みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0926「雨小僧」

2020-07-21 18:18:00 | ブログ短編

 彼は、久(ひさ)しぶりに会うことになっている友だちのことを考(かんが)えていた。その友だちとは数十年来(らい)の友人(ゆうじん)で、とっても気の合う仲(なか)だった。でも不思議(ふしぎ)なことがある。彼と待ち合わせをすると、その日はいつも雨(あめ)になってしまうのだ。朝から天気(てんき)が良くても、待ち合わせの時間には雨が降(ふ)り出していた。
 ある時、彼はその友人に訊(き)いてみた。「君(きみ)は、雨男(あめおとこ)なんじゃないのかい?」
 すると友人は、「何を言ってるんだよ。君こそ、そうなんだろ?」
 二人とも、相手(あいて)のせいだと思っていたなんて。ちょっと面白(おもしろ)い話である。しかし、こんなことってあるんだろうか? その後も、彼がその友人に会うときは雨の日になっていた。
 ――彼は明日の準備(じゅんび)を済(す)ませると、最後(さいご)に自分の鞄(かばん)に折(お)りたたみの傘(かさ)を忍(しの)ばせた。
 それを見ていた妻(つま)が言った。「明日は天気は良いみたいよ。傘なんていらないわ」
 彼はにっこり微笑(ほほえ)んで答(こた)えた。「いや、明日は雨になるはずだ。だって、雨男と会うんだからね。君も、出かけるんなら傘を持っていった方がいい」
 ――でも、彼らは気づいていないのだ。二人が会うとき、いつもそばにいる存在(そんざい)を…。それは、彼らから少し離(はな)れたところで見え隠(かく)れしている影(かげ)――。人間(にんげん)にはその正体(しょうたい)を見ることはできない。その影は、きっと雨小僧(あまこぞう)たちなのかもしれない。人間たちにくっついている雨小僧が出会(であ)うと、挨拶(あいさつ)がわりに雨を降らすという。
 これは、たんなる噂(うわさ)かもしれないけど、信じるか信じないかは――。
<つぶやき>これは作り話ですけど、本当(ほんとう)にそうだと言えるのか? 実際(じっさい)にあるかも…。
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0925「しずく100~罰」

2020-07-19 18:05:19 | ブログ連載~しずく

 とある場所(ばしょ)――。あの初老(しょろう)の紳士(しんし)を前にして、川相初音(かわいはつね)がひざまずいていた。その周(まわ)りには数人の男たち。紳士はすごい形相(ぎょうそう)で手をあげると、初音の頬(ほお)を打(う)った。初音はその場に倒(たお)れるが、すぐに起き上がり頭を下げた。紳士は息(いき)を整(ととの)えると、静かな口調(くちょう)で言った。
「お前には、あいつらを監視(かんし)しろと言ったはずだ。なぜ、余計(よけい)なことをする」
 初音は必死(ひっし)になって答えた。「すいませんでした。でも、あたしにも…何か…」
「ふん、お前ごときの能力(ちから)で何ができるというんだ。この大事(だいじ)なときに――」
「あたしにだってできます。あと少しで、始末(しまつ)することができたのに…」
 紳士は、また初音を殴(なぐ)りつけた。初音はされるがままに耐(た)えている。紳士は、
「お前のしたことで、この計画(けいかく)にどれだけ支障(ししょう)をきたすか分かってるのか? 自分から正体(しょうたい)をさらして、どういうつもりだ!」
「でも、新(あら)たな能力者(のうりょくしゃ)を見つけたんです。あたしたちの仲間(なかま)に引き入れた方が…」
「それが余計なことなんだ! どうするかを決めるのは、お前じゃない。この、わたしだ。お前には失望(しつぼう)したよ。しばらく休ませてやろう。もう戻(もど)る必要(ひつよう)はない」
 紳士は男たちに目配(めくば)せした。男たちは、初音の腕(うで)をつかんで引き立てた。初音は、
「いや…、いやです。あそこには戻りたくない。お願いです。許(ゆる)して下さい! 許して…」
<つぶやき>これは、どんな罰(ばつ)なんでしょうか? これから、初音はどうなってしまうの。
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0924「猫のつぶやき」

2020-07-17 18:07:06 | ブログ短編

 吾輩(わがはい)は猫(ねこ)である。名前(なまえ)はまだない。こんなことを言うと、あの有名(ゆうめい)な作品(さくひん)と同じになってしまうのだが、実際(じっさい)にないのだから仕方(しかた)がない。
 吾輩の飼(か)い主(ぬし)は、まったく吾輩に興味(きょうみ)はないようだ。どうしてこんな家に来てしまったのか…。話せば長くなるのだが、手短(てみじか)に言うと、好きになった女を振(ふ)り向かせるためだった。どうやらその女は同じ職場(しょくば)の人間(にんげん)で、猫好きだという情報(じょうほう)を聞きつけたようだ。まったく迷惑(めいわく)な話である。で、結局(けっきょく)のところ、猫の話題(わだい)で盛(も)り上がりはしたものの、その女を家まで連(つ)れて来ることはできなかったようだ。まったく不甲斐(ふがい)ない結末(けつまつ)だ。
 しかしながら、そんなことは吾輩には関係(かんけい)ないことだ。吾輩はこの家で確固(かっこ)たる立場(たちば)を有(ゆう)している。腹(はら)が空(す)けば飼い主の足を引っかき、トイレが汚(よご)れていれば…それなりのペナルティーを科(か)す。吾輩はこの家では女王(じょうおう)なのである。
 吾輩の飼い主を観察(かんさつ)していると、どうにも無器用(ぶきよう)というか…人付き合いが苦手(にがて)のようだ。吾輩がこの家に来てから、一度も友人(ゆうじん)が尋(たず)ねて来たことがない。このままでいいのか…。吾輩はときどき心配(しんぱい)になってしまう。でも、吾輩は猫である。人間のことをどうにかできるわけでもない。
 吾輩はもしものときのために、次(つぎ)の飼い主の物色(ぶっしょく)を始めた。吾輩は器量(きりょう)も良いし、どこへ行っても可愛(かわい)がられるはずである。それは今の飼い主で実証済(じっしょうずみ)なのだから。
<つぶやき>猫というものは、したたかな生き物なのかもしれません。見習(みなら)いたいです。
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0923「風鈴」

2020-07-15 18:07:59 | ブログ短編

 男は風鈴(ふうりん)売りのおじいさんから可愛(かわい)い金魚(きんぎょ)の絵柄(えがら)の風鈴を買った。どうしてそんな気になったのか…。一人暮(ぐ)らしの淋(さび)しさからか、ただの気まぐれなのかもしれない。
 男は窓(まど)の外へ風鈴を吊(つる)してみた。そして満足(まんぞく)したように部屋にごろりと横になった。男は風鈴に目をやった。風がまったく吹(ふ)かないので、風鈴はチリンとも言わない。いつしか、男は転(うた)た寝(ね)を始めた。
 どのくらいたったろう。窓から陽(ひ)が射(さ)し込んで、男は目を覚(さ)ました。男は目を細めて風鈴を見た。だが、やはりうんともすんとも動く気配(けはい)はなかった。男は寝ながら大きく伸(の)びをする。そして、窓に背(せ)を向けて起き上がった。
 その時だ。風鈴がチリリンと涼(すず)しげに鳴(な)った。男はハッとして振(ふ)り返った。男は、思わず息(いき)を呑(の)む。窓のところに、赤い金魚柄の浴衣(ゆかた)を着た娘(むすめ)が座っているのだ。その娘は、にっこり微笑(ほほえ)んで男を見つめていた。あまりのことに男は目を閉じてしまった。男が再(ふたた)び目を開けると、そこには誰(だれ)もいなかった。娘の姿(すがた)は消(き)えていた。
 今のは何だったのか…。男は幻(まぼろし)を見たのか。それとも夢(ゆめ)を見ていたのか…。どうにもすっきりしない。それに、何だか惜(お)しい気がしてきた。男は風鈴を見つめた。風鈴は一度鳴ったきり、まただんまりを続けている。男はため息をついた。
 男は、窓のところへ行って風鈴に手を伸ばした。だが、途中(とちゅう)で手を止めると呟(つぶや)いた。
「まぁ、いいか…。きっとまた現れてくれるだろう。その時は――」
<つぶやき>そんなに美しい娘だったの? もう、何で? 声をかければよかったのに。
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0922「神様の憂鬱」

2020-07-13 17:59:15 | ブログ短編

「俺(おれ)さぁ、ほんとにこの世界(せかい)で必要(ひつよう)とされてるのかなぁ?」
「なに言ってんだよ。そんなこと、あたりまえじゃないか。神様(かみさま)なんだから」
「ふっと思うんだよね。俺なんかいなくてもいいんじゃないかって」
「どうしたんだよ。なんかあった?」
「なんかさぁ…。やりがいって言うか、そういうのないんだよね。ほら、死神(しにがみ)さんとか疫病神(やくびょうがみ)さんは成果(せいか)がすぐ見えるじゃない。でも、俺ってなんもできないし。願(ねが)いごと聞くだけなんだよね。ほんとにそれでいいのかなぁ。もっと他に、こう…」
「みんな喜(よろこ)んでるさ。ほら受験(じゅけん)で合格(ごうかく)したり、無事(ぶじ)に出産(しゅっさん)できたり。他にも…」
「それはさぁ、子供たちと母親の頑張(がんば)りでしょ。俺なんか、なんもしてないし。それに、受験にすべっちゃったりとか、無事に産(う)まれなかったり。そういうことあるから…」
「そりゃ、ずべての願いをかなえることはできないけど…」
「俺なんか、なんもできないんだよ。いなくなっても、誰(だれ)も困(こま)らないだろうなぁ…」
「そんなことない。ほんとに、どうしちゃったんだよ。あれか? スランプになっちゃったのか? ここんとこ忙(いそが)しかったもんなぁ。休(やす)んだほうがいいよ」
「ほんとに、いいのか? 休んでも…。でも、休んでる間(あいだ)になんかあったら――」
<つぶやき>神様の悩(なや)みはつきないようですね。みんなで世界平和(へいわ)でも願いましょうか?
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