学校の屋上(おくじょう)に月島(つきしま)しずくと柊(ひいらぎ)あずみの姿(すがた)があった。屋上は一応(いちおう)立入禁止になっていて、生徒(せいと)はもちろん、先生(せんせい)さえ滅多(めった)に上がって来ることはなかった。ここなら誰(だれ)にも邪魔(じゃま)されることはないはずだ。あずみはしずくに強い口調(くちょう)で言った。
「これで分かったでしょ。これはあなた一人の問題(もんだい)じゃないの。あなたの周(まわ)りの人たちを巻(ま)き込まないためにも、あなたにはやらなきゃならないことがある」
しずくは目をそらして、「私…、私にどうしろって言うの。私には…」
「そうね、今のあなたじゃ何の役(やく)にもたたないわ。そんな中途半端(ちゅうとはんぱ)な気持ちじゃ、能力(ちから)をコントロールすることなんか…。あなただって、自分に能力(ちから)があることぐらい――」
「分かってるわよ! でも私には…、そんなのいらない。もう、人から変(へん)な目で見られたくないの。私は、普通(ふつう)の女の子でいたいだけ!」
「いつまで甘(あま)ったれてるの? もう時間はないのよ。敵(てき)はすぐそこまで来てるのに――」
「敵…、敵って何ですか? 私、そんなの知らないわ! 私には…」
「関係(かんけい)ないって言いたいの? あなたも、楓(かえで)おばさんから聞いてるはずよ」
「何で…、お母さんのこと知ってるんですか? 先生は…、いったい何なのよ」
「もういいわ。今日は真っ直(す)ぐ帰りなさい。あなたのお母さんが待ってるわ。――私ね、楓おばさんに助けられたことがあるのよ。もしそれがなかったら、私は死(し)んでたわ」
<つぶやき>先生にも凄絶(せいぜつ)な過去(かこ)があるようです。敵の正体(しょうたい)とは、何者なのでしょうか?
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