大小さまざまなものがエリスめがけて飛(と)んで行く。エリスは瞬間移動(しゅんかんいどう)で次々(つぎつぎ)とかわしていく。そして、水木涼(みずきりょう)のすぐ目の前に姿(すがた)を現した。完全(かんぜん)に間合(まあ)いを取られてしまった。エリスは不気味(ぶきみ)な笑(え)みを浮(う)かべて、涼の胸(むね)をめがけてナイフを振(ふ)り下ろした。
まさにその時だ。エリスは呻(うめ)き声をあげてその場から離(はな)れた。血(ち)がぽたぽたと床(ゆか)に落ちる。ナイフを持ったエリスの手にペンが突(つ)き刺(さ)さっていた。エリスはナイフを落とすと、激(はげ)しい怒(いか)りの表情(ひょうじょう)でペンを引き抜(ぬ)いて投(な)げ捨(す)てた。涼はすぐさま駆(か)け出して、エリスに攻撃(こうげき)を仕掛(しか)けた。だが、エリスは姿を消(け)して離れた場所(ばしょ)へ移動する。
涼は向き直(なお)ると息(いき)を整(ととの)えて言った。「大きなものに気を取られて気づかなかったでしょ。私は、そう簡単(かんたん)には倒(たお)せないわよ。そのつもりでかかってきなさいよ!」
突然(とつぜん)、エリスが笑(わら)い出した。そして、まるで勝(か)ち誇(ほこ)ったように言った。
「あなた、バカなの? あなたは勝てないって言ったでしょ」
エリスの回りに次々と敵(てき)が姿を現した。二十人はいるだろうか、みんな能力者(のうりょくしゃ)だ。その半分(はんぶん)が、アキや貴志(たかし)がいる方へ向かって行く。涼は思わず叫(さけ)んだ。「卑怯(ひきょう)だぞ!」
エリスは、「何を言ってるの? これは戦(たたか)いよ。ルールなんてないの」
涼は周(まわ)りを取り囲(かこ)まれた。飛べない涼は、アキたちを助(たす)けに行くこともでない。涼は覚悟(かくご)を決めたように呟(つぶや)いた。「落ち着いて…。いま、できることをやるだけよ」
<つぶやき>涼はこのままやられてしまうのか。それとも、起死回生(きしかいせい)の一手(いって)はあるのか?
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