「なあ、何か怒(おこ)ってないか?」良太(りようた)は恵里香(えりか)の顔を覗(のぞ)き込んで言った。
「別に、怒ってなんかないわよ」恵里香は顔をそむけるように答(こた)える。
「いや、何かあっただろ。俺(おれ)でよかったら、話し聞いてやるぞ」
「別に、話すことなんかないわよ。もう、ほっといて」
良太は恵里香が行こうとするのをとめて、「ほっとけないだろ。俺たち友達(ともだち)じゃないか」
「……。だから、いいって言ってるでしょ。もう…、女とチャラチャラしてるくせに」
「えっ、何だよそれ? 誰(だれ)のことだ?」
「あなたよ!」恵里香は思わず言ってしまった。もうこうなったらハッキリさせようと彼女は決めて、「昨日、奇麗(きれい)な女の子と歩いてたでしょ。あたし、見てたんだから」
「ああ、あいつか」良太にも心当(こころあ)たりがあるようだ。「別にいいだろ。俺が誰と歩いてたって。何でそんなことで怒るんだよ」
「何でって…。だから、あたしは怒ってなんかいません」
「いや、怒ってるね」良太は恵里香の頬(ほお)に両手を当てて、「この顔は怒ってるだろ」
「もう、何するのよ」恵里香は良太の手を振りはらい、「あたしたちそんな関係(かんけい)じゃ…」
「あいつは、俺の従妹(いとこ)だよ。お前が思ってるような奴(やつ)じゃないから。心配(しんぱい)すんな」
「えっ、そうなの?」恵里香は、じわじわと恥(は)ずかしさがわきあがり顔を赤くした。
<つぶやき>恋の始まりの、ちょっと切なくじれったい。気持ちを伝えてスッキリさせよ。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます