みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0425「妻の勘」

2019-01-04 19:05:17 | ブログ短編

 さっきから妻(つま)の視線(しせん)をビリビリと感じている。家事(かじ)の合間(あいま)にチラチラと僕(ぼく)の方をうかがっているようで、テレビを見ていても何だか落ち着かない。でも、わざわざこっちから地雷(じらい)を踏(ふ)みに行くような行動(こうどう)は自殺行為(じさつこうい)だ。だから、平静(へいせい)を装(よそお)って気づかない振(ふ)りをしていた。
 私の妻は妙(みょう)に勘(かん)がいいところがある。まさか、あのことがバレたとか…。いや、そんなはずはない。だって、あれはちゃんと見つからない場所に隠(かく)してあるし――。でも、後で確(たし)かめておかないと。
 僕は、やましいことをしているわけではない。ただ、この前の誕生日(たんじょうび)に、会社の女の子からプレゼントをもらっただけだ。別に、彼女とは特別(とくべつ)な関係(かんけい)でもないし、ただの会社の同僚(どうりょう)である。でも、私の妻は変に勘(かん)ぐるところがあるから、内緒(ないしょ)にしておいた方がいいかなって…。これも、妻への愛情(あいじょう)である。
 また妻の視線が僕をとらえた。妻は家事の手を止めると、僕の方へ近づいて来る。何だ、何だ、これは…。僕は背筋(せすじ)に冷(つめ)たいものが走った。妻は、僕の横に座る。無言(むごん)だ。何か言ってくれよ。僕は妻と視線を合わせないように、テレビ画面(がめん)から目を離(はな)さない。もし、妻と目が合ったら、それで最後(さいご)だ。その先(さき)に待っているのは、考えただけでも…。
 妻は僕の耳元(みみもと)で囁(ささや)いた。「ねえ、あなた。あたし、欲(ほ)しいものがあるんだけど…」
<つぶやき>これはどういうことだ。バレてるのか、それともただのおねだりなのかな?
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