海外のニュースより

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「外交官達よ、北朝鮮と話をするな」と題する『ヴェルト・オンライン』の論説。

2009年05月31日 | 国際政治
数日の内に、北朝鮮は巨大な地下核実験を引き起こし、幾つかのロケットのテストを行った。その上、隣国の韓国を、1953年の休戦協定をこれ以上認めないぞと脅した。最後の帰結がどうなるか、米国との新たな戦争状態に入ることになりかねない。
これらは、極度の挑発行為であって、実際、軍事的攻撃だけが、これを凌駕するするだろう。勿論、唯一の可能な反応は、外交的性質のものでなければならないけれども。だが、ある特別の種類の外交だけが、実際は、プラスの結果を実らせるだろう。それは、静寂と沈黙の外交である。北朝鮮政権に対して如何なる呼びかけもされないだろう。如何なる態度決定も、如何なる伝達も、北朝鮮のどの外交官に対しても会話をしないことである。そして、最も重要なことは、どんな形の交渉を採用するという如何なるシグナルも与えないことである。
これは、外交官の普通の行動や好みに矛盾する。どこであろうといつであろうと、敵対者でありうる相手と話し合いをするという彼らの本能が彼らを導いている。その際、歴史に精通した人なら、好んでチャーチル首相の言葉を披露するかもしれない。つまり、「戦争、戦争よりは、話し、話することのほうが、常により良い」
もっと簡単に言うと、譲歩と交換の外交的承認がなければ、外交官達は、次のような標語にしたがって行動する。つまり、「話すことは、常によいアイデアである。なぜなら、言葉はいずれにしても金がかからないのだから。」だが、言葉は手でつかめる結果をもたらすことができる。それがどんなに僅かな価値であれ。
しかし、今回は違う。何年も前から、米国、中国、ロシア連邦、日本、韓国は忍耐強く、北朝鮮と交渉してきた。核計画の断念と引き替えに、経済援助や安全の保証や「正常化」という長所が提供された。韓国に至っては、莫大な供与や投資や食糧や現金贈与まで提供した。
こうして、金正日のこの奇怪な軍事独裁制に何年間も報いた。それは、金を軍備につぎ込み、イランやシリアと武器ビジネスをするために、自国民を何百万にも餓死させた。金正日の代理人は、米国、ロシャ、中国の代表と並んで座っていた。この政権とその承認や体面に対する何たるご褒美だろう。この政権がまたもや、世界中に恐怖の叫びを挙げさせるたびに、それに対する返答として、韓国からますます多くの贈り物が届けられた。
こんなことは、もう止めなければならない。なぜなら、あらゆる交渉は、北朝鮮を利するだけだから。今回は、挑発は、単にご褒美が欲しいというだけではない。この政権の願いは、またもや、もっと贈り物が来るように、もっと注意を引き起こし、承認を手に入れることである。しかし、北朝鮮にはこれ以上何も手に入れてはならない。話が失敗すれば、いぜれにせよ、話は何の役にも立たないとすれば、われわれは沈黙せねばならない。
[訳者の感想]筆者のエドワード・ルトワック氏は、アメリカの軍事戦略と国際関係について多数の著作がある軍事戦略家であり、歴史家です。
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