海外のニュースより

政治・経済・社会の情勢について書かれた海外の新聞や雑誌の記事を選んで翻訳しています。

「西欧では新たな傲慢が、目覚めた」と題する『ヴェルト』紙の記事。

2006年02月13日 | 国際政治
--猊下、イスラム世界とのカリカチュア論争の中で起こった怒りと暴力の爆発の後でどのように結果を総括されますか?
マルティノ枢機卿:豊かな先進国では、他文化に対して何の敬意も持たないある傲慢さが台頭しました。安易な笑いのために他の文化を侮辱するカリカチュアは、単に傲慢なだけです。
--モスレムの心を燃え上がらせるために、暴動が意図的に操作されているという指摘についてはどのように言われますか?
マルティノ枢機卿:対立は明らかに道具に使われています。けれども、対立の口実は、銀のお盆に載せられて運ばれました。ユダヤ教やイスラム教の文化では、神の像を描くことは許されないということは誰でも知っていることです。イスラム教では預言者マホメットは、描かれてはならないということも誰もが知っていることです。
--では、言論の自由はどうなるのですか?
マルティノ枢機卿:表現の自由の権利には、そこから他者の合法的な権利が始まる限界があります。
--あなたは憂慮しておられますか?
マルティノ枢機卿:ええ、なぜなら、ヨハネス・パウロ2世は、イラク戦争がキリスト教的西欧とイスラム世界との衝突だと誤解されないように、大変努力されたからです。それに対して感謝するために、インドネシアにまで至る代表団がローマに来ました。それほどうまく教皇はその目標を追求されたのです。
--今、必要なのは何でしょうか?
マルティノ枢機卿:宗教上の敏感さ、人間らしい敏感さそして政治的な知性です。
--西欧は臆病でしょうか?
マルティノ枢機卿:それはどういう意味ですか?もっと重要なのは、西欧が他の文化をその状況や歴史や尊厳の点で理解し、敬意を払うということをどうしたら達成できるかという問題です。
--モスレム社会はあなたにどんな印象を与えていますか?
マルティノ枢機卿:私たちのところで観察されるようなある宗教的な覚醒があります。それはさしあたり良いことです。ですが、西欧には傲慢さの復活もあるのです。けれども、私たちは、世界の一部が近代的発展において非常に遅れてるので、そこでは残りの世界が自分たちを置き去りにしたという意識が強くなったということをはっきりさせなければなりません。このような人たちを助け、彼ら自身の未来の主体となり、客体とならないためには、西欧は何ができるかということを問わなければなりません。
--「対話」という概念は、余りに使い古されていませんか?
マルティノ枢機卿:私たちは他人の身にならなければなりません。同じ目の高さで対話の相手を見るということは、相変わらず西欧にとっては挑戦です。これらの文化に対して公平であるためには、市場のカテゴリーだけでは、十分ではありません。宗教的自由は、私たちのところでは、長く複雑な歴史を持っています。世俗主義的な文化が尊敬されるまでにはヨーロッパでは、何百年もかかったのです。これらの争いの結果は、簡単に輸出されず、他の人たちに押しつけることは出来ません。この展開を、われわれはイスラム教に対しても認めなければならないでしょう。
--この展開を支持するための戦略はどうあるべきですか?
マルティノ枢機卿:テロリズムという現象が存在するから、私たちはその根にまで目を向けなければなりません。貧しい国々に対する約束が守られず、破られたという問題を新たに取り上げなければなりません。われわれは開いた傷口を治さなければなりません。
--どの傷口ですか?
マルティノ枢機卿:中近東の火傷を取り上げましょう。パレスチナ自治政府に対する援助が取り消されなら、災いなるかなと私は言います。ハマスが無条件にイスラエルの存在権を承認すべきだと言うなら、パレスチナ人達は1967年の国境を尊重することを要求するこのは、正しいのです。なぜならば、イスラエルの占領地域で一方的になされた変更は、国際法によれば、法律違反です。
[訳者の感想]このカトリックの枢機卿は、西欧の右派リベラルよりは、遥かに公平な判断をしていると思います。なお、記事の末尾に書かれた注によるとレナート・マルティノ枢機卿は、「正義と平和」についての教皇諮問会議の議長だそうです。インタビューを行ったのはイタリアの雑誌『共和国』だそうです。イタリア語からドイツ語に訳した人は、パウル・バッデというドイツ人です。
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