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夏樹静子『裁判百年史ものがたり』

2010-06-23 14:12:00 | ノンジャンル
 朝日新聞で紹介されていた夏樹静子さんの'10年作品『裁判百年史ものがたり』を読みました。大日本帝国憲法制定から現在まででエポック的な12の裁判を描いた作品です。
 取り上げられている裁判は、明治時代のロシア皇太子襲撃の大津事件、大逆事件、昭和における陪審裁判、翼賛選挙を無効とした裁判、帝銀事件、松川事件、チャタレイ裁判、状況証拠だけで死刑求刑を3回行った八海事件、実父に犯され続け5人の子供を産まされた結果、その父を殺してしまい尊属殺人に問われた娘の事件をきっかけとして尊属殺人の刑罰規定が違憲とされた事件、永山則夫の事件、離婚責任のある側からも離婚請求ができると認められた事件、犯罪被害者を救済するきっかけとなった事件です。驚いたのは、大日本帝国事件直後に起こり、行政の干渉が激しかったにもかかわらず、司法の独立を守った大津事件の裁判官の勇気、同じく翼賛選挙の無効を決めた裁判官の勇気、数々の免罪事件での警察・検察の横暴、そして前近代的な裁判官の横暴などなどでした。ただし、最後に著者と元最高裁判所長官・島田仁郎氏との対談が掲載されているなど、自画自賛といった風もあり、どこまで中立的に事件を述べているのかには若干の疑問も残りました。
 しかし、明治憲法以来、多くの道のりを経て、現在の裁判の形になったことを知る一助にはなると思います。裁判制度に興味のある方にはオススメです。