みけの物語カフェ ブログ版

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0110「宇宙家族」

2017-11-28 18:38:36 | ブログ短編

 山田(やまだ)家の面々(めんめん)は、緊張(きんちょう)した面持(おもも)ちで管制室(かんせいしつ)からの指示(しじ)を待っていた。操縦席(そうじゅうせき)にはパパが、その横には計器(けいき)を見つめるママ。後ろには二人の子供たちが、こわばった顔(かお)で座(すわ)っていた。窓(まど)の外には火星(かせい)が迫(せま)り、いよいよ火星着陸(ちゃくりく)という最大(さいだい)のミッションを迎(むか)えようとしていた。
 管制室からの指示はGO。パパの操作(そうさ)で宇宙船(うちゅうせん)は着陸態勢(たいせい)に入った。もうこれで、中止(ちゅうし)することは出来ない。あとは、成功(せいこう)を祈(いの)るだけだ。もし成功すれば、人類(じんるい)が始めて火星に足を踏(ふ)み入れることになる。
 宇宙船はゆっくりと降下(こうか)していった。地面(じめん)がどんどん近づいて来る。そして、ついにその時がやってきた。十カ月もの長い時間、待ち続けた瞬間(しゅんかん)だ。計器で着地(ちゃくち)したことを確認(かくにん)すると、ママはパパの手を優(やさ)しくつかんだ。子供たちも手をのばす。家族(かぞく)は、この快挙(かいきょ)を静(しず)かにかみしめた。
 管制室に着陸の成功を知らせると、宇宙船に故障(こしょう)がないかチェックをすませた。次にすることは、船外(せんがい)での作業(さぎょう)になる。みんなは宇宙服(うちゅうふく)を着てハッチの前に立った。パパがゆっくりとハッチを開ける。そして、目の前には写真(しゃしん)で見た火星の風景(ふうけい)が…あるはずだった。
「やあ、おめでとう」赤ら顔の男がパパに近づき握手(あくしゅ)を求(もと)めて言った。「これで、火星旅行(りょこう)のシミュレーションは終了(しゅうりょう)です。貴重(きちょう)なデータをとることが出来ました。ありがとう」
「えっ! そんなこと聞いてないよ。ここは火星じゃないのか?」
<つぶやき>残念(ざんねん)でしたね。でも、火星旅行の夢(ゆめ)がかなうのは、もうすぐかもしれません。
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