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齋藤寅次郎監督『泣き笑い土俵入り』

2010-06-14 20:14:00 | ノンジャンル
 齋藤寅次郎監督の'56年作品『泣き笑い土俵入り』をスカパーの東映チャンネルで見ました。
 胡蝶屋の幸衛門(アチャコ)は大黒屋(山茶花究)に温泉が出る山中の分譲地を買うよう勧められ、駕篭に揺られて見に来ると、道端の男はひもを引き、それは茶屋へと引かれていて、合図を受けた茶屋の主人はお腹を空かせて動けないという松太郎に無理矢理命令して湯を沸せます。湯は懸け樋で茶屋に通じていて、幸衛門はまんまと騙されて温泉が湧いていると勘違いし、大金を出してその土地を大黒屋から買うと、そこへ松太郎が真実を告白しに来て、大黒屋の用心棒と大立ち回りを演じ、幸衛門の家の大黒柱を倒してしまい、家が倒壊し、胡蝶屋は破産します。長屋で内職を始めた幸衛門改め幸吉は、踊りの師匠・お仲(星美智子)の元で働く娘・お春のおかげで元部下で今は無精髭を生やしている八五郎とつましく暮らし始める一方、大黒屋は相撲取りのシコの力でオートメーション式に偽小判を作る男と組んで金儲けを始めます。(偽金作りのバックには金管楽器を使った気味悪い音楽が流れます。)ジェラルミンを使った偽金はすぐばれ、岡っ引きは手配書を持って大黒屋を訪ねますが、「あごさきんずっこ(あごの傷)」「?」「こんばんこ(小判)」「今晩こ?」といった感じで岡っ引きの訛りのひどさに会話が成立せず、やがて久しぶりに誘ったお仲がもう料亭で待っているいう知らせを受けると、大黒屋はいつもの手でお茶に見立てた酒を岡っ引きに振る舞い、そのすきに手に入れた手配書に筆を入れて八五郎の顔にしてしまい、急須の山を築いた岡っ引きは酔っ払って急須を手に大黒屋の店を去ります。以前お仲のスポンサーだった大黒屋が久しぶりに料亭に誘ったお仲がお春の踊りを見てもらおうと彼女も連れていくと、大黒屋はお春をなめるようなやらしい目で見、騙して別室に呼ぶとその場で手込めにしようとしますが逃げられ、お春を迎えに来ていた八五郎は大黒屋に殴られ目を回しているところを、たまたま通りがかった岡っ引きに逮捕され、その報を知って駆けつけた幸吉も手錠を掛けられ連行されてしまいます。酔いの覚めた岡っ引きは幸吉の家を家捜しして偽金作りの証拠を見つけようとしますが果たせず、牢屋に父が入れられたと聞いて泣くお春に近所の叔母さんが、保釈金を役人に払えば釈放してもらえると教えます。関西の牢屋は皮膚病の予防のために消毒の上に入浴させてくれるので、10倍の難関の入牢試験があると牢屋で話す幸吉と八五郎。お春は芸者に身を売って50両のお金を作り、「簡易裁判所取調所」では手配書の男が偽金を使った男でないことが判明し、岡っ引きもやっと手配書に手が加えられていることに気付きます。そこへ保釈金が届けられますが、二人は釈放された上にお金も丸まる返してもらえます。帰路二人は松太郎が今は梅の花という名前で人気力士になっているのを知り、思わず会いに行くと、ダンスミュージックで若者が踊る隣の部屋で、自分が幸吉の窮状の原因を作ったと今でも思い込んでいる梅の花は幸吉に頭を下げます。そこへ大黒屋がやってくると、梅の花にお前の旦那は幸吉なのかと言い、だから十両時代のけちな化粧回しを未だにつけているのかと罵倒して、悔しかったら俺が旦那になっている鷲ガ岳を倒してみろと挑発します。幸吉は勢いで持っていた50両を大黒屋の前で梅の花に渡し、これで立派な化粧回しを作ってくれと言いますが、家に帰りお春に謝った後、取り返しのつかないことをしたと気付いた幸吉は夜身投げしようとして八五郎に止められ、過って川に落ちた八五郎に「私の替わりに死んでくれるか」と声をかけます。気合いが入り稽古で無敵の梅の花。回しも注文済みと聞いて八五郎は梅の花の親方にお金を返してくれと言い出せず帰ってくると、芸者の着付けをするお春のカットが挿入された後、不穏な金管楽器の音が流れ、幸吉は夜中一人で起き出して首を吊ろうとします。気付いた八五郎が先祖に供えていたぼた餅を思わず投げると、それを顔に受けて倒れた幸吉はそれを食べて有り難がり、これは先祖のお告げだと言って、翌日から力餅と銘打ったぼた餅を売り出します。千秋楽に全勝同士の対決となった梅の花と鷲ガ岳の話題が盛り上がり、大黒屋は偽金作りの男からの入れ知恵で、お仲を使って腰砕けの薬を梅の花に盛り、鷲ガ岳には元気の出る薬を飲ませ、鷲ガ岳の勝ちに偽金を大枚はたいて賭け、大儲けする計画を立てますが、お仲に渡す段階でどっちがどっちの薬か分からなくなります。千秋楽の結びの一番。ラジオ風の実況中継のアナウンサーの声。「無芸大食対二日酔いの対戦」と気のないコメントをする解説者。大黒屋の指示通り(!)腰砕けの薬をお仲に盛られた鷲ガ岳は取り組みの途中で腰をくねらせ始め、自分から尻餅をついて負けます。思わず刃物を持って土俵に上がる大黒屋と偽金作りの男たちでしたが、その場で賭け金が偽金であることがばらされ、逃げようとするところを力士たちに囲まれこてんぱんに殴られます。歌が歌われる中、力士たちが餅搗きをし、それを幸吉、お春らとともに町の人たちが笑顔で見つめるなか、映画は終わります。
 全編60分に満たないスピーディなストーリー展開が素晴らしく、上記のあらすじ以外にも、星美智子の清潔なお色気、底抜けに人がいい岡っ引きの助手のギャグなどで楽しませてもらいました。齋藤寅次郎、おそるべしです。ストーリーのしっかりした究極のコメディを見たい方にはオススメです。