みちくさ茶屋

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読書記録2006-20

2006-08-15 | book
46「西の魔女が死んだ」梨木香歩 充実度★★★★★
久々に出た~~! 五ツ星!
ずいぶん前から気になっていた本で、友人に貸してもらった。
その友人が「なんだかほっとする本だよ」と言っていたのだが、
私はほっとするどころか、がんがん元気の出る話だった。
私も魔女になるぞ! オー!

主人公「まい」は、13歳の女の子。
デリケートさゆえに傷つきやすくて、学校は彼女にとって
「苦痛を与える場所でしかない」。
親元を離れ、おばあちゃんとの共同生活でいろんなことを知り、学び、
強くなっていくまいの成長が描かれている。

ラストは泣けたなぁ……。しばらく目を閉じて陶酔してしまった。
なんといっても、「西の魔女」であるおばあちゃんがすてき。
最初は、孫のまいに対してずっと敬語なのがなんだか違和感があったけど、
イギリス人を思い浮かべながら読んだらすぐにしっくりきた。
魔女のおばあちゃんというと「~なのさ」とか言いそうなのに、
あえて「~ですよ」というのが品があっていい。
大事なことがいっぱい書いてある本だった。

たとえば、野菜を自分で収穫したり、ジャムを作ったり、
自然のめぐみをいっぱい受けながらの質素な生活というのもすごく
感動的なのだが、この小説は、それだけにとどまらない。
その反対側にある、「コンピューターやコピーの情報の山、
流れるファクスの川」を決して否定していないのだ。
まいが、そんな現実社会の中で、しっかり自分を持ち、そして保ち、
行くべき道を見失わないで生きていくために、
山での魔女修行が必要だったのだと思う。

おばあちゃんがまいに教えてくれたさまざまなことは、
母から娘へ伝授するのはたぶん近すぎて難しくて、
「おばあちゃんと孫娘」だからいいんだなあ。
石飛びの同性だからこそわかりあえるというか。

それにしても、おばあちゃんがたまに、「江原さん?」っていうか
「美輪さん!?」というようなことを言っていた。
あの手の人たちは、みんなおんなじこと言うんだなあと思った。

蛇足になるけど、「アルケミスト」という小説があって、
ノリ的にはすごく近いものがあるような気がした。
羊飼いの少年が宝を探して旅に出る話なのだが、
あれを読んだときも、「私も旅に出るぞ! オー!」と思ったんだよな。
少年のための「アルケミスト」、少女のための「西魔女」という感じです。
もちろん、少年じゃなくても少女じゃなくても、どっちもおすすめです。