みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0837「本物の愛」

2020-03-18 18:16:54 | ブログ短編

「では、あなたがお付(つ)き合いしている男性(だんせい)が、ちゃんとあなたのことを愛(あい)しているのか…。彼の愛は本物(ほんもの)なのか…。それを知りたいというわけですね」
「はい。でも、ほんとうにそんなこと分かるんですか?」
「もちろんです。これは企業秘密(きぎょうひみつ)ですので詳(くわ)しいことはお話しできませんが、我々(われわれ)には人の心を覗(のぞ)き見(み)すことができるんです。そうですね…、一週間ほどお時間を下さい」
 ――客(きゃく)の女性は帰って行った。対応(たいおう)していた男は別室(べっしつ)に待機(たいき)していた女を呼(よ)んだ。この女、稀(まれ)に見る美女(びじょ)である。女は気の乗(の)らない素振(そぶ)りで言った。
「またですか? あたし、ただの事務員(じむいん)なんですけど…」
「これも仕事(しごと)のうちだ。いいか、今度の相手(あいて)はこいつだ」男は写真(しゃしん)を女に見せて言った。「どうだ? 真面目(まじめ)そうな男じゃないか。君の美貌(びぼう)なら簡単(かんたん)に落(お)ちそうだ」
「ほんとにいいんですか? そんなことしちゃって」
「かまわんさ。ここに来る連中(れんちゅう)は、心の中では別(わか)れたいと思っているやつらばかりだ。誰(だれ)かに背中(せなか)を押(お)されたいんだよ。我々が背中を押してやれば、彼女たちが後ろめたい気分(きぶん)を味(あじ)わうこともなくなるはずだ。これも人助(ひとだす)けだよ」
「なんか…、あたしの方が後ろめたくなっちゃうんですけど」
「これは仕事だよ。気にする必要(ひつよう)はない。それに、君に惹(ひ)かれるということは、その男の愛は本物じゃなかったということだ。我々は別に、でっち上げをしているわけじゃない」
<つぶやき>もし、こんな商売(しょうばい)が流行(はや)るようになったら…。本物の愛って、何なんでしょ。
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