3月20日に「神奈川新聞の記事」として、中居屋重兵衛と堅曹さんのつながりを示唆した記事をブログに載せました。
横浜市中区本町2丁目東京都民銀行脇にある「中居屋重兵衛店跡」の碑
あれから、中居屋重兵衛についての本を読んでみました。
まず、『新版 炎の生糸商 中居屋重兵衛』 萩原 進著 有隣新書 1994年
群馬県の郷土史家、萩原進氏が長年かけて調査した史料に基づく中居屋重兵衛像です。
残されている史料が少ないのと、亡くなった状況もはっきりしない謎の多い人物ゆえ、長年調査されていたご子孫の方々と一緒に、当時の文献、関わりのある人物の史料などから丹念に一生を追い、考察をしています。
これは昭和53年(1978)の初版に、その後、新たにわかった文献、史料を加えて平成6年(1994)に出された新版です。
郷土史家として、群馬県内では名高い萩原氏の30年にわたるライフワークであったとおもいます。
史実のみを追っているので読みにくいかとおもいましたが、そんなことはなく、とてもわかりやすい文章でした。
読んでいて、実に力強く、真実を知りたいというご子孫と萩原氏の気迫を感じました。
粘り強い調査と思いが結実した本です。
こちらは、新聞記事を書いていた祖父江一郎氏の小説『幕末史伝 中居屋炎上』 集英社 2002年 です。
小説として、中居屋重兵衛の一生を書いています。主に、成人して江戸に出てきて、商人として活躍しはじめる頃から、謎の晩年までが描かれています。
彼がどうして横浜で一番の生糸商人となりえたのか、そこにいたる経緯の、史実とフィクションを織り交ぜての物語です。
驚いたことに、この小説に堅曹さんが登場しています!
作者の祖父江一郎氏は新聞記事でも堅曹さんのことをかなり買っていましたが、とうとう小説に元服前の少年時代の堅曹さんから登場させてしまいました。
初めて読んだときは、え~っていう感じで、驚いてしまいました。
中居屋重兵衛の下使いとして、あの坂本竜馬らと一緒に活躍し、重兵衛の死後、彼の思いを引継ぎ日本の生糸業の成功を導いた人物として描かれています。
二人が生前に会ったという史実はどちらにも残ってないけれど、考えられないこともない。
祖父江氏にしてみれば、中居屋重兵衛がやろうとしていた、そして実際に幕末の一時期、大成功を収めた生糸商人の商才と、幕府とも関わりをもつスケールの大きな国益を考えた貿易のノウハウに、その後一番近いことをしてみせたのが、速水堅曹だったということでしょう。
小説ですので想像の世界の話ですが、なんともワクワクさせてくれた本でした。
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