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野村進『救急精神病棟』

2008-05-21 15:57:59 | ノンジャンル
 野村進さんが'03年に出した「救急精神病棟」を読みました。自分も精神病院に3ヶ月ほど入院したことがあり、めったに味わえない体験をしていたので、前から精神病院に関するルポルタージュを読んでみたいと思っていたのが、読んだ動機です。
 本の内容は日本で、あるいは世界で唯一の24時間対応の精神科救急を行なっている千葉県精神科医療センターに関するルポルタージュです。間宮という架空の研修医に著者がなったという設定で、病院内で起こることを、精神科の歴史的背景を含めて、体験していく構造になっています。
 先ず驚いたのは、各国の精神科の平均入院日数です。千葉県精神科医療センターでは全国の367.5日を大幅に下回る38.4日の実績を出しているのですが、これが欧米になると、アメリカが8日、オーストラリアが13日、イタリアが15日、カナダが22日、フィンランドが41日といった具合で、信じられない短さになっています。私の場合、最初の1ヶ月は入院生活に慣れるのに使われ、実際に精神状態が上向いたのはそれよりも後だったように記憶しています。欧米各国でなぜこれまでに入院日数を短くできるのか、謎です。ただ、日本では平均で約1年の入院日数というのは、非常に長期に渡って入院している人がいるせいでもあり、昔からの「キチガイは精神病院に一生隔離しておけばいい」という思想がまだ残っているせいだ、とも書いてありました。実際に私が通院している精神病院にも長期入院患者が相当数います。
 そして日本の入院患者の4分の1が精神病患者で、おまけに医療費全体に精神科が占める割合はわずか6%余りにしかすぎない、つまりそれだけ精神科の医療費が安いという事実を知りました。そこから波及していることかもしれませんが、精神科以外での病院では患者16人につき一人の医師がいるのに対し、精神科では患者40人に1人の医師しかいない、というのです。
 ただ、こうした現状は急速に改善されているのは事実で、この本が書かれた5年前はキチガイの代名詞という意味もあった「分裂病」という言葉が使われていましたが、現在は「統合失調症」という名前で呼ばれるようになり、「分裂病」という言葉はほとんど使われなくなりました。また、5年前当時は数えるほどしかなかった、退院後に患者さんが集う場所であるデイケアを設置する病院も増え、大きな精神科の病院はほとんどに設置されるようになっています。
 この本には実際の患者さんのケースが数多く書かれていて、それだけでもとても興味深く読めました。精神病に少しでも関心のある方にはオススメです。

伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』

2008-05-20 15:25:08 | ノンジャンル
 今年の本屋大賞を受賞した伊坂幸太郎氏の「ゴールデンスランバー」を読みました。
 金田新首相が地元仙台をパレードしていると、ラジコンヘリが近づいて来て爆発し、金田首相は暗殺されます。その直前、妻のパチンコ狂いで多重債務者となり、借金を肩代わりしてやるから言う通りにしろと言われた森田は大学時代の知り合いの青柳を暗殺現場の近くまで車で連れてゆき、「これは罠で、お前は第二のオズワルドにされる危険があるから、とにかく逃げろ」と言います。青柳が車を出ると、車が爆発し、森田は爆死します。マスコミでは、警察が容疑者を青柳と特定したと報道され、でっちあげの証拠が次々に報道されます。青柳は大学時代の知り合いや元同僚、警察を目の仇にする連続通り魔の三浦たちに助けられ、逃げ通します。そして、自分の偽者が存在し、その命が危なくなっていることを知って、すべてがでっち上げであることを皆に知ってもらうため、マスコミとコンタクトを取り、場所と時間を指定して、テレビの生中継の中、携帯を使って真相をマスコミに語り、それをライブ放送してもらうことにします。自分のせいでケガした後輩の入院した病院で知り合った男から下水管を通って、現場に行きますが、携帯は警察に無力化され、計画は失敗に終わったことが分かります。その瞬間、盛大に花火が打ち上げられ、警察もマスコミも花火に気を取られている間に、近くのマンホールからまた下水道に入り、逃げることに成功し、下水道を出ると、そこには以前宅配をしていた時に暴漢から助けてあげた元アイドルの娘が車で待っていてくれました。青柳は顔に整形を施し、違う人間として生きて行くことを選びます。自分の偽者はしばらくして水死体となって発見され、世間では青柳は死んだことになります。

 青柳がでっちあげの犯人にされた段階で、当然最後には真犯人との対決になるか、と思いきや、彼が逃げるだけのストーリーでした。本筋とは関係ない話が多く、冗長な印象を与えています。ラストはちょっと心暖かい場面で終わるのですが、それにしても青柳のこれからの人生を思うと暗澹たる気持ちにならざるを得ません。この本が本年度の本屋大賞というのは、どうかな、と思いました。その前の年が佐藤多佳子さんの「一瞬の風になれ」という、めちゃめちゃさわやかで元気の出る素晴らしい小説だっただけに、今年との落差が目立ってしまいます。伊坂幸太郎氏の小説は以前にも一冊読んでいましたが、これもあまり好きにはなれませんでした。本屋大賞を取ったからといって、過剰な期待を持って読むと、後悔するかもしれません。が、とりあえず、ご自分で読んで判断されたら、いかがでしょうか?

東大、CO2排出『都内一』

2008-05-19 15:24:04 | ノンジャンル
 昨日の朝日新聞に'06年の業務部門での都内のCO2排出量ベステトテンが出ていました。1位は9万4782トンで断トツで多い東京大学本郷キャンパス、2位は羽田空港で8万439トン、3位はサンシャインシティで6万4816トン、4位は六本木ヒルズ森タワーで6万1458トン、5位は恵比寿ガーデンプレイスで5万9624トン、6位は日本放送協会で4万6660トン、7位は防衛省市ヶ谷庁舎の4万6593トン、8位はホテルニューオータニの4万6438トン、9位は東京ドームの4万6042トン、10位がNTTドコモ品川ビルの4万5526トン、ということです。どれも敷地面積が大きく、多くの人が利用する施設です。
 「都は6月、全国に先駆けて事業所にCO2削減を義務づけるための条例改正を予定し、違反者への罰則も検討している。」とのことです。違反者の罰則、いいですね。今までは目標を設定するだけで後は業者まかせという無責任な行政指導でしかなく、あまり効果が期待できませんでしたが、厳しい罰則を作れば、いやがおうにもCO2削減に取り組んでくれるでしょう。
 さて、このランキングで悩んでいるのが東大です。都内一という汚名を返上するため、やっと重い腰をあげ、2030年までに最大50%カットという目標を掲げたのはいいのですが、なかなか妙案が浮かばないようです。電気をなるべく消し、ボイラーには断熱材を巻き、という原始的なことしかなされていないようです。東大のCO2排出源の79%が電力消費で、うち研究に必要な実験機器は約3割、空調と照明でほぼ半分が使われていて、省エネ設計がなされていない年代物の設備が多い、とのことです。そこで手始めに付属病院に約20年前に取り付けられたクーラー5台のうち1台を1億円以上かけて新調することにしました。これだけで900トン以上も削減できるそうです。
 設備の更新にかかる費用は全体で31億円余りで、その結果、年間のCO2排出量は12~13%減らすことができ、電気代も年間で約6億円節約できるので、5年で元がとれる計算になります。日常の節電を加えれば、12年度までには15%削減できるということです。元がとれるのだったら、病院のクーラーも1台と言わず、5台全部新調するべきでしょうし、何でいままで何もしてこなかったのか、疑問です。'06年にアメリカのエール大学に視察にいった教授が'、学長が先頭に立ってCO2削減など環境負荷を減らす対策に打ち込む姿を見て、「うちもやらなきゃ」と思ったということからも分かるように、学内の認識が圧倒的に低いことが問題なのです。
 東大だけでなく、上位ベストテンに入った施設は、直ちにアクションを起こしてもらいたいと思います。また、我々消費者も上位の施設が削減策を提示するまでは、利用を控えるなどの行動を起こすべきでしょう。金があるうちは、企業は動きません。企業にCO2の削減を直ちに行なわせることができるのは、罰則を含めた行政の対応と、私たち消費者の消費行動なのです!

エリック・ロメール監督『飛行士の妻』

2008-05-18 15:27:30 | ノンジャンル
 スカパーの260チャンネル「洋画★シネフィル・イマジカ」で、エリック・ロメール監督の'80年作品「飛行士の妻」を再見しました。
 20才の勤労学生フランソワは夜勤明けに5才年上の恋人アンヌ(マリ・リヴィエール)を訪ねて、彼女の元恋人の飛行士・クリスチャンと一緒にいるのを目撃します。クリスチャンは妻がパリに住むようになり、子供もできるので、これからはあまり会えないと言います。フランソワは職場のアンヌに電話しますが、取次いでもらえません。フランソワはアンヌにつきまとい、飛行士との仲を聞きますが、彼女は自分を信じて、としか言いません。そしてフランソワはカフェで別の女性と一緒の飛行士を見かけ、尾行しますが、15才の女子学生リュシーに怪しまれて、自分も尾行され、ついには二人は話を始めます。天真爛漫なリュシーは面白がって話を聞き出しますが、最後にはフランソワは本当の話をし、2人で尾行を再会します。アパルトメントに入った飛行士たちを向かいのカフェで監視しながらおしゃべりに興じる二人。リュシーはその後何か分かったら知らせて、と自分の住所をフランソワに教えて帰ります。そしてアパルトマンから出て来た飛行士たちは車でどこかへ行ってしまいます。その日、アンヌが家に帰ると、フランソワが訪ねて来て、君に十分会えないから夜勤をやめ、学校も辞めると言うと、アンヌはそんな脅しはきかない、と言います。話をしているうちに飛行士がアンヌに嘘をついていることが分かり、今日尾行した相手も飛行士の妻ではないことが分かります。リュシーにそのことを書いたハガキを持って行くと、彼女は家の前で男と熱烈にキスをしていました。フランソワはハガキに切手を貼って投函すると、雑踏の中に消えて行きました。

 公園で飛行士たちを尾行するところは覚えていました。が、それ以外の部分はほとんど忘れていました。ほとんどがアンヌとフランソワの痴話げんかで、自意識が強く神経質な感じがするアンヌが好きになれませんでしたが、リュシーの少女っぽい振るまいは楽しめました。(それにしても、彼女が15才とはとても思えませんでした。日本ならどう見ても20才ぐらいには見えます。)オールロケーション、アイリスインとアイシルアウトの使用など、ヌーヴェル・ヴァーグの一翼を担ったエリック・ロメールらしさがよく出ていました。たまにはこんな映画もいいんじゃないでしょうか?

自殺を考えた人が2割!

2008-05-17 18:55:58 | ノンジャンル
 今日の朝日新聞の夕刊に「『自殺考えた』2割」という見出しの小さな記事が載っていました。
 短い記事なので、全文引用しようと思います。「年間3万人以上にのぼる自殺について、政府が全国規模で初の本格的な意識調査を実施したところ、「本気で自殺を考えたことがある」と答えた人が全体の約2割にのぼったことが16日、明らかになった。年代別では、30代が28%で最も高く、続いて20代が25%だった。
 内閣府が今年2~3月、20才以上の3千人を対象にアンケートし、1808人から回答を得た。『今まで本気で自殺を考えたことがあるか』との問いに『ある』と答えたのは19%(男性16%、女性22%)。そのうち、だれにも相談しなかった人は6割に達した。職業別では、パートやアルバイトが26%と高かった。
 『身の回りに自殺した人がいる』と答えた人は35%。インターネットの自殺サイトを規制すべきだと考える人は76%だった。
 内閣府自殺対策推進室は『さまざまな経験をした年配の世代より、若い世代で自殺を考える人が多いのは意外だった』としている。」
 以上が記事です。ここにはいろんな問題が提起されていると思います。まず、5人に1人は自殺を考えたことがあること。これを身近なもので置き換えれば、1クラス40人のうち8人は自殺を考えたことがある、ということです。自殺というのは、とてもむごいもので、自殺未遂を2度経験している私も、あの気持ちには二度となりたくないほど、つらく苦しいものです。そうした精神状態に追い込まれた人がこれだけいるという社会は異常です。理由ははっきりしています。コミュニティの崩壊です。それは自殺について相談した人が4割しかいないことからも明白です。
 そしてパート、アルバイトの人に自殺を考えた人が多いというのは、経済的に追い込まれたことがある、もしくは孤独にアルバイトやパートをしている人が多い、ということを表していると思います。
 そして最後の内閣府自殺対策推進室のコメント。若い人に自殺を考える人が多いのは分かり切ったことじゃないですか。年齢の高い人はいろんな経験を通じて多くの価値観と触れあい、大きな世界の中で生きてるのに対し、若い人は経験も限られ、狭い価値観の中で生きていて苦しんでいる人が多い、というのは常識でしょう。それを「意外だった」というのですから、こんな人たちに自殺を減らすことを期待することはできそうもない、と思いました。
 繰り返しになりますが、自殺というのは、本当につらく苦しく、また悲しいものです。少しでも自殺を減らす努力を私たちもしていきたいと思っています。