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劇団ひとり『そのノブは心の扉』

2008-05-31 16:05:59 | ノンジャンル
 約30年前にここ厚木市に引越して来た時、我が家の周りには水田が広がり、この季節になると夜うるさいほどに蛙の鳴き声が聞こえていました。それがここ数年、水田は住宅地に代わり、残った水田でも農薬を使うようになって、蛙の声が全く聞こえなくなり淋しい思いをしていました。ところが、昨日雨戸を閉めようとした時、よ~く耳を澄ましてみると‥‥懐かしい蛙の鳴き声が方々から聞こえてきたのです! 私は嬉しくなりました。徐々に環境が改善されてきているようです。

 さて、劇団ひとりの初エッセイ集「そのノブは心の扉」を読みました。「週刊文春」'06年8月31日号~'08年2月28日号に連載されていたコラムに大幅に加筆改訂した34編のエッセイからなっています。
 まず一編目の「無償の愛」から疑問に思いました。筆者は無償の愛を実行するため、そこらへんに落ちている石を一つ拾い、それに名前をつけて常に持ち歩き、話しかけたりするのですが、そうした事を文章に書いてしまった段階で「無償」ではなくなり、原稿料をもたらす「有償の石」になっていることに私は気付きました。まあ、そんなことより石に名前をつけたりする筆者の行動と思考を楽しめばいいのでしょうが‥‥。
 あと、面白いもので「ちんちんビヨヨーン」というのがありました。筆者はすごい怖がりで、未だに夜1人でトイレに行けません。そんな時、「ちんちんビヨヨーン」という言葉を何度もリフレーンして、オバケ達のやる気を失くさせる、というのです。しかし、この言葉は今ではオバケに関係のない局面でも不安になると脳が条件反射的にこの言葉を求めるようになり、仕事に失敗した帰り道に夜空を見上げて「ちんちんビヨヨーン」と呟くようになってしまった、という話。
 また、催眠療法を受けにいった話も面白いものでした。先生と名乗るおばさんが、著者が答えに躊躇すると自分の答えを強要し、自分勝手にどんどん話を作っていって、著者がやっと催眠状態に入ったと思ったら、起こされて、「あんたイビキかいて寝てたわよ」を言われ、半分だけ寝るなんて器用なマネはできないと言うと、「あと5、6回通えば出来るようになるわよ」と言われたという話です。
 他はこれといって突出して面白いものはありませんでした。この著者の特徴として、多くの文章の最後にオチがある、ということがあります。これは芸人の性なのでしょう。また、妄想、思い入れ、義務感が強く、行動に移して、後悔し、意思の弱さを嘆くといったパターンが多いのも特徴でしょう。
 小説が面白かったので、もう少し期待していたのですが、芸人の書いたエッセイとして見れば合格点といった感じでした。その程度で満足していただけるようであれば、オススメです。