みけの物語カフェ ブログ版

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0505「しずく16~新しい家族」

2019-04-02 18:29:40 | ブログ連載~しずく

 夜も更(ふ)けた頃(ころ)。廊下(ろうか)を足音を忍(しの)ばせて歩く人影(ひとかげ)があった。人影は玄関(げんかん)まで来ると、靴(くつ)を履(は)こうとしてそこへ座(すわ)り込んだ。その時だ。突然(とつぜん)、玄関の明かりが灯(とも)った。
 明かりの中にいたのは神崎(かんざき)つくね。彼女はビクッとして後ろを振(ふ)り返った。そこに立っていたのは、月島楓(つきしまかえで)。しずくの母親だ。楓は優(やさ)しく微笑(ほほえ)むと、つくねに言った。
「どうしたの? 高校生が出かける時間じゃないわよ」
 つくねは、ばつが悪(わる)そうに俯(うつむ)き加減(かげん)で答えて、「これ以上(いじょう)、迷惑(めいわく)をかけるわけには…」
「いいのよ、そんなこと。あなたはここにいなさい。これからは、ここがあなたの家よ」
 つくねは何だか分からないものがこみ上げてきて、目頭(めがしら)が熱くなった。何でこんな気持ちになるのか…、勝手(かって)に涙(なみだ)が溢(あふ)れてくる。楓はつくねの横に座って、優しく彼女を抱(だ)きしめた。つくねの気持ちが少し落ち着くと、楓は昔(むかし)を懐(なつ)かしむように囁(ささや)いた。
「ほんと、結月(ゆづき)にそっくりね。姉(ねえ)さんも、そんな風によく泣(な)いてたわ」
 つくねは自分の母親の名前を聞いて、思わず楓の顔を見つめて言った。
「どうして…、母のことを。――まさか、叔母(おば)さん…。叔母さんなんですか?」
 楓はつくねの頬(ほお)に手を当てて、涙をうるませた顔でおでこにおでこを押(お)し当てた。
「そうよ。ずっとね、あなたが来るのを待ってたんだから…。会えてよかった。もう、あなたは一人じゃないわ。私たち家族(かぞく)なんだから」
<つぶやき>そうなの? そうすると、しずくとつくねは従姉妹(いとこ)ってことになるんだよね。
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