みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1226「人間だけじゃない」

2022-04-03 17:30:04 | ブログ短編

 彼女は会社(かいしゃ)のデスクに腰(こし)を下ろすと、ため息(いき)をついた。隣(となり)にいた同僚(どうりょう)が声をかける。
「どうしたんだ? 今日は元気(げんき)がないじゃないか」
「もう、朝からついてないわ。近所(きんじょ)の犬(いぬ)には吠(ほ)えられるし、上からは鳥(とり)の糞(ふん)よ。最悪(さいあく)だわ」
「それは災難(さいなん)だったなぁ。お前、何かしたんじゃないのか? 例(たと)えば、その犬の前で、飼(か)い主(ぬし)の悪口(わるぐち)を言ったりとか…」
「えっ、どうして知ってるの? まさか、あたしのこと見てたんじゃ…」
「俺(おれ)はそんなに暇(ひま)じゃない。――そりゃ犬だって怒(おこ)るだろ。ご主人(しゅじん)の悪口を言われたらな」
「そんなこと…。犬に分かるわけないでしょ。バカなこと言わないでよ」
「犬だって知能(ちのう)はあるんだ。人間(にんげん)の言葉(ことば)だってちゃんと理解(りかい)してるんだぞ」
「そ、そんな…。じゃあ、鳥の糞は? あたし、鳥には何もしてないわよ」
「それは…偶然(ぐうぜん)だろ。お前が、鈍(どん)くさいだけだ」
 その時、彼女のデスクに猫(ねこ)が飛(と)び乗(の)ってきた。その猫は、彼女の顔を見て威嚇(いかく)の声をあげる。彼女は驚(おどろ)いて、椅子(いす)から転(ころ)げ落ちてしまった。同僚はその猫を優(やさ)しく抱(だ)きあげる。
 彼女は起き上がると、「あなたの猫なの? 何で会社に連(つ)れて来るのよ」
「ちょっと具合(ぐあい)が悪(わる)そうだったから、昼休(ひるやす)みに病院(びょういん)へ行こうと思ってるんだ」
 猫はまた、彼女を睨(にら)みつけて〈フーッ!〉と威嚇した。同僚は彼女に言った。
「お前、猫にも嫌(きら)われてんのか?」
<つぶやき>この猫は、メスなのかもしれません。彼女には責任(せきにん)はないと思いますけど…。
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