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谷崎潤一郎『刺青・春琴抄』

2010-06-01 09:53:00 | ノンジャンル
 谷崎潤一郎の『愛と青春の名作集 刺青・春琴抄』を読みました。
 1910年作品『刺青』は、名人の誉れ高い刺青師・清吉が、幼馴染みの辰巳の芸妓の使いの娘の美しさに目をつけ、念願であった巨大な女郎蜘蛛の彫り物を彼女の背中に彫る話。
 '31年作品『吉野葛』は、一高時代の友人の親戚が吉野に住んでいたことをきっかけに、彼と私が二十年前に吉野の奥へ行き、そこで彼が母の姉と再会し、現在の彼の妻と知り合うのに立ち合った話。
 '32年作品『蘆(あし)刈』は、後鳥羽院の水無瀬の宮跡を私が訪ね、川の中洲で月見をしていると、男がふいに現れ、彼が憧れのお遊さまとその妹と3人での奇妙な生活のことを長々と語った後、ふと姿を消してしまう話。
 '33年作品『春琴抄』は、9才で盲目となり何不自由なく育ってきた春琴が、その直後に13才で奉公に来た佐助を手曳きとするようになり、やがて三味線や琴の稽古をつけるようになり、その激しい気性から折檻もするようになります。春琴は16の時に佐助の子を妊娠しますが、生まれてからもそれと認めずに里子に出し、検校が死んで春琴が独立してからも、日常生活全般に渡って佐助が身の回りの世話をしますが、誰彼の怨みを買って、深夜に春琴は顔に熱湯を浴びせかけられてひどい火傷を負い、それを一目でも見てほしくないと言われた佐助は自ら針で目をついて盲目となり、その後春琴が死ぬまで二人して暮らし、佐助は春琴が死んだ後の21年間独り身で通したという話です。

 『刺青』はほんの13ページしかない短編であることに驚きました。『蘆刈』は2人姉妹と男との生活の艶かしさに魅せられ、『春琴抄』は読点を省略した特徴ある文で書かれた情念の物語を一気に読んでしまいました。やはり谷崎はいいと改めて思った次第です。「文学」が苦手な方にもオススメです。