みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1227「人生のシナリオ」

2022-04-05 17:32:58 | ブログ短編

 彼は念願(ねんがん)のマイホームを手に入れた。住宅(じゅうたく)ローンを組(く)んだとき足が震(ふる)えたし、これからの返済(へんさい)のことを考えると、身(み)が引き締(し)まる思いだった。
 家族(かぞく)と新居(しんきょ)へ引っ越したときは、今から新しい生活(せいかつ)が始まるんだなと、思わずうるうるとしてしまった。これから、この家でいろんなドラマが繰(く)り広げられるんだろうなぁ。子供(こども)たちも大きくなれば、進学(しんがく)だの就職(しゅうしょく)だのと…。そうだ。家を出て一人暮(ぐ)らしを始めるかもしれない。そしたら、子供部屋は自分(じぶん)の書斎(しょさい)にリフォームしよう。――これはずいぶん先(さき)の話だと気づいて、彼は含(ふく)み笑(わら)いをした。
 ふと、彼の心に妙(みょう)なイメージがわいてきた。仕事(しごと)に打ち込みすぎて、家庭(かてい)を顧(かえり)みなくなった自分がいて…。そして、子供が不良(ふりょう)になって家庭内暴力(ぼうりょく)を繰り返し…。妻(つま)とも不仲(ふなか)になり、とうとう家庭崩壊(ほうかい)――。妻と離婚(りこん)した後は、不良になった子供が家を飛び出して、一人になってしまう。そして、最後(さいご)に迎(むか)えるのは孤独死(こどくし)だ。
 彼はフッと息(いき)を吐(は)いて呟(つぶや)いた。「よし。ここまで最悪(さいあく)のシナリオをシミュレーションしたんだから、そうならないようにしないとなぁ。まずは仕事より家庭を優先(ゆうせん)しよう」
 小さな子供たちが呼(よ)びに来た。彼は子供たちと手をつないで新居に入って行く。さて、この家族の未来(みらい)はどうなっていくのでしょう。幸(さち)多きことを願(ねが)います。
<つぶやき>人生(じんせい)、いろんなことが起きるんでしょうねぇ。思いも寄(よ)らないこともある。
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