トニー・スコット監督『ザ・ファン』

　トニー・スコット監督の'96年作品『ザ・ファン』をWOWOWで見ました。
　父が創業者であるナイフ会社の営業マンをしているギル（ロバート・デ・ニーロ）は、地元のサンフランシスコ・ジャイアンツの熱烈なファンで、地元出身の大物ボビー（ウェズリー・スナイプス）が今シーズン移籍してくるのを楽しみにしています。離婚した妻に息子の養育権を取られているギルは、息子を開幕戦に連れて行きますが、途中で商用ができて息子を球場に置き去りにしてしまい、それを知った元妻は激怒します。ギルは営業成績の不振から会社をクビになり、また息子との接近禁止令まで受け、精神的に追い込まれます。一方、開幕戦でホームランを打った後プレッシャーから不振に陥ったボビーは、本来自分がつけるはずだった背番号を手放さずにボビーを尻目に活躍し、ボビーを挑発するプロモに態度を改めるように言いますが、聞き入れられず、つい殴ってしまい騒ぎを起こしてしまいます。それを偶然見ていたギルは、勝手な思い込みでプロモをサウナで刺殺してしまいます。スポーツ・リポーターのシュエルから、もっと気楽に考えた方がいいと言われたボビーは調子を取り戻しますが、ギルは自分がプロモを殺したおかげだと思い込みます。そしてボビーの息子が海で溺れたところを偶然に助けたギルは、ボビーに浜辺の家に招待されますが、自分の正体を隠すギルに対して、ファンはいい加減であり、たかが野球、大切なのは息子だとボビーが言うと、ギルは自分の正体を明かし、プリモの死によってツキが戻ったことを無理矢理ボビーに認めさせようとします。聞く耳を持たないボビーに対し、ギルはボビーの息子を誘拐し、息子を返してほしければ、真のファンであるギルのためにホームランを打つことを試合で発表しろと迫ります。試合は始まり、ホームランを打つしかなくなるボビー。雨が激しくなり、最後の打席も敬遠されそうになりますが、ボビーはピッチャーに勝負するように詰め寄り、雨でコールドゲームになる寸前にランニング・ホームランを打つことに成功しますが、明らかなセーフをアンパイアはアウトと宣します。ボビーはアンパイアがギルなのに気付き、ギルは豪雨の中、武装警官に囲まれますが、息子の居場所を知るためにボビーは撃たないように警官たちに懇願します。ギルは自分のベストピッチを見せてやると言って、ナイフをボビーに対して投げようとしたところを射殺されますが、ギルが幼い頃に使っていた球場でボビーの息子は無事発見されます。その球場のロッカールームには、ギルが少年野球のスター選手だったことを知らせる新聞記事が貼られているのでした。
　画面も編集もすべて無駄無くストーリーを効率的に語ることに奉仕されている感じで、それは見事だったのですが、ギルが背負っているものがあまりにも重く楽しめませんでした。どうもトニー・スコットの映画にはこうしたものが多いような気がします。心が擦り切れるような刺激をお求めの方にはオススメです。