ブログ短編

 そこはゴツゴツとした岩(いわ)が密集(みっしゅう)しているような場所(ばしょ)だった。男がひとり、呆然(ぼうぜん)と立っている。男の後ろには平坦(へいたん)な道(みち)。そして、男の前には二つに分かれた道がある。
 男は呟(つぶや)いた。「ここは…どこなんだ? どうしてこんなところに…」
「あんたは、ここに引(ひ)っかかったんだよ」どこからか声(こえ)がした。
 男が辺(あた)りを見回(みまわ)すと、岩の中にうずくまっている老人(ろうじん)を見つけた。老人は男に言った。
「お前はどっちを選(えら)ぶ? あっちの険(けわ)しい登(のぼ)り道か、こっちの断崖(だんがい)に沿(そ)った下り道か…」
「何のことだ? 俺(おれ)は、どこへも行かないよ。なぁ、ここがどこなのか教(おし)えてくれ」
「ここか? ここは、人生(じんせい)の分岐点(ぶんきてん)だ。さぁ、選ぶんだ。早(はや)くしないと…」
「何を選べと言うんだ。俺には、分からないよ」
「今、お前さんが悩(なや)んでいることだよ。その決着(けっちゃく)をつけるんだ」
「俺が、悩んでいること…。そんな…。それをいま決(き)めろと言うのか?」
「まぁ、わしに言わせれば…。どっちを選んでも、さほどの違(ちが)いはないものさ。人生みな、行き着くところは同じというわけだ」
「そんな…。同じわけないだろ。どっちを選ぶかでまったく違ってくるはずだ」
「みんな、そう言うよ。わしもそうだ。ここにいる連中(れんちゅう)もだ。どこにも行けずに…」
 男は、老人の方を振(ふ)り返った。老人の姿(すがた)は、そのまま岩に変(か)わっていた。
<つぶやき>これは、神様(かみさま)のゲームなのでしょうか? 人生は、いろんな選択(せんたく)の連続(れんぞく)です。
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1026「社運」

2021-02-06 17:51:03 | ブログ短編

「いやぁ、よくやってくれた。君(きみ)のおかげだよ」上司(じょうし)は部下(ぶか)を前にして言った。「それでだ。君に後を任(まか)せたいんだが……いいかね?」
「えっ、あたしに?」女子社員(じょししゃいん)は驚(おどろ)いて、「でも、あたし、電話(でんわ)をとっただけで…」
「いや、君しかいないんだよ。この契約(けいやく)には、我(わ)が社の社運(しゃうん)がかかってるんだ」
「そ、そんなに大切(たいせつ)な契約でしたら、社長(しゃちょう)とか…、あたしより、もっと上の人が…」
「それがね、社長はいま海外(かいがい)なんだよ。いつ戻(もど)って来られるか分からないんだ」
「じゃあ、部長(ぶちょう)が…行ってください。だって、あたし、まだ入社(にゅうしゃ)二年目ですよ。そんな…」
「大丈夫(だいじょうぶ)だよ。先方(せんぽう)だって、君でいいと言ってるんだから」
「何でですか? おかしいですよ。あたし、先方の会社のことだって知らないのに…」
「そんな難(むずか)しく考えなくても…。君は、行って契約書(けいやくしょ)にサインするだけでいいんだから」
「そんな、簡単(かんたん)に言わないでください。もし…、もしも、何かあったらどうなるんですか?」
「そ、それは…、あれだよ。つまり…そういう場合(ばあい)にはだね……」
「まさか…、あたしに、責任(せきにん)とらせるつもりですか? そうなんですね」
「違(ちが)うよ。なに言ってるんだ。君に…、そんなことまでは……」
「絶対(ぜったい)、イヤです。あたし、クビになんか、なりたくありません」
「じゃあ、こうしよう。君には特別(とくべつ)なポストに就(つ)いてもらって…。昇進(しょうしん)だよ。これは、異例(いれい)のことなんだ。給料(きゅうりょう)だって、今よりも増(ふ)えるぞ。これなら…、行ってくれるだろ?」
<つぶやき>こんな会社、間違(まちが)いなく潰(つぶ)れるんじゃないですか? 今のうちに転職(てんしょく)を…。
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1025「しずく120~隠れ里」

2021-02-04 18:05:53 | ブログ連載~しずく

「私、月島(つきしま)しずく。二人のことは心配(しんぱい)ないわ。眠(ねむ)ってるだけだから」
「そう…。私は、水木涼(みずきりょう)よ。あなたなの? 私の両親(りょうしん)を助(たす)けてくれたの」
「ええ。あなたに会えて嬉(うれ)しいわ。私と友だちになってくれる?」
「いいわよ。でも、あなたとは、どこかで会ったことあるような…」
 そこへ、柊(ひいらぎ)あずみがやって来た。あずみは涼を見るなり彼女をぎゅっと抱(だ)きしめて、
「無事(ぶじ)で良かったわ。心配したのよ。大変(たいへん)だったわね。もう大丈夫(だいじょうぶ)だから…」
 涼は思わず、「ちょっと、止(や)めてよ。先生…、苦(くる)しいんだけど…」
「先生…」しずくが声をかけた。「受(う)け入れの方は?」
 あずみは、涼を解放(かいほう)すると、「ええ、準備(じゅんび)はできてるわ。いつでも引き受けるって」
 涼はわけが分からず、「え、何のこと? 準備って…」
 あずみはそれに答(こた)えて、「あなたの両親に、隠(かく)れ里(ざと)へ移(うつ)ってもらうのよ。あいつらに狙(ねら)われないようにね。隠れ里は能力者(のうりょくしゃ)や、その家族(かぞく)を守(まも)るためにあるのよ」
「その前に…」しずくが言った。「ご両親から、襲撃(しゅうげき)の時の記憶(きおく)を消(け)してもいいかしら?」
「そ、そんなこと…できるの?」涼はしばらく考えて、「じゃあ、私の記憶も消してよ。私、本当の子供(こども)じゃないし…。私のせいでこんなことになっちゃったんだから…」
「ほんとに、それでいいの?」しずくは涼の決意(けつい)を感じて、「分かったわ。そうするね」
<つぶやき>もう会えなくなるわけじゃないよね。きっとまた会えるはずだと思います。
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1024「大量絶滅」

2021-02-02 18:20:52 | ブログ短編

 教授(きょうじゅ)が助手(じょしゅ)を引き連(つ)れて、荒野(こうや)にある丘(おか)の斜面(しゃめん)にやって来た。教授は斜面を削(けず)りながら、地層(ちそう)をつぶさに観察(かんさつ)していく。そして、とうとう目的(もくてき)の地層を発見(はっけん)した。教授は、
「見たまえ、この細(ほそ)い部分(ぶぶん)を…。我々(われわれ)が発見した地層と同じものに違(ちが)いない。分析(ぶんせき)すれば、この地層からも隕石(いんせき)に由来(ゆらい)する物質(ぶっしつ)が見つかるはずだ」
「教授、千キロ以上も離(はな)れているんですよ。本当に同じ地層だとすると…」
「そうだ。第六の大量絶滅(たいりょうぜつめつ)が巨大隕石(きょだいいんせき)によって引き起こされたことが証明(しょうめい)できる。いいかね、ホモサピエンスが絶滅したのが、今から6600万年前だ。それは、化石(かせき)や遺物(いぶつ)がそれ以降(いこう)ではまったく発見されていないことからも明(あき)らかだ。ちょうどここが、その年代(ねんだい)の地層なのだよ。これがまさに、大量絶滅の証(あか)しなのだ」
「教授…。ホモサピエンスって、あの奇妙(きみょう)な身体(からだ)の生物(せいぶつ)ですよね。2本ずつの足(あし)が違う動きをしていたとか…。化石を見ただけでは、どうやって生きていたのか見当(けんとう)もつきません」
「君(きみ)は勉強不足(べんきょうぶそく)だぞ。もっと想像力(そうぞうりょく)を働(はたら)かせるんだ。彼らは2本の足だけで立っていたんだ。そして残(のこ)りの足で物(もの)をつかんだり道具(どうぐ)を作っていたんだろう」
「どうして、そんな不恰好(ぶかっこう)な身体になったんでしょうか? 私たちみたいに足が8本あれば、もっと楽(らく)に動き回れるはずなのに…」
「まったくだ。今まで、彼らが滅(ほろ)んだのは、その科学力(かがくりょく)に原因(げんいん)があると言われてきた。でも、愚(おろ)かな戦争(せんそう)で滅んだのではないと分かって、私はホッとしたよ」
<つぶやき>まさか、この人たちって火星人(かせいじん)なのでしょうか? 人類(じんるい)が絶滅するなんて…。
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