gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

中野美代子『ザナドゥーへの道』

2010-06-03 18:15:00 | ノンジャンル
 宮田珠己さんが本『スットコランド日記』の中で言及されていた中野美代子さんの、'09年作品であり今アマゾンで最も売れている中野さんの本『ザナドゥーへの道』を読みました。
 「1 亡国の大使 ミカエル・ボイム」は、17世紀後半、ヴェトナムの山中で千年以上前に教皇からは異端とされていたネストリウス派の宣教師アペロンが中国で布教していた証拠を見い出す話、「2 碑文のなかの旅人 景教僧アペロン」は、唐の皇帝から許され生涯を中国での布教で終えたアペロンが、インドから高僧・玄奘が帰るという碑文を発見した話、「3 敦煌蔵経洞 ポール・ペリオ」は、20世紀初頭に現中国新疆ウイグル自治区の洞窟で千年以上前の様々な言語で書かれた生の原典を山のように発見し、夢枕に玄奘が立ったというペリオの話、「4 南海の兄弟島 ギュスターヴ・ヴィオー」は、ペリオと同時期、メコン川河口近くのコンドル島に着任した仏海軍医ヴィオーの話、「5 探索島の樹 ピーター・ディロン船長」は、18世紀後半にオーストラリア東岸で消息を断ったフランス艦隊の痕跡をついに見つけた英国人ディロンの話、「6 異教徒たちの帝国 ギョーム・ド・ルブルク」は、13世紀中頃、ルイ9世の使節で訪れていたフランシスコ派修道士ルブルクが元で行われた宗教論争会議の様子を記録していたという話、「7 月の上からペキンを見れば ミラ・チョ・チョ・ラスモ」は、デフォーが18世紀初頭に書いた本の中で、月からやってきたという二千年前のシナの副長官が月から見た中国を蔑視していたという話、「8 肘掛け椅子の風景画家 トマス・アローム」は、18世紀末、英大使マカートニーの清国第一回使節団に同行した画家アレグザンダーが聞き書きで描いた大使の皇帝謁見の絵を見たアロームが、19世紀中頃に画集「チャイナ・イラストレイテッド」を出版しベストセラーになった話、「9 ザイトン双子塔 ポルティーネのオドリコ」は、14世紀初め、中国を訪れたオドリコ修道士が双子塔の浮彫で見たのが玄奘と孫悟空であり、それはカシミールにあったとされる伝説のキリスト教国家の王プレスター・ジョンその人だったと気付く話、「10 二都物語 プレスター・ジョン」は、12世紀東西トルキスタンに西遼を建国したグル・ハーンが実はプレスター・ジョンだったという話、「11 エトナ熔岩流 石工のジューリオ」は、12世紀後半、エトナ熔岩流で故郷を追われ、洞窟教会を作る石工となったジューリオが、恩人の修道士の命で十字軍に加わり、捕えられてムスリムに転向させられ、モンゴルによるムスリム虐殺を奇跡的に生き延び、モンゴルの都へと招かれる話、「12 シカゴ自然史博物館 ベルトルト・ラウファー」は、19世紀後半、ニューヨークに創設されたアメリカ自然史博物館が派遣した極東調査隊を率いたラウファーが残した東洋についての膨大な動物・植物・鉱物の文化的論考の話です。
 どれも東洋に魅せられた西洋人たちの話ですが、中野さんの文献学的知識の豊富さに驚くとともに、奇想天外な「事実」に魅せられました。中野さんが紹介していたラウファーの著書『サイと一角獣』『キリン伝来考』『鵜飼―中国と日本』『飛行の古代史』『シナの鞦韆(ぶらんこ)』も読んでみたいと思います。ロマンあふれる歴史の話を読みたい方にはオススメです。