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高橋源一郎『これで日本は大丈夫 正義の見方?』

2010-06-27 18:32:00 | ノンジャンル
 内田樹さんの『ためらいの倫理学』の中で言及されていた、高橋源一郎さんの'95年作品『これで日本は大丈夫 正義の見方?』を読みました。'94年1月20日号から'95年11月16日号までの『週刊アサヒ芸能』に連載されたエッセイが収められている本です。
 自社政権が誕生し、また阪神大震災、地下鉄サリン事件などが起こった時期に書かれたもので、時事ネタに対して「正義の味方」的視点から論ずるという趣旨のエッセイなので、そうした事件に対する「しごくまっとうな」意見が述べられているのですが、そこは源一郎さんだけに、軽妙洒脱、楽しく読ませてくれます。特に、「'94年に元気のあった男性が約2名ほどおられた。」と書かれていて、その2名というのが「『巨人人気』をはじめて打ち破った」イチロー選手と「政界を牛耳っていた『自民党政権』を打ち破った」小沢一郎選手(?)であるという記述、悪魔という名前を親がつけようとした問題で、ワイドショーのスタッフはなぜデーモン小暮のところにインタビューに行かないのかという指摘、チャーミングな名前がうけるという文脈で、吉本ばななに倣って自ら「高橋みかん」という名前はどうかという提案、赤ちゃん雑誌における「パパ・ママ&赤ちゃん 春のファッション特集 春のおんもカジュアル」や「明るい肌色を作りながら、シミ・ソバカスをカバーする春の『おんも』メイク」という見出しへの注目、などにはそのセンスの良さが伺えますし、'95年の段階で、国民年金は信用できるのだろうか、と疑問と呈していたり、国家の倒産にまで言及しているのは、先見の明があると言うしかないでしょう。
 15年という歳月が経っていても、少しも古びていない文章です。気軽に読める「常識本」をお探しの方にオススメです。